デルの液晶ディスプレイ、デジタルハイエンドシリーズの「U2520D」。25型というデスク上でほどよいサイズに加え、USB Type-Cインターフェース(DisplayPort Alt-Mode&USB PD:最大90W)を備えることで利便性を大きく向上させた製品だ。とくに現在のモバイルノートPCとの相性は抜群で、新世代ディスプレイを感じさせる新しい使い方を可能にしてくれる。

  • デル25型液晶「U2520D」を試す Type-Cがテレワーク機材にもジャストな使い心地

    デル デジタルハイエンドシリーズ U2520D 25インチ HDR USB-C モニター

HDMIやDisplayPortにプラスしてUSB Type-C接続もサポート

液晶ディスプレイのインタフェースはアナログからデジタルへ完全に移行したと言っていい。そのデジタルの中でも、現在主流のHDMIやDisplayPortから、今後はUSB Type-Cへと移行しようとしている。U2520DはこのUSB Type-C入力をいち早くサポートしている液晶ディスプレイだ。USB Type-Cにはデータ転送だけではないいくつかの機能があり、そのうちの一つが「Alternate Mode」(Alt-Mode)。Alt-ModeはUSBのデータ信号とは別の異なる信号を流すことができる。VESAが策定しているのが「DisplayPort Alt-Mode」。USB Type-Cケーブルを通じてDisplayPort信号を送るというものだ。

DisplayPort Alt-ModeはVESAが策定していると言っても、現状、PCやスマートホン側のUSB Type-C端子にDisplayPort信号がミックスされている必要がある。そのため、現時点ではそこまで多くの機器が対応しているわけではない。しかし、USB Type-Cと形状互換のThunderbolt 3に対応するノートPCの多くはDisplayPort Alt-Modeにも対応している。加えて、ゲーミングPCなどで搭載されるNVIDIA GeForce RTX 20シリーズグラフィックスカードでは、リファレンスデザインとしてUSB Type-C出力がサポートされている。

  • 現在はデスクトップ用グラフィックスカードでもUSB Type-C端子を搭載するものがある

  • USB Type-C(左)のDisplayPort Alt-Modeではこれまで利用されていたDisplayPortケーブル(右)と同じ信号を伝送することができる

USB Type-Cにはデータ、DisplayPort Alt-Modeに加え、USB Power Delivery(USB PD)という機能もある。USB充電規格の上位規格で、5/9/12/15/20V×最大5Aというスマートホンやタブレットなどの小型デバイスだけでなくモバイルノートPCをはじめとしたさまざまな機器が充電可能となる。U2520Dは最大90W対応のUSB PD給電もサポートしている。

  • U2520DはUSB Type-Cの機能の一つUSB Power Delivery(USB PD)にも対応

そしてUSBとして当然データもサポートされる。U2520DのUSBハブ機能はダウンストリームポートが四つ。ダウンストリームポートにはUSB HDDや有線LANアダプタ、プリンタ/スキャナなどこれまで利用してきたUSB機器をつないでおけばよい。帰宅してU2520DとモバイルノートPCをUSB Type-Cケーブル1本でつなげば、ディスプレイが利用でき、充電もでき、USB接続機器も利用可能になる。これが次世代ディスプレイの使い方だ。

あらためてU2520Dのインタフェースを見てみよう。

U2520Dのインタフェースは背面(下向き)と左側面。背面側はAC100V入力、HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、USB Type-C(DisplayPort 1.4準拠)、DisplayPort(出力用)、オーディオ出力、USB 3.0(ダウンストリーム)×2。左側面はUSB Type-Cコネクタ(ダウンストリーム)×1、USB 3.0(ダウンストリーム、充電対応)×1が搭載されている。

  • 映像入力端子は背面。USB Type-Cのほか、HDMI、DisplayPortを搭載。そのほかDisplayPort出力、オーディオ出力、USB Type-Aダウンストリームなどのポートがある

