いよいよ日本で次世代モバイル通信規格の「5G」がスタートする、2020年の携帯電話業界。政治の影響を強く受け、混とんとした状況が長らく続いた携帯電話業界ですが、5Gの開始に合わせて大きな盛り上がりを見せることになるのでしょうか。携帯電話会社からスマートフォン、そして政治の影響に至るまで、2020年の携帯電話業界動向を予想してみましょう。
東京五輪前に始まる5G、過度な期待は禁物
2020年、携帯電話業界において最大のトピックとなりそうなのは、やはり5Gの商用サービス開始ではないでしょうか。東京五輪に照準を合わせため海外に大きく遅れてしまった日本の5G商用サービスですが、2020年春にはようやく携帯大手3社が、一斉に5Gの商用サービスを開始することが予定されています。
そうしたことから2020年は、日本でも5Gスマートフォンが多数登場するでしょうし、特に7月からの東京五輪に向けては、各社が5Gを活用した先進的な取り組みをアピールしてくるものと考えられます。特にARやVRなどを活用した新しいコンテンツやサービスは、今後各社が次々投入してくるでしょうから、5Gでどのような新しい体験を提供できるのか注目されます。
ですが、5Gのサービスが始まるからといって、2020年に我々の生活が劇的に変わる訳ではありません。そもそもサービス開始当初の5Gは、4Gのネットワーク上で5Gを運用する「ノンスタンドアローン」運用であるため、5Gの特徴の1つである高速大容量通信しか実現できないのです。
それに加えて、5G向けの周波数帯は非常に高く遠くに飛びにくいことから、5Gが利用できるエリアは当初、あまり広くないことが予想されます。ゆえに消費者には一部のエリアでスマートフォンのスピードが速くなるくらいしか恩恵がないかもしれませんし、5Gの料金プランがあまり安くなければ、普及も進まないかもしれません。
そもそも携帯電話の通信規格は最初からフルスペックで登場する訳ではなく、10年の期間をかけて進化していくものでもあります。それゆえ5Gも、現在の期待値があまりに大きいだけにサービス開始当初は失望を呼ぶかもしれませんが、その後の進化を長い視野で見ていく必要があるでしょう。
トラブルが相次ぐ楽天モバイルは立て直せるのか
もう1つ、大きな注目が集まりそうなのが楽天モバイルの動向です。2019年に携帯電話事業者として新規参入を果たした楽天モバイルですが、現在提供されているサービスは、5,000人の無料サポータープログラム会員に向けた試験サービスに近いもの。商用サービスを開始したといっても、まだ本格サービス開始には程遠い状況です。
ですがこの無料サポータープログラムも2020年3月末までとされており、2020年4月からはインターネットなどに販路を絞りながらも、より多くのユーザーを対象としたサービスを開始するものと見られています。では楽天モバイルは、2020年3月から多くの人が満足できるサービスを提供できるかというと、まだ難しいだろうというのが正直なところです。
基地局整備の遅れで総務省から再三にわたって指導を受けるなど、課題となっていたエリア面に関しては積極的に改善を進めているようで、不満がないとはいえないものの想定よりは使えるとの声が多いようです。ですがユーザー数が増えてもネットワークの安定性を保てるのか? という点はまだ見えていませんし、2019年12月には2時間以上通信できなくなる大規模な通信障害も発生させているだけに、不安が少なからずあるのは事実です。
しかもサービス開始後の楽天モバイルの動向を見ていると、サービス運営体制そのものが安定していないように見えます。楽天モバイルは2019年10月の携帯電話サービス開始当初より、開通ができない、チャットサポートにつながらないなどの指摘が多数なされて問題となりましたし、2019年12月には利用者に誤請求メールが届くなどのトラブルが発生。同じ12月には検索サービスのキャッシュから、まだ公表されていない携帯電話サービスの料金プランが閲覧できるようになっていたことで話題となりました。
ネットワーク面以外でこれだけの問題が相次ぐのには、準備が足りず見切り発車でサービスを始めざるを得なかったことが響いているといえそうです。楽天モバイルは圧倒的な通信料の安さで契約を伸ばしたい方針を打ち出していますが、携帯電話事業は「安かろう悪かろう」では絶対成功しないというのは歴史が示しているだけに、2020年は早急な体制の立て直しが求められるところです。