スマートウォッチといえば、通信機能があり、フェイス全体を表示装置として使え、心拍数の測定などヘルスケア機能を装備して……。そんな既成概念を軽く越えていく存在が、シチズンの「Eco-Drive Riiiver」です。腕時計かくあるべしのひとつの姿、そんな製品にじっくり触れてみました。

  • シチズン「Eco-Drive Riiiver」

    雰囲気はアナログ腕時計そのものの「ECO-Drive Riiiver」

「エコ・ドライブ」搭載のスマートウォッチ

シチズンという名前から思い出すモノや技術といえば、時計、そして「エコ・ドライブ」が挙げられます(個人的には体温と外気の温度差を動力源とする「エコ・ドライブ サーモ」も胸熱でしたが)。エコ・ドライブは、わずかな光を電気に変換して時計を駆動するシステムで、いまをさかのぼること四十余年の1976年に登場しました。改良が進んだ現在のエコ・ドライブは、暗闇でも1年半は動き続けるという驚異の省電力性能を獲得し(搭載モデルによって異なります)、シチズンの腕時計「ATTESA」シリーズなど多くの製品に採用されています。

Eco-Drive Riiiver(リィイバー)は、そのエコ・ドライブを活用したスマートウォッチ。スマート……といっても外観はアナログの腕時計そのものです。長針・短針は言うに及ばず、秒針、さらにはデイトカレンダーも。タッチディスプレイは搭載せず、表示はあくまでアナログです。

  • シチズン「Eco-Drive Riiiver」

    2020年2月時点で、ラインナップは4モデル

大まかにいうと、これまでのスマートウォッチは、Apple WatchやWear OS by Googleを搭載するスマートフォンを凝縮させたかのようなタイプと、SONY wena wristのようにヘッド(フェイス)部が腕時計というタイプに二分されてきました。ソニーのwena wristは、IT・IoTの機能はバンドに集約されています。また、スマホの通知など最小限の機能をアナログの時分針で表現するスマートウォッチも。こうしたタイプは、コネクテッドウォッチと呼ばれることもあります。

Eco-Drive Riiiverはそのどちらでもない、「アナログの腕時計でありながら、IT・IoTの多彩な機能を発揮する」というまったく新しいデバイスです。

では、どうやってIT/IoTの機能を発揮するのかということになりますが、それは「Bluetooth」。Eco-Drive RiiiverはスマホとBluetoothで接続して使います。

Eco-Drive Riiiver側からの命令を受け、スマートフォンがなんらかの処理を行い、Eco-Drive Riiiverにフィードバックするという流れです。多くのスマートウォッチは、スマートフォンやパソコンのサブ機のような一面が大きいのですが、Eco-Drive Riiiverは基本的にスマートフォンに指示を出すためのデバイスです。長針・短針の動きで何かを知らせることも可能ですが、誰かから着信があったとか1日の目標歩数に到達したとか、単純な内容に限られます。

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    スマートフォンへの指示は右側のボタンで行います

スマートフォンに命令を伝える方法は大きく2つ。Eco-Drive Riiiverの側面にあるボタンを押すか、なんらかの条件を満たしたとき自動処理するかです。小さな画面を見つめてさらに小さなアイコンを探したり、それを指で突いたりする必要はありません。見た目だけでなく操作性まで腕時計そのものです。

ただし、センサー類はスマートウォッチのそれ。歩数や移動距離を測るための加速度センサー、周辺の光を感知するための環境光センサー、体温や周囲の気温を測定できる温度センサーも搭載されています。心拍センサーやGPSは持たないものの、おそらくは消費電力や(腕時計としての)サイズ感との兼ね合いでしょう。右へならえではない、機能が吟味されていることがうかがえます。

アプリ「iiidea」のしくみ

Eco-Drive Riiiverは、専用アプリを追加することで機能を拡張できます。専用アプリは「iiidea(アィイデア)」と呼ばれ、iOS・Android用の公式アプリ「CITIZEN Eco-Drive Riiiver」からダウンロードできます。ダウンロードしたiiideaは、最大3つをEco-Drive Riiiverに転送(インストール)して、いつでも起動できる状態にしておけます。

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    スマートフォンとBluetoothで連携して、専用アプリを使ってさまざまな設定を行います

iiideaでは、「トリガー」「サービス」「アクション」という概念が大切。トリガーはiiideaが動作するきっかけになることを、サービスはiiideaが提供する機能を、アクションはEco-Drive Riiiverの挙動を意味します。

Eco-Drive Riiiverにiiideaを転送する前には、スマホアプリの情報画面でこの3つの要素を確認し、必要に応じて設定を行います。たとえば、メール送信用iiideaでは、送信先メールアドレスの登録が必要です。

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    アプリ(iiidea)はアプリストアから入手できます

  • シチズン「Eco-Drive Riiiver」

    iiideaは最大3つまで登録できます

「コイントス」という、コインの表か裏かをランダムに表示するiiideaを例に説明しましょう(時計ですから、秒針が3時・9時のどちらを指すかで表と裏を表現します)。iiideaのトリガー、サービス、アクションの処理は、以下になります。

  • トリガー:Eco-Drive Riiiverのボタンが押されたとき
  • サービス:YES・NO(True・False)を決めること
  • アクション:サービスの結果が「YES」なら秒針で3時を指し、「NO」なら9時を指す
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    iiideaの機能はトリガーとサービス、アクションで実現されます

利用するiiideaの選択には、4時位置にある金色ボタンを使います。押すごとに、インダイヤルで7時~8時あたりを指している機能針が動き、それにあわせてiiideaが切り替わるしくみです。機能針はバッテリー残量の表示も兼ねます。

前述の「コイントス」を例にすると、スマホアプリ側で「3番」に登録しているので、何度か金色ボタンを押して機能針の位置をあわせます。だいたい39秒の位置にある1本のバーが「1番」、38秒の位置にある2本のバーが「2番」、36秒の位置にある3本のバー(というより3つのドット)が「3番」です。

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    7時~8時位置のインダイヤル

それから2時位置のボタンを押すと、iiideaのトリガーが作動。裏か表かを決めたあとに針が動き始めます。

こう書くと無味乾燥な印象を受けますが、実際に目にすると針の動きがとてもユニーク。「コイントス」だと、起動直後に秒針がグルリと回転して0時を指したかと思いきや、数秒の間をおいて短針・長針がそれぞれ3時と9時を指し、それから秒針が3時か9時のいずれかを指し示す、というからくり時計のようなアクションを見せてくれます。

【動画】「コイントス」を実行したときの、アナログ針の動き

「今日の降水確率」というiiideaも、針の動きで降水確率を知らせてくれます。2時の位置にあるボタンを押して起動すると、秒針から短針・長針の順に回転して0時を指したあと、スマートフォン側で設定した場所(地図で指定した場所か現在地)へと秒針が移動します。1周が100%なので、秒針が3時を示せば降水確率は25%、6時を示せば50%という意味です。パッと理解できるようになるには慣れが必要ですが、時計の針だけでここまでの情報を伝達できるというのはなかなか画期的です。

Eco-Drive Riiiverのアドバンテージ

Eco-Drive Riiiverとしばらく共に暮らしてみて実感したのは、「基本は腕時計」ということです。ここ数年で定義が固まってきた「スマートウォッチ」は、スマートフォンを小型化したかのような機能を備え、自律的にインターネットへ接続する方向で進化を続けていますが、Eco-Drive Riiiverはあくまで腕時計。表示装置もタッチパネルもないため、デジタルガジェット的な雰囲気に乏しく、操作もシンプルにボタンを押すだけ。存在や機能を意識しない限り、アナログの腕時計です。

この(アナログの)腕時計という印象は、「意識して充電・同期する必要がない」という特長からもきています。エコ・ドライブならではの高い発電能力により、陽の光にさらすどころか、屋内の適当な場所へ放置しておくだけで勝手に充電されますから、いざというとき使えない(バッテリー切れ)ということがありません。この点は、他のスマートウォッチと比べて大きなアドバンテージといえるでしょう。

  • シチズン「Eco-Drive Riiiver」

    バッテリー切れの心配はまったくなし、外観もアナログ腕時計そのものです

一方、ディスプレイを搭載しないことはハンディにもなります。連携するスマートフォンを介してメールを送信できても、受信したメールの内容を知ることはできません。スマートフォンから転送された情報は時分針を工夫して表現するしかなく、この点においてUIに大きな制約があることは確かです。

惜しまれるのは、バイブレーション機能がないこと。あえてディスプレイを搭載しないことはひとつの考え方ですが、iiideaによっては処理終了時にビープ音を鳴らすものがあり、正直これは興ざめです。内部機構の制約や消費電力など難しい面はあるのでしょうが、目には見えない振動も腕時計らしいたたずまいの維持に役立つはず。音の代わりに振動で知らせるiiideaとか、電車で居眠りしたときの目覚ましにも安心して使えるでしょうから、実現されればかなりイイと思うのですが。