  • USB Type-C端子はリバーシブルだから従来の映像出力端子と比べて格段に挿しやすい

  • 左側面はUSB Type-AとUSB Type-C端子を搭載

  • 側面のUSB Type-Aダウンストリームポートは充電機能に対応。側面なので着脱が容易で、充電ケーブルとともに持ち運ぶスマートホンなどの充電に便利

そして、U2520DにはUSB Type-C対応モバイルノートPCを接続した際、もっと便利に使える機能が用意されている。OSDメニューの「入力信号」欄にある「USB-Cの自動選択」という機能だ。たとえば、仕事用のモバイルノートPCとプライベート用のデスクトップPCの2台持ちで、普段、デスクトップPCとU2520DはHDMIやDisplayPortで接続されているとしよう。USB-Cの自動選択機能がONであれば、帰宅後に仕事の続きをしようとモバイルノートPCをUSB Type-C接続した際、映像信号を検知しボタン操作不要で自動的にUSB Type-C側の映像に切り換えてくれる。仕事を終えてモバイルノートPCを閉じれば、映像信号が途絶えるのでデスクトップPC側の映像に切り換わる。そしてモバイルノートPCを閉じてもUSB PD機能は利用できるので、挿しっぱなしにしておけば充電できる。このスマートな使い方を体験すると、もう後戻りできなくなる。

  • DisplayPort Alt-ModeをサポートするモバイルノートPCなどと組み合わせると、デスクに戻ったときケーブル1本挿すだけでゆったり快適な環境に切り換えられる

  • USB-Cの自動選択をONにしておけば、普段ほかのPCでHDMIやDisplayPort接続を利用していても、USB Type-C映像信号を検知した時点で自動的に切り換わる

サイズ、解像度、色……汎用性が高くさまざまなニーズに対応

U2520Dは25型サイズ。23.8型や24型などはよく聞くが、25型は少しめずらしいだろう。表示可能な有効エリアサイズは553×311mm。同社24型モデルが518.4×324mmだから確かに一回り大きい。合わせて解像度はこのサイズで標準の1,920×1,080ドット(フルHD)ではなく、一つ上の2,560×1,440ドット(WQHD、デルではQHD表記)としている。画素ピッチが0.216mm、117.5ppiなので、WQHDの標準である27型と比べると画素ピッチが小さいものの、24型クラスでWQHDのものと比べれば文字もまずまず見やすい。現在ではWindows 10にもスケーリング機能が搭載されたので、そこを調節すればフルHD相当にも、HD相当にすることもできるのでそこを調節するとよいだろう。

  • 24型クラスに対して少し大きな25型を採用。解像度も24型で主流のフルHDから一つ上のWQHDへ

一方、ディスプレイ自体の外形寸法は567.7×332.1mmで、幅513.5mm程度の現行24型モデルと比べれば確かに大きいが、手元のやや古い同社24型モデルと比べればほぼ同じだった。その理由はベゼル幅にある。U2520Dは狭額縁デザインを採用しており、本体外形寸法に対するパネル占有率が非常に高い。設置スペースの削減や見栄えがよいのはもちろんだが、横に並べてマルチディスプレイなどを構成した際、画面間のスペースも小さくできるので違和感を抑えることができる。

  • 手前がU2520D、後ろは6年前の24型モデルUP2414Q。U2520Dのベゼル幅は左右が7.4mm、上が7.3mm。さらにパネルとベゼルの段差も解消している

色空間に関してはsRGBおよびRec 709カバー率が99%。sRGBよりも25%ほど色空間が多いDCI-P3カバー率も95%としている。そしてsRGBカバー率99%、Delta-E 2未満に補正された状態で出荷されていると言う。パネル駆動方式はIPSでバックライトはホワイトLED。

  • カラーマネジメントディスプレイではないが、色空間のカバー率が高く、補正された状態で出荷される。IPSパネルで斜めから見た際の色みの変化も小さい

  • ボタンはわずかな傾斜によって正面からも視認しやすい。電源ボンタンと四つのボタンで構成されている

設定ボタンは下部にあるタイプだが、手前に向けて少し傾斜が付いているので比較的視認しやすい。また、電源ボタンとそのほかのボタンとの間には少し広めのスペースがあり、メニュー操作中に間違って電源を落としてしまうようなことを防いでいる。ボタンは電源+四つ。ここは一般的な数だ。四つの操作系ボタンは、左から順に上操作、下操作、OK、戻る。色みのプリセットは、標準、ComfortView(いわゆるブルーライト軽減)、ムーボー、ゲーム、色温度、色空間、ユーザーカラー。色温度は5000/5700/6500/7500/9300/10000K、色空間はsRGB/DCI-P3。

