2019年もGoogleは10月にハードウェア製品の発表イベント「Made by Google」を開催し、スマートフォン「Pixel 4」や超薄型軽量ノートPC「Pixelbook Go」などを発表しました。また5月のGoogle I/Oで「Pixel 3a」を発表しています。

Made by Googleを開始してから今年で4年目。HTCのスマートフォン部門を買収、Nestチームの統合、Fossilのスマートウォッチ知財買収、そしてFitbit買収発表と、Googleは着実にハードウェア事業