インスリン送達 - 注入器、注射剤投与

インスリンは従来から、病院の診察室で行われるのと同様に、必要に応じて臨床グレードの注射器と針で自己注射されてきました。今日では多くの種類のインスリンが市販されています。超速効型、速効型、中間型、持効型のインスリンを個別に注射することも、また必要に応じて混合して使用することもできます。

最近では皮下注射に代わるものが市場に出てきています。このような代替手段の1つがインスリンを皮膚内に細流で送達するジェットインジェクターです。もう1つはインジェクターペン(ペン型注入器)で、超微細な針を通してインスリンを手軽に注射できます。注射への恐怖心を和らげるとともに、利便性と快適さを大きく改善します。

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    図2. スマートインジェクターペンの簡略図

これらの代替機器は一般に電気機械方式が進み、従来の血糖測定器と同様「スマート」な構造になっています。スマートインジェクターペンは、マイクロコントローラとBLE無線を実装した設計になっており、個々の噴射時間、投与量などを取得してレポートすることを目的としています。

インスリン送達 - ポンプ

インスリンポンプは、1型糖尿病患者と一部の2型糖尿病患者の両方に対してインスリン送達を正確に制御しますが、1型糖尿病患者に処方されることが多くなっています。これらのポンプは、最終的に「クローズドループ」システム、すなわち人工膵臓内で役割を果たす重要な部品です。このデータを受信するインスリンポンプを備えたシステムで、適切な送達制御およびアルゴリズムの下で、血糖値の持続的な測定により、糖尿病管理の究極の部品ともいうべき人工膵臓が形成されます。

CGMは毎日複数回の指刺しに代わる、少数の離散データ点ではなく継続的なデータを活用したより適切な測定法です。同様に、1日を通して低血糖状態と高血糖状態をなくすことができるため、改善された送達方法といえます。いわゆる人工膵臓を使用すれば、患者が夜間の低血糖や睡眠中の低血糖、あるいは測定頻度や注射頻度を心配する必要がなくなります。これによって患者の健康や生活の質が大幅に改善され、おそらく寿命も長くなると思われます。

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    図3. インスリンポンプシステム簡略図

自動インスリン送達から想像できるように、装置メーカーが技術、システム、および部品供給業者を選定する上で、システムの安全性、信頼性、精度に対するニーズが極めて重要な要素になります。

人工膵臓の構築

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    図4. 人工膵臓の簡略図

人工膵臓は利用者の身体に装着したりベルトで固定され、物理的設計はさまざまです。図示したアーキテクチャは、全アナログフロントエンド(AFE)ブロック、電力管理、MCUまたはコントロールブロック、通信用の統合型BLE無線を搭載した高集積化カスタムASICを利用する最も一般的なスキームを示しています。

すべてのシステムに、ある種のインスリン貯蔵器、適切な駆動機構を備えたポンプまたはアクチュエータシステム、皮下注射針によりインスリンを送達するカテーテルまたはカニューレシステム、各種センサ(動き、血圧、体温、血糖値)も含まれます。個別測定システムと非接続測定システムの主な違いは、持続フィードバックとクローズドループフィードバックです。

身体装着デバイス内の低g加速度計や温度センサなど、血糖センサ以外のセンサをいくつか採用して活動レベルを監視することにより、投与量アルゴリズムを改善できます。これらのセンサは、身体活動と環境に関する情報を外部の視点から連続的に供給すると同時に、血糖値に関する連続情報も供給します。人工知能 (AI) を採用して、必要な短期および中期インスリン療法を推定することも可能です。

大部分のシステムはBLEを通じて、クラウドに接続されたスマートフォンと通信します。しかし、別の制御システムやパーソナルデバイスマネージャ(PDM)とも呼ばれる機器と通信するヘッドレス身体着用ポッドを使うシステムもあります。このような場合、PDMはユーザーとのやりとりに使用され、オープンループ(クローズドループではない)制御システムとして使用できます。PDMは、通常はWi-FiまたはLTE経由でもクラウド接続が可能です。

クラウド接続により介護者は介護に関与し通知を受け取ることができます。さらに、クラウドコンピューティングを駆使してビッグデータ解析や人口管理からも先進情報を蓄積できます。

IC集積化を超えて、場合によっては高集積化半導体ASICとともに受動部品さえも先進3Dハイブリッドモジュールに統合されることがあり、サイズ、重量、性能の面で大きなメリットが得られます。