パナソニックは、米ラスベガスで開催されたCES 2020において、メイン会場のラスベガスコンベンションセンター(LVCC)への出展のほかに、Tech Westエリアの中心となるSands Expoに90平方メートルの展示スペースを確保。同社で新規事業創出に取り組むShiftall、100BANCHとともに出展した。

ここ数年のCESでパナソニックは、Sands Expoの2階フロアで新事業創出プロジェクトが生んだ製品や技術の展示を行っている。2019年は45平方メートルだったものを、2020年は90平方メートルへと展示規模を倍増。さらに会場の出入り口に近い場所を確保し、例年よりも力が入っていた。

  • パナソニックがSands Expoに設置したブース

パナソニックの津賀一宏社長は、「LVCC(ラスベガスコンベンションセンター)のセントラルホールを中心としたメインエリアは、大企業の出展が中心であり、悪くいえば、例年と代わり映えがしない。だが、Sands Expoには、数多くのスタートアップ企業が出展し、その活性ぶり、発展ぶりには目を見張るものがある」と語り、「パナソニックもメインエリアとは別に、Sands Expoにブースを構え、100BANCHIの取り組みなどを紹介している。来場者にとって、大企業とスタートアップ企業の対比がどう映るかが気になる」などと、津賀社長自ら注目した展示内容となった。

Sands Expoのパナソニックブース

パナソニック ライフソリューションズ社による真空断熱ガラス「Glavenir」は、内部を真空状態にすることにより、断熱性能を兼ね備えたガラスを実現。0.1mmの真空層によって最小限の薄さで高い断熱性能を持つ。外気温度からディスプレイを保護できるため、モビリティでの利用や、住宅やオフィス、商業施設などにおいて、新たな空間価値を提案可能としている。会場では、透明なディスプレイと組み合わせて、屋外でも使える提案を行っていた。

  • 真空断熱ガラスのGlavenir。高い断熱性により、外気温度からディスプレイを保護

  • 0.1mmの真空層により、最小限の薄さで高い断熱性能を実現

パナソニック インダストリーソリューションズ社による「ENY 電池レス無線スイッチ」は、商品やサービスに対する顧客の好みや満足度といったデータを集計できるデバイス。どこでも簡単に設置し、利用者はボタンを押すという簡単な操作だけでフィードバックするのが特徴だ。

  • ENY 電池レス無線スイッチは、顧客の好みや満足度などを集計

新規創出プロジェクト「Shiftall」からは、3つの製品が展示された。

Shiftallは、パナソニックをスピンアウトしてCerevoを設立した岩瀬琢磨氏が、Cerevoの一部機能を切り離して設立した企業。独自ブランドによるIoT製品や家電製品などを開発、販売している。

3つのうち1つの「Cook'Keep」は、一度調理したものを温めたり冷ましたりできる炊飯器型の家電商品。スマートフードコンテナと位置づけている。調理済みの食事を冷蔵し、家族が帰宅する直前に自動で再加熱でき、最大90℃までの温めに対応。アプリを使って、冷蔵時間と温め開始時間を設定できる。

  • Cook'Keepは、一度調理したものを、温めたり、冷ましたりできる炊飯器型の家電商品

「Beam AR」と呼ぶスマートプロジェクターは、天井からつり下げるペンダントライト型のプロジェクター。内蔵したカメラがテーブルに置かれた物体を認識して、それに関する情報をテーブルに表示する。製品の説明に使用したり、食材からレシピを提案したりといった使い方もできそうだ。Beam ARを使えば、どんな机もスマートテーブルになる。

  • Beam ARは、テーブルに置かれた物体を認識して、それに関する情報をテーブルに表示

スマートミラーの「NeSSA」は、鏡に自分を映し出すと、いま着ている服が、前回はいつ着たのかを教えてくれるというもの。特徴的なのは、Googleカレンダーと連動すること。カレンダーのデータをもとに、前回その服を着たときと同じ人と会う予定の場合には、アラートを出して指摘。大切な人に会うとき、前回と同じ服を着ていってしまった……といった失敗を防げる。

  • NeSSAは、Googleカレンダーと連動し、同じ服を着て、同じ人と会わないように提案してくれる鏡

100BANCHからも3つの展示

100BANCHは、パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが東京・渋谷を拠点として、「100年先の世界を豊かにするための実験区」をテーマにコラボレーションなどを通じたアイデア創出の場として設立した組織だ。

パナソニックの生産技術を担当するマニュファクチャリングイノベーション本部が展示した「STAND BY D」は、片付けロボ。普段はLED照明によるデスクトップライトだが、仕事や勉強が終わったら机を離れるだけで、デスクトップライトがアームとなって、机の上に散らかっているペンや消しゴムなどをつかんで元の位置へと自動的に片付けてくれる。デスクワークのあと、散らかったものを片付ける時間を減らすメリットがある。「作業を開始するときにはいつも、働くのに最適な環境が用意されることになる」という。

  • STAND BY Dは、通常はLED照明だが、仕事が終わると片付けロボットに変わる

「RGB Light」は、光を利用して、美しい彩りの影を投影するエンターテイメントライトだ。赤・緑・青の3原色を組み合わせて、7色の異なるシャドーカラーを生成。アプリを使って影の色を制御することで、「影は黒色である」というこれまでの概念を変えて、影を使って部屋を彩る。バーやカフェなど店舗での利用も想定しているという。シェードは日本の職人による手作りで、本体の演出効果も高い。アナログな光を使用しながら、新たな光と影の関係を生み出す提案としている。

  • RGB Lightは、光を利用して、美しい彩りの影を投影

  • シェードは職人による手作りだ

  • 光はアプリで制御できる

「teplo」は、個人の体調やこれからの行動をセンシングして、最適なお茶や紅茶をいれてくれるIoTティーポット。お茶の達人は、個人それぞれの好みだけでなく、精神的な状態や肉体的な状態を考慮してお茶をいれるというが、それをテクノロジーで実現するものだ。teploは、個人の生活に関わる情報を収集・分析する。専用アプリと本体に内蔵した6つのセンサーを使って、正確な温度調整と抽出時間を管理。疲れている場合には、温度や抽出時間を調整してカフェインレベルをあげる、といったお茶のいれ方をするという。2020年春の量産を計画している。

  • teploは、個人の体調やこれからの行動をセンシングして最適なお茶や紅茶をいれてくれるIoTティーポット

  • 専用アプリを通じて個人の状態に最適ないれ方をしてくれる