  • 主な用途であるムービー、ゲームに加え、色温度、色空間、ウルーライト軽減などのプリセットを用意

応答速度は標準が8ms(GtoG)、オーバードライブ機能で5ms(GtoG)。同社の液晶ディスプレイは用途別にもシリーズ分けされているので想像できるとおり、同じIPS駆動方式で比較しても、Alienwareシリーズなど1ms(GtoG)のゲーミング向けモデルとは大きくスペックが異なる。あらためてU2520Dは汎用のハイエンドシリーズかつ、USB Type-Cによる利便性を求めるユーザー向けだ。

  • 応答速度は標準8ms、オーバードライブ機能で5ms

DisplayPort「出力」にも注目! マルチディスプレイをシンプルに

先のインタフェースではUSB Type-C中心に紹介したが、そのほかの端子についても言及しておこう。HDMI、DisplayPort入力はそれぞれ1ポート。USB Type-Cと合わせて3ポートということになる。

  • USB Type-C to C、USB Type-C to A、DisplayPort、電源ケーブルが付属。HDMIケーブルだけは必要に応じて用意する必要がある

レガシー端子のDsub 15ピンやDVI-I/Dは非搭載だ。その点で、古いPCや一部のビジネス用PCでは変換アダプタなどが必要になることがある。

DisplayPort出力端子はデイジーチェーン接続用で、U2520Dはそれをサポートしている。デイジーチェーン機能のうち、複数台のディスプレイを接続するものをマルチストリーム トランスポート(MST)と呼ぶ。マルチディスプレイを構築する際、PC側が複数の映像出力端子を持ち、それぞれの端子からそれぞれのディスプレイにケーブルを接続するのが一般的だ。しかし、デイジーチェーン接続をサポートするU2520Dの場合、PCから1本DisplayPortケーブルを接続した先は、DisplayPort出力からもう1台のディスプレイのDisplayPort入力へと数珠つなぎでケーブルを渡すことができる。

  • マルチストリーム トランスポートを利用する場合はUSB Type-CないしはDisplayPort接続を利用した上でメニューの「ディスプレイ」欄から「MST」機能をONにする

そして、同様にDisplayPort Alt-Mode対応USB Type-C接続でもこれが利用できる。USB Type-CケーブルでU2520Dに映像出力した先は、DisplayPortケーブルでもう1台のディスプレイに接続すればよい。マルチディスプレイのセットアップがケーブル1本&短時間で行なえるので、モバイルノートPC中心のオフィス用途ではこの機能に注目してほしい。

  • さらに1台増やしたマルチディスプレイも、DisplayPortのMST機能を使えばシンプルな配線で実現できる

USB Type-C入力端子について一つ補足をしておこう。たとえばDisplayPort Alt-ModeやUSB PDに対応した機器がまだないという場合でもU2520DのUSBハブ機能は利用できる。実際、利用できることを確認できた。そして、PC側のUSBの仕様しだいであるが、USB 3.0以前のUSB Type-A端子しかないPCでも、USB Type-A-C変換ケーブルでU2520Dと接続すればUSBハブ機能が利用できる。この意味で、まだUSB Type-Cの準備がまだできていない方にも、将来的な買い換えを見据えた選択肢としてオススメできる。

最後に音声出力。U2520Dの音声出力はHDMIやDisplayPort(USB Type-C含む)の音声信号を取り出すものだ。U2520Dには本体内蔵スピーカーがない。そのため、音を楽しむ場合にはヘッドホンやスピーカーなどを接続することになる。ただし端子が背面にあるため、スピーカー用には問題ないが、気軽に着脱するヘッドホン用としては不向きかもしれない。着脱する可能性があるサウンドデバイスは、PC本体の端子に接続するか、USB接続のものを側面端子につなぐスタイルが合っているだろう。