現像済みの写真フィルムは半永久的に保存しておける…と思いがちですが、実はそうではありません。保存状態が悪いと「ビネガーシンドローム」と呼ばれる劣化が急速に進み、フィルムがダメになってしまうこともあるのです。

そこで、昨今の社会情勢から外出を控えて自宅で過ごすことの多いこの機会に、撮りためた大事なフィルムをデジタル化しておくことをオススメします。デジタル化すれば、SNSやブログで使うのも簡単になりますし、インクジェットプリンターで大きくプリントしたり、外部のサービスを利用して豪華なフォトブックも作成できます。

今回は、扱いやすさを重視したケンコー・トキナーの「5インチ液晶フィルムスキャナー KFS-14WS」(以下、KFS-14WS)と、手持ちのマクロレンズとデジタル一眼でフィルムを複写する焦点工房の「Camflix フィルムデジタイズアダプター」(以下、Camflix)を用意。個性豊かな2機種にどのような特徴があるかをチェックしつつ、実際に昔撮ったフィルムをスキャンてみたいと思います。

  • フィルムをデジタルデータ化するためのフィルムスキャナー。左はケンコー・トキナーの「5インチ液晶フィルムスキャナー KFS-14WS」、右は焦点工房の「Camflix フィルムデジタイズアダプターFDA-135L」(カメラやレンズは除く)

単独で写真をスキャンできる「KFS-14WS」

まずは、ケンコー・トキナーのKFS-14WSです。構造的には、ボディ内部に内蔵カメラと小さなライトボックスを備え、ライトボックスの上に置いたフィルムをカメラで撮影してデータ化する仕組み。画面の指示にしたがって上部のボタンで操作するだけで、背面に入れたSDメモリーカードにスキャンしたデータが保存されます。パソコンやカメラなどを必要とせず、単独で使用できるのがポイントです。

  • 2019年11月に販売が始まった、ケンコー・トキナーの「KFS-14WS」。実売価格は税込み2万円前後。前面の液晶パネルは5インチと大きく、視野角の広いIPSパネルを使用する本格的なもの。コントラストも高く、見え具合も上々。ネガフィルムも反転して陽画(写真として見られる状態)として表示します

  • 本体上部のボタン類。シンプルで分かりやすくまとまっています。電源ボタンもこの場所にあります

  • 本体背面。左よりHDMI端子、SDカードスロット、USB-C端子。電源の供給はUSB-C端子で行います

内蔵カメラのイメージセンサーは1/2.33インチのCMOSセンサーで、有効画素数は約1240万画素(35mmフィルムスキャン時)。一般的なコンバクトデジタルと同等のスペックで、この画素数であればA3ノビサイズのプリントも余裕といえます。

前面に搭載する5インチの液晶パネルは、解像度こそ50万画素と粗めですが、スキャンするフィルムの画像をチェックするには十分。付属のHDMIケーブルを使えば、スキャンしているフィルムやメモリーカードに保存した画像をテレビなどで鑑賞できるのが便利です。

スキャンできるフィルムフォーマットは、一般的な35mmフィルムのほかに、126フィルム(インスタマチックフィルム)と110フィルムの3種類。いずれもポジフィルム、カラーネガフィルム、モノクロネガフィルムのスキャンが可能です。

通常のフィルムスキャナーであれば、専用のホルダーにフィルムを挟み込んでスキャナーに通していきますが、本機はスリーブ(何枚かコマがつながった状態)であれば、本体にセットしたホルダーの横からフィルムが通せ、しかもその状態で送ることができます。手間をかけずにどんどんスキャンできるため、ネガの状態では気づかなかった傑作も見逃しません。ポジフィルムは、マウントに入ったもののスキャンも可能です。

  • フィルムは、スリーブのままホルダーの横からスルスルと入れていきます。フィルムをいちいちホルダーにセットする必要がなく、手間もかかりません

  • KFS-14WSの同梱品を並べたところ。各種フィルムホルダー、電源用のUSBケーブルのほか、テレビとの接続で使用するHDMIケーブルやライトテーブルのホコリや汚れを拭き取る清掃用ブラシなどが付属しています

明るさや色合いを調整したうえで保存できる

ありがたく思えたのが、明るさと色あいの調整が可能なこと。より自分好みのデータに仕上げることができます。スキャンした画像はJPEGフォーマットでメモリーカードに記録されますので、なるべくならこの時点で調整しておくとよいかと思います。

  • メニューの最初の選択画面。左よりフィルム選択モード、USBモード、再生モード、日時設定となります。USBモードはパソコンと接続するとき、日時設定はスキャンした画像データのExifとして記録されます

  • フィルム選択モードの画面。左よりリバーサル、カラーネガ、白黒ネガから選べます

  • フィルムのタイプを選択すると、今度はフォーマットのサイズを選択します。左より35mmフィルム、110フィルム、126フィルムとなります

  • スキャンする画像を表示させたところ。画面の左端下にはフィルムタイプとフィルムサイズを、右端下には露出、スキャンサイズ(標準・補間)、SDカード(装填中)を表示します

  • 露出の設定画面。1/2EVステップで設定が可能。もちろん、画面は露出設定に応じて明るさが変わります

  • RGBの設定画面。RGBそれぞれのカラーの補正を行います。こちらも、画面は設定状態に応じて色合いが変わります

  • 再生モード時のサムネイル。画面が大きいので、この表示でも詳細が分かりやすく思えます

  • ポジフィルムからスキャンした画像。簡単操作ながら、階調再現性や色合いは良好です、フォトショップで縦位置にし、ゴミを取っています(キヤノンNewF-1、FD28mm F2、フジクローム50D)

  • カラーネガフィルムをスキャンした画像。KFS-14WSの場合、カラーネガフィルムもワンタッチで正しい色調に変換でき、結果も不足を感じさせないものです(キヤノンT80、AC75-200mm F4.5、フジカラー業務用ISO100)

  • モノクロフィルムをスキャンしました。ブログやSNSなどの使用では十分な画質と言えます。5インチの液晶モニターで、埋もれていたネガフィルムから作品を見つけ出すことも容易です(キヤノンFTb、FD50mm F1.8 SC、TRI-X)

手持ちのカメラ&レンズの性能を生かせる「Camflix」

Camflixは、手持ちのデジタルカメラとマクロレンズを使用してフィルムをスキャン(撮影)するためのアクセサリーです。35mmフィルム用と120フィルム用があり、それぞれ標準マクロレンズ用と中望遠マクロレンズ用があります。ここでは、35mmフィルム対応の中望遠マクロレンズ用(FDA-135L)を紹介します。

  • 2019年11月に販売が始まった、焦点工房の「Camflix」。このように手持ちのカメラとレンズの先端にセットして使います。デジタル一眼レフの場合、ライブビューでの撮影が便利です。今回は、キヤノンのフルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark IV」とケンコー・トキナーのマクロレンズ「atx-i 100mm F2.8 FF MACRO」を利用しました

本体は、アウターチューブ(調整リング)とインナーチューブ(伸縮アダプター)に分かれており、アウターチューブ側の先端にフィルムホルダーをセットする「拡散板」があります。インナーチューブ側の先端はオスネジが切られており、マクロレンズのフィルター枠に装着します。対応するフィルター径は62mmで、フィルター径が合わない場合は市販のステップアップリングを使って装着します。

  • Camflixの部品を並べたところ。アウターチューブ(調整リング)とインナーチューブ(伸縮アダプター)、フィルムホルダーの3点とシンプルです

  • マクロレンズのフィルター径に合わせて別途用意したステップアップリング。写真はマルミ製となります

Camflixをマクロレンズに装着したら、写すフィルムが画面に収まるようにしてアウターチューブの位置を調整し、ピントを合わせます。光源は、写真用LEDライトや写真用のライトボックスがおすすめですが、なければライトスタンドなど用いるとよいでしょう。なお、光源によってはホワイトバランスに注意が必要です。ピント合わせはマニュアルフォーカスで合わせるようにしましょう。ライブビューで撮影すれば、画面で拡大ができるので、より正確にピント合わせができます。

  • フィルムホルダーにフィルムをセットします。スライドの場合、マウントされているものはマウントを外したのち、フィルムホルダーにセットします

  • 今回はライトボックスを光源として使いました。拡散板とライトボックスの距離は10cmほど。シャッターはケーブルレリーズを使うか、セルフタイマーを使うとより確実です

スキャンした画像のクオリティは期待以上!

フルサイズあるいはAPS-Cなどの大型センサーを搭載したデジタル一眼と描写性能に優れるマクロレンズを使用するので、画質的が高く満足できる結果が得られました。スキャン後の微調整を考えると、RAWフォーマットで撮るのがよいでしょう。

  • ポジフィルムからのスキャンです。RAWフォーマットで撮影し、微調整を行っています。メリハリのあるスキャン画像が得られました(キヤノンNewF-1・FD85mm F1.8 SSC・PROVIA)

  • こちらはカラーネガフィルムをスキャンしたものです。RAWで撮影し、現像時にクリックホワイトバランスを使いカラーネガ固有の赤みを除去。フォトショップで階調の反転を行っています(ミノルタX-700・RFロッコール250mmF5.6・フジカラー業務用ISO100)

  • 古いモノクロフィルムをスキャンしたもの。カラーネガフィルムと同様に、Photoshopで階調の反転を行っています。予想以上のよい結果が得られました(キヤノンFTb・FD50mm F1.8 SC・TRI-X)

重視するポイントを見極めて選びたい

液晶パネルを搭載しているKFS-14WSはスタンドアローンで使えるので手軽にスキャンでき、HDMIケーブルを使ってテレビや液晶ディスプレイの大きな画面でスライドショーが楽しめるなど、家族そろって広く活用できるのが魅力です。一方のCamflixは、マクロレンズやライトボックスなどを必要とするなど入門者向けとはいえない反面、高性能のカメラやレンズを用意すればクオリティの高いスキャンが可能なのが魅力です。

両者の特徴をひとことで述べれば、「誰でも手軽に使えるKFS-14WS」と「高画質でスキャンできるCamflix」といったところでしょうか。重視するポイントを見極めたうえで、自分に向いた製品を選ぶのがよいでしょう。実勢価格は、KFS-14WSが税込み2万円前後、35mmフィルム対応で中望遠マクロレンズ用のCamflixが税込み1万5千円前後と、いずれも比較的リーズナブルです。

若かりしころに撮影した懐かしいフィルムから最近撮影したフィルムまで、この機会にぜひスキャンして使い勝手のよいデジタルデータにして楽しんでみてはいかが?

著者 : 大浦タケシ(おおうらたけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。