市場動向調査会社であるTrendForceは、新型コロナウイルスが半導体デバイスの主要なアプリケーションであるデータセンタ向けサーバとスマートフォン(スマホ)の出荷数量に与える影響に関する2月10日時点の緊急調査分析結果を発表した。

新型コロナウイルスはサーバの生産に影響なし

データセンタ向けサーバに関しては、2019年第1四半期の出荷に関して、新型コロナウイルスの影響はほとんどないとTrendForceは見ている。中国のサーバメーカーは稼働を維持しており、サーバサプライチェーンの回復も予想以上に進んでいるという。具体的には、中国サーバメーカーは、旧正月(春節)の1か月前までに主要なコンポーネントの在庫を増やし、春節連休後の円滑な出荷を促進しているためで、主要メーカー各社ともに稼働再開が遅れたにもかかわらず、新型コロナウイルスの発生が短期的にサーバの出荷に与える影響は最小限に抑えられるとTrendForceは見ている。

ただし、サーバ業界全体で懸念されるのは、比較的労働集約的な上流のサーバ向けプリント基板の生産であり、生産能力を引き続き監視することが不可欠であるとしている。とはいえ、サーバメーカーはすでにプリント基板を多数備蓄しているため、短期的にはプリント基板が不足する可能性はほとんどないとTrendForceでは判断している。

TrendForceのシニアアナリストであるMark Liu氏によると、「サーバの需要に新型コロナウイルスは影響を与えていない。ほとんどのサーバメーカーは台湾など他の地域に生産ラインをシフトしているため、米国のデータセンターからの注文に応じた出荷に関しては影響は最小限に抑えられる」と述べている。

新型コロナウイルスの影響でスマホの生産量が減少

一方、2020年第1四半期(1~3月期)のスマホの生産台数については、生産見通しを前年同期比12%減の2億7500万台と5年ぶりの低水準に引き下げた。この背景について「スマホ業界が労働集約型でありながら、十分な労働力の確保が難しい」、「中国での2月10日までの稼働再開の遅れと人々の移動制限」、「スマホに対する購入意欲の低下」の3点があるとしている。

また、2020年第2四半期については、新型コロナウイルスの状況とサプライチェーンの回復の程度に依存するとしている。年間の見通しについては、需要そのものがなくなったわけではなく先送りとなっただけであるため、通年で見た場合の生産台数に関しては過度に悲観的な見方をしていないとしている。

ただし、台湾Digitimesは2月10日付けで、「もしも新型コロナウイルスの発生が6月まで続いた場合、中国内でのスマホの年間販売数量は従来予測の4億台から30%減の2億8000万台に減少する」との業界筋の予測を報じている。また、2019年第1四半期のサーバ出荷数量についても、Digitimes Research(Digitimes傘下の市場調査組織)が従来の前年同期比1.2%増との予測から同9.8%減に修正したとしている。

なお、中国では、多くの地方政府が、都市を封鎖し、人々の移動を抑止したため渡航先や帰省先から自宅に戻れなかったり、自宅に戻れても外出を制限されているため、2月10日時点で8割を超す中国の労働者が職場復帰できていないとDigitimesでは伝えており、労働集約型産業の2月における工場稼働率の大きく低下する見通しとしている。