LenovoがCES 2020で発表したフォルダブルPC(折りたたみPC)の「ThinkPad X1 Fold」、CES 2020の会場で実機に触れたファーストインプレッションをお伝えしたい。

  • ThinkPad X1 Fold

    13.3型の有機ELディスプレイを採用したフォルダブルPC「ThinkPad X1 Fold」

ThinkPad X1 Foldは、13.3型の有機ELディスプレイ(OLED)を備えたWindows 10マシン。解像度は2,048×1,536ドット、アスペクト比は4:3、輝度は300nit、色域はDCI-P3を95%カバーする。

この有機ELディスプレイが、中央から折り曲がる仕組み。平面にすればタブレット、完全に折りたたむと大きめの手帳のようなスタイルになる。まずはその動きを動画で見てほしい。

【動画】ThinkPad X1 Foldの開閉
(音声が流れます。ご注意ください)

気になるのはヒンジ部分の折目や画面のたわみだが、何台かの試作機を見た限りではほとんど目立たない。皆無といってもいいくらいだ。タッチ操作とアクティブスタイラスにも対応しており、画面の剛性も十分。タッチ操作でもペン入力でも、画面がふわっとたわむ感覚はなかった。画面を少し折り曲げて、紙の本のようにドキュメントを読むスタイルも提案されている。

「ThinkPad」ブランドということで、耐久性についてはLenovoの厳しい基準を満たしているそうだ。画面の折りたたみとオープンは3万回のテストをクリアしている。

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    折目やシワはまったく目立たなかった

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    開閉にはほどよい負荷がある

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    完全に閉じるとこうなる

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    紙の本を読むときのような角度でも使える

Bluetoothキーボードでクラムシェル

Bluetoothワイヤレスキーボード(Lenovo Fold Mini Keyboard)も付属する見込み。こちらもまずは動画を。

【動画】Bluetoothキーボードでクラムシェルスタイルに。本体背面にはキックスタンドがあり、画面を完全に開いていても自立させられる
(音声が流れます。ご注意ください)

キーボードは、本体を平面にしたときのちょうど半分の大きさだ。画面を折り曲げて机の上や膝の上に置き、手前に位置する画面のベゼル部分に、このキーボードがマグネットでぴたっと乗る。するとクラムシェルスタイルの小型PCとなるわけだ。キーボードの手前には、小さいながらもタッチパッドがある。

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    Bluetoothワイヤレスキーボード(Lenovo Fold Mini Keyboard)

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    画面の半分にキーボードを乗せて、クラムシェルスタイルに

クラムシェルスタイルだと、画面サイズが実質6.6インチ程度になるため、使い勝手が落ちるのは仕方ない。とはいえ、飛行機の座席やカフェの狭いテーブル、または膝上で簡単な作業をするには十分だし、物理キーボードでテキスト入力が行えるのもメリットだろう。物理キーボードを使わずに、ソフトウェアキーボードを表示させて使うこともできるが、物理キーボードのほうがはるかに入力しやすい。

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    クラムシェルスタイルのときのソフトウェアキーボード

キーボードを取り付けた状態でも、本体を完全に折りたためる。この場合、キーボード側が自動的に充電される仕様だ。ちなみに、展示の会場で海外の報道陣から「トラックポイントがないぞ」と突っ込みがあったのだが、トラックポイント付きのキーボードも検討中とのことだった。

難関だったヒンジ機構

背面に目を向けると、本革のカバーが印象的。ほどよい手触りがあり、手に持ったときに滑りにくい。背面カバーは画面の開閉に合わせてスライドし、キックスタンド機能とペンホルダーを持つ。画面を平面にしてキックスタンドを開くと、13.3型画面を立てて設置しておける。このスタイルでも、Bluetoothキーボードは使用可能だ。

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    キックスタンドで自立

フォルダブルを実現するうえで、ひとつの大きなポイントとなるのがヒンジの機構。有機ELディスプレイを折り曲げる角度の限界、折り曲げることによる厚みと長さの変化をどう逃がすか、耐久性などなど、クリアすべき点はいくつもある。

クラムシェルスタイルでの使用を想定していることからもわかるように、画面をフルオープンした状態(180°)からだいたい垂直の90°までの間は、無段階の角度調整としっかりした固定が必要だ。また、ヒンジの可動部分から内部にホコリやゴミが入らないように密閉されているほか、重要なヒンジ部分にユーザーが直接触れないようにということで、背面カバーの採用にもつながっている。

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    ヒンジ部分

【動画】ヒンジの動き
(音声が流れます。ご注意ください)

こうした多くの難関を乗り越えるために、ヒンジの開発には数年を要したという。ヒンジに関する長年のノウハウ、例えばコンバーチブル2in1 PC「Yoga」の一部で採用されているウォッチバンドヒンジなども、ThinkPad X1 Foldのヒンジ開発に生かされているそうだ。

CPUはIntelのLakefield

スペック面をまとめると、CPUはIntelの3D積層モバイルSoC「Lakefield」だ。低消費電力のSoCだが、放熱をうまく分散させることによって、背面の特定部分が熱くなることを回避している。

メモリは4,267MHzのLPDDR4X 8GB、ストレージは最大1TB SSD(PCIe・NVMe・M.2 2242)、グラフィックスはIntel UHD 11Gen Graphics(CPU内蔵)、バッテリー駆動時間は最大11時間だ。

通信機能は、IEEE802.11ax準拠の無線LANとBluetooth 5.0に加えて、WWANもサポート。LTEのほか、どういう実装になるかはわからないが5Gにも対応できるようだ。インタフェース類は、USB Type-C×2、USB Type-C接続のDisplayPort、SIMスロットなど。電源入力はUSB Type-C 65Wだ。

本体サイズは、画面を開いた状態でW299.4×D236×H11.5mm、閉じた状態でW158×D236×H27.8mm(いずれも背面カバーありのとき)。重さは999gと1kgを切っており、フォルダブルという機構と大きさを考えると、なかなかの軽さといってよいだろう。

ThinkPad X1 Foldは、画面の折りたたみを繰り返したときにフラットさが保たれるかや(保たれないようなモノは出してこないはず)、「ならでは」のユースケースなど、実際の製品をある程度使い込んでみないと真価を実感できないようにも思う。米国では2020年の中盤に2,499ドルからという価格で発売される予定で、日本ではどうなるかまだわからないが、新しいスタイルのPCとして期待できるのは間違いない。なお、Microsoftが2画面PC向けのOSとして明らかにしているWindows 10Xを搭載したThinkPad X1 Foldも予定されている。