パナソニックの大嶋名誉技監が旭日小綬章を受章

パナソニックは4月29日、同社の名誉技監である大嶋光昭氏が、令和2年春の叙勲にて科学技術の振興に寄与した「発明考案功労」により「旭日小綬章」を受章したことを発表した。

旭日章は日本の勲章の1つで、社会のさまざまな分野における功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた者を表彰するもので、科学技術の振興に寄与した発明考案功労での旭日小綬章の受章は同社技術職社員としては初めてのことだという。

今回の受賞対象となったた発明考案功労は大きく以下の3つ

  1. 高速デジタル通信技術の開発
  2. 手振れ補正の基本特許技術の開発と撮影装置への適用・製品化
  3. 著作権保護の基本特許技術の開発と事業化

5Gの基本技術にもなっている高速デジタル通信技術

1つ目の高速デジタル通信技術としては、1990年代のアナログからデジタルへと通信方式が移行するのに併せて、受信状況に応じて最適な受信形態にシームレスに移行する技術の基礎特許を考案。デジタル信号の復調技術などとして、高速性と安定性を両立する伝送に寄与する通信規格や、各国のデジタルテレビ放送規格などで活用されており、日本でもサービスの提供が始まった5Gの特徴の1つである低遅延伝送技術の基本技術としても活用されている。

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    発明考案功労としての業績概要の1つ目、高速デジタル通信技術の開発の概要 (提供:パナソニック)

カメラを搭載するあらゆる携帯機器で利用される手振れ補正

2つ目の手振れ補正の基本特許技術の開発と撮影装置への適用・製品化は、音叉型の形状をした振動ジャイロの考案・実用化と、その技術をカメラ撮影時の手振れ補正への応用に寄与したというもの。世界初の手振れ補正内蔵ビデオカメラ「PV-460」を1988年に北米で発売して以降、現在ではデジタルスチルカメラ(デジカメ)やスマートフォン(スマホ)の手振れ防止機能として、多くの人に当たり前のように活用されるようになっている。

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    発明考案功労としての業績概要の2つ目、手振れ補正の基本特許技術の開発と撮影装置への適用・製品化の概要 (提供:パナソニック)

デジタル時代のコンテンツ保護技術の基礎を構築

3つ目の著作権保護の基本特許技術の開発と事業化は、光ディスクの中に記録するコンテンツの著作権保護技術を発明したというもの。光ディスク1枚1枚に固有の複製防止のマークを刻印する手法や技術を考案したというもので、これによりゲームソフトやコンテンツを格納する光ディスクの複製の制御などを可能とした。現在では、デジタル放送コンテンツの光ディスクへのコピー回数の制御、いわゆる「ダビング10」として活用されるなど、より広い分野での著作権保護技術としてかつお湯されているという。

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    発明考案功労としての業績概要の3つ目、著作権保護の基本特許技術の開発と事業化の概要 (提供:パナソニック)

現役として今も世界初の技術の実現を目指す

大嶋氏は受章に際し、「30年前に開発した技術が、今でも5Gなど、世の中の最新技術に使用されているのは大変嬉しい限りです。私が世界初のことに挑戦した背景には、配属された無線研究所(当時)で上司から『誰もやっていない世界初のことをやれ』と絶えず教えられたからです。今回の受章を機に日本の若者に世界初に挑戦する楽しさを教え、私自身も引き続き世界初にチャレンジし、日本の技術復活に少しでも貢献したいと考えております」とコメントし、受章は望外の喜びとしている。

なお同氏は名誉技監という肩書ながら現役での活動を続けているとのことで、若手技術者に世界初に対する挑戦の重要性を解くとともに、自身も新たな世界初の技術を生み出すことに現在も挑戦し続けており、世の中をあっと驚かせるモノを生み出すことを目指して研究開発に取り組んでいるという。

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    今も先頭に立ち若手とも議論を交わす大嶋氏 (提供:パナソニック)