情報は「針の動き」か「通知」で
前編で紹介したとおり、ECO-DRIVE Riiiverのユニークさは「アナログの腕時計でありながらIT/IoTの機能を発揮する」点にあります。各種センサーを内蔵するなどスマートウォッチ的な特徴を持つものの、フェイスには表示装置(液晶・OLEDパネル)がなく、長短針の動きこそ、ユーザに情報伝達する基本手段となります。
しかし、それはペアリングしたスマートフォンから情報を受けるときの話。反対にECO-DRIVE Riiiverからスマートフォンへ情報を送信し、それを活用する方法もあるからです。
たとえば、「歩数」というiiidea(アィイデア、ECO-DRIVE Riiiverの専用アプリ)を利用すると、ECO-DRIVE Riiiver内蔵の加速度センサーによって測定された歩数がBluetoothでスマートフォンに送信され、通知としてスマートフォンのディスプレイに表示されます。「2345歩」といった歩数を長短針で簡潔に表現することは困難ですが、この方法であれば無理がありません。
情報をメールで送信するという手もあります。ECO-DRIVE RiiiverにはGmailとの連携機能が用意されているので、位置情報のような長短針で表現できないデータはメールで送信すれば確実ですし、ほかの専用機能を持つスマートフォンやPCアプリ(位置情報ならGoogleマップなど)で活用できます。また、定型文をあらかじめ用意しておき、ECO-DRIVE Riiiverのボタンを押すだけでメール送信、というiiideaも用意されていますから、工夫しだいでいろいろできそうです。
センサー情報を活用する
ECO-DRIVE Riiiverには加速度センサーや温度センサーが内蔵されており、自動計測した歩数や消費カロリーなどの活動量データはメモリに蓄積します。保存期間は2週間で、古いデータから順に削除されていきますが、同期してスマートフォンに転送すれば長期の保存が可能になります。最低でも2週間に1度スマートフォンに接続すれば、日々の活動データを半永久的に保存できるというわけです。
運動量を管理するための機能も用意されています。スマートフォンアプリ(CITIZEN ECO-DRIVE Riiiver)の画面上部にある「Activity」タブを開くと、あらかじめ設定しておいた目標歩数の到達度や、その日の歩数・消費カロリーを見られます。
ECO-DRIVE Riiiverのアイデンティティともいえるソーラーセルの発電量も記録されており、「Light Level」タブを開くと達成度を確認できます。充電した場所の位置情報もあわせて記録しているため、自分がどこにいたか・移動したかを、GPSロガー風に確認することもできます。
このようなヘルスケア機能は、最近のスマートフォンであればほぼサポートされていますし、GPSロガーもGoogleマップに用意されているので(タイムライン機能)、新味に乏しいことは確かです。とはいえ、エコ・ドライブの発電によってバッテリー切れの心配がほとんどないため計測漏れが起こりにくく、iiideaの機能でデータを活用できることは、ECO-DRIVE Riiiverならではの魅力といえそうです。
アプリ「iiidea」を自作してみた
もう1つ、ECO-DRIVE Riiiverの大きな特長として「アプリ(iiidea)を自作できる」ことが挙げられます。一般的にアプリといえば、パソコン上でプログラミング言語を駆使して制作するものですが、iiideaはスマートフォン上で「パズル」のように作れるのです。
利用するのは、開発用アプリ「Riiiver」。スイッチ(T、Trigger)、サービス(S、Service)、動作(A、Action)という3つの要素で構成され、その組み合わせで機能を実現します。
ノリとしては「どこで、誰が、何をした」に適当な語句を当てはめる言葉遊びに近い――というと語弊があるでしょうか。プログラミング言語の知識は一切不要、候補の中から「T」と「S」と「A」を選ぶだけですから、気軽に試せます。
筆者が作成したiiideaは「飲むお酒」。トリガーボタンを押すと、おすすめのお酒を通知してくれる機能です。「お酒の名前を取得」というサービスを見つけたときに思いつきました。Tに「ボタン押し」、Aに「Local Notification」を選んで、適当なアイコンと説明文を用意すれば完成です。かかった時間はわずか3分、プログラムコードは一行も書いていません。
iiideaは「Riiiverストア」から入手するのですが、作成したiiideaは非公開に設定したため、Riiiverストアではなく「マイページ」(Riiiverストア画面から遷移する)経由でダウンロードしました。これをECO-DRIVE Riiiverへ転送すれば準備完了、トリガーボタンを押すとお酒の名前が通知で届くようになりました。
オプションで任意のお酒を追加したり出力確率を調整したりできるので、飲みたい・飲ませたいお酒を登録して誘導するのもアリですね。思いつきと勢いだけで独自のスマートウォッチアプリを開発できてしまうのですから、これはECO-DRIVE Riiiverの大きなアドバンテージといえるでしょう。
まとめ ~活用は「アィイデア」しだい~
しばらくECO-DRIVE Riiiverと暮らしてみて、気に入った点と気に入らなかった点がそれぞれ1つあります。
気に入った点は、「充電を意識する必要がない」こと。世にあるスマートウォッチの大半は、表示装置と通信機能で利便性を実現する一方、消費電力が多いため1日1回の充電が必要。ECO-DRIVE Riiiverは腕に装着しているだけで勝手に光充電されるため、バッテリー切れの心配がありません。太陽光どころかLED照明の光でも充電してくれるので、バッテリーはつねに100%近い状態を維持していました。
気に入らなかった点は、電子マネー機能(FeliCaチップ)を持たない点です。散歩やランニングにはスマートフォンを持ち歩きたくないため、腕時計に電子マネーの機能があればとても助かるのですが。というより、キャッシュレス化が進むこの時代、スマートウォッチをうたうのならば電子マネー機能は必須でしょう。
アプリ機能(iiidea)は、気に入った部分もあれば気に入らない部分もあり、愛憎相半ばといったところです。部品を並べる程度で独自アプリを開発できるところは二重丸ですが、その部品の種類が足りません。データをGmailで送信できるのはいいとして、LINEなどのSNSにも対応してほしいし、カレンダーやメモなどほかのアプリと連動するサービスも増やしてほしいですね。ECO-DRIVE Riiiverの今後はアプリ活用に関する発想しだい、まさに「アィイデア」しだいなのではないでしょうか。