日本マイクロソフトは2020年5月13日、「GIGAスクール構想」向けにSurface Go 2の最新情報を披露するオンライン記者説明会を開催した。文部科学省が推進するGIGAスクール構想は、義務教育の現場でICTを活用する取り組みだ。

当初は2023年度までの完了を目指していた端末の整備計画だが、4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」によって、2020年度中に完了できるよう前倒しとなった。日本マイクロソフトはPCメーカー8社とともに、「GIGAスクールパッケージ」を2月4日から提供している。

Surface Go 2は子どもの可能性を引き出す「文房具」

教育機関におけるSurfaceシリーズの採用例は増加しており、2019年夏には愛知県教育委員会がSurface Goを約11,500台導入したことで話題となった。日本マイクロソフトによれば、導入事例としては世界第2位の台数だったという。

今回、それを上回る12,500台の導入事例を発表。導入先は東京の渋谷区だ。渋谷区は2017年9月から、区内の公立小中学校へ通う生徒に対して1人1台のWindowsタブレットを貸与し、ICT教育を推進する「渋谷区モデル」を推進している。当時の資料によれば「富士通 ARROWS Tab Q507/PE」だが、2020年8月末の返却時期を迎え、新たにSurface Go 2を採用した。

導入時期の2020年9月からは、Surface Go 2のIntel Core M3・LTE・メモリ8GB・ストレージ128GBモデルの順次導入を予定している。日本マイクロソフトは「導入にとどまらずクラウドと組み合わせ、先進的なICT教育環境を渋谷区と二人三脚で作り上げていきたい」(日本マイクロソフト Surfaceビジネス本部 本部長 小黒信介氏)とコメントを寄せた。

  • Microsoft Whiteboardによる遠隔コラボレーションをアピールする日本マイクロソフトのSurfaceビジネス本部 本部長 小黒信介氏

Surface Go 2の概要は別記事『「Surface Go 2」発表、同じサイズで画面10.5"に、LTEモデルはCore M3搭載』を参照いただくとして、日本マイクロソフトはSurface Go 2を「教育現場において、子どもたちの能力を最大限引き出せる“文房具”として展開したい」(小黒氏)と販売戦略を説明する。

手描きにはSurfaceペンを使用するが、小中学生が使うには若干高価であり、紛失する可能性も否定できない。そこで日本マイクロソフトは、Surfaceペンよりも短い「Microsoftクラスルームペン」を新たに用意した。ラフな使い方を踏まえて耐久性を高め、ペントップに用意した穴に紐を通せば、誤って紛失することもなくなるだろう。Microsoftクラスルームペンは20本セットで85,800円(税別参考価格)で、1本あたり4,290円となる。残念ながら個人販売の予定はない。

  • Surface Go 2の重さ約544グラム。500ミリペットボトル相当だ。ランドセルのサイドポケットに収まる

  • 左がSurfaceペン。右がSurfaceクラスルームペン

さて、GIGAスクール構想についても簡単に触れておこう。GIGAスクール構想は、児童生徒1人1台の端末を整備することを含んだ、文部科学省主導の教育ICT環境整備計画だ。小中学校といった義務教育段階において、全学年の児童生徒1人1人がデバイスを持ち、十分に活用できる環境の実現を目指すものである。

国は地方公共団体と教育機関に対して、端末整備1台につき45,000円を上限とする補助金を給付し、文部科学省は基本パッケージと応用パッケージ(※)の2種類をデバイスの選択肢として示してきた。つまり、Surface Go 2は応用パッケージに分類される。


基本パッケージ:45,000円の端末補助対象内で必要最低限の機能を含む
応用パッケージ:補助対象外となる周辺機器やソフトウェアなどを含み、先行導入地域において実績あるもの

日本マイクロソフトは、2月4日から「GIGAスクールパッケージ」を提供してきた。端末管理ツールである「Microsoft Intune for Education」と「Microsoft 365 Apps / Office 365 A1」を組み合わせた「Microsoft 365 Education GIGA Promo」、「Windows 10 Pro Education」とSurfaceを含むGIGAスクール対応PCのWindows 10デバイス、MDM(モバイルデバイス管理)による大規模な端末展開とアカウント管理手法を、特別価格で提供。加えて、教員研修の無償提供や文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に対応可能なクラウド環境も合わせて利用できる。

2019年12月に萩生田光一文部科学大臣は「1人1台端末環境は、もはや令和の時代における学校のスタンダード」という談話を発表し、文教市場は活況を呈してきたが、日本マイクロソフトはパートナー戦略のさらなる強化を図る考えだ。

教育系コンテンツパートナーは、Sky、アドビシステムズ、ゼッタリンクス、光村図書出版、大日本印刷、東京書籍、内田洋行、富士ソフト。

応用パッケージ販売パートナーは、3~5年間で選べる保障期間や学習用ツールを提供するSky、全国354拠点で納品や設置・研修などに対応するリコージャパン、水濡れや画面破損に対応する最大5年間保証の大塚商会、ヘルプデスクやICT支援員など豊富なサポートメニューを用意する内田洋行。

さらに、ライセンス購入方法とデバイス展開に関する相談窓口、評価デバイスの貸し出しを行うSB C&S、評価デバイスの無償貸し出しや大規模な端末展開手法の管理者向けトレーニングを提供するシネックスジャパン、Surfaceタイプカバーを含めた最長5年間の延長保証を行うダイワボウ情報システムが名を連ねる。

教師のITリテラシーが向上した立命館小学校

今回のオンライン発表会にゲストとして登壇した立命館小学校は、児童に2013年からSurface RTを貸与してきた。2018年から実施したデバイス選定について、「WindowsとMacを比較したが、最終的には『デバイスではなく子どもたちに何をさせたいのか』『10年後も最先端』を重視した」(立命館小学校 ICT教育部長 英語科教諭 Global Teacher Prize 2019 Top10 Finalist 正頭英和氏)という。

後者は一見すると非現実的なテーマに見えるものの、「我々はOffice 365を導入している。Word、Excel、PowerPointは今も最先端だ」(正頭氏)との理由から、Windowsデバイスを選択したと語る。

  • 立命館小学校 ICT教育部長 英語科教諭 Global Teacher Prize 2019 Top10 Finalist 正頭英和氏

立命館小学校の導入事例(PDF)

立命館小学校は過去7年間、Surfaceシリーズだけを使い続けてきたわけではない。デバイスが安価との理由で1年間は他社製Windows PCを導入しているが、「我々教師の間では『地獄の1年』と呼んでいる」(正頭氏)と当時を振り返る。

児童が誤ってデバイスを破損するケースは当然ながら想定されるが、「Surfaceは傷が付く程度でも、当時の他社製Windows PCは動作しなくなってしまった。修理を依頼してもSurfaceは1週間ほどで帰ってくるので代替用PCで補える。一方、他社製Windows PCは1~2カ月、ひどいときは『忘れていた』という対応もあった」(正頭氏)そうだ。

なお、Microsoftはグローバルで先出し交換を行うAES(アドバンスド交換サービス)を提供しており、ダウンタイムを最小限に抑えている。このような背景から、立命館小学校はSurface Go 2の導入を決定した。

  • 立命館小学校のオンライン授業風景

新型コロナウイルスの影響で、立命館小学校の児童は2020年3月2日から一度も登校していないが、児童のメンタルケアにMicrosoft Teamsを活用している。「心の健康を維持するには、友達や先生とのつながりが大事」(正頭氏)との考えから、児童同士のチャットやWeb通話、児童に対する個別カウンセリングにも利用しているという(新型コロナウイルスが流行する以前は、調べ学習などにSurfaceを使っていた)。

教師もWeb会議ならぬWeb授業を日々実施するため、「ITCリテラシーが高まった」(正頭氏)そうだ。業界をあげてのGIGAスクール構想に対する取り組みが、立命館小学校のように1日も早く、子どもたちのためになることを願ってやまない。

阿久津良和(Cactus)