日本感染症学会(舘田一博理事長)と日本環境感染学会(吉田正樹理事長)が7日、新型コロナウイルへの対応に関する医療従事者向けの緊急セミナーを東京都内で共催した。この中で感染者の治療をした国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長が詳しい症例報告をし、「だるさや熱が長く1週間程度続き、その後肺炎になるか回復する傾向にあるようだ」などと指摘した。国内の治療担当医師が学会の場で症例報告をしたのは初めて。
大曲氏によると、同氏ら国立国際医療研究センターの医療チームは国内で感染が確認された人の治療にあたっている。7日の緊急セミナーでは3例の報告をした。3例は中国・湖北省武漢市に滞在歴がある中国人1人と日本人2人。同氏は3例から新型コロナウイルス感染症の全ての症例を総括した説明はできない、としつつ、3人の患者の状態の推移について解説した。
この中で同氏は、当初は微熱、だるさなどの風邪に似た症状が1週間程度続き、その後高熱や呼吸器症状が出たがさらに1週間前後経過すると改善した、と説明。熱はインフルエンザや風邪では多くの場合3日程度で下がるが、1週間ほど続くなら新型コロナウイルスの感染を疑う条件になり得るという。そして、中国だけでなく日本国内でも軽症や無症状の感染者が確認されていることに関連して、風邪に似た症状が1週間程度続いた後に回復する例も多いとの見方を示しながら「発熱など風邪のような症状が1週間以上続く場合はおかしいと考え、新型コロナウイルスを疑ってほしい」などと述べた。
緊急セミナーでは、大曲氏のほか、国立感染研究所の松井珠乃・感染症疫学センター第一室長が国内で感染が確認された20~60代の12例について報告した。また東京医療保健大学大学院の菅原えりさ教授は、今後国内感染者が増えることを想定して「感染が疑われる人がいきなり医療機関を受診した際に入院患者や医療関係者への院内感染をどう防ぐかなども課題になる」などと述べた。また進行役の舘田・日本感染症学会理事長は「今後は(国内での感染の広がりの)全体像をみていくことが大切だ」などと指摘している。
日本感染症学会は6日、新型コロナウイルスについて「既に国内にウイルスが入り込み街の中で散発的な流行が起きていてもおかしくない」とする一般向けの見解を発表した。大曲氏らの医療チームはこれとは別に「日本の今後の国内対策は、感染そのものを封じ込めることよりも、重症化感染者を早く見つけることによる死亡率の低下と、感染者を適切に受け入れる医療体制の確立を目指すべき」との見解を示している。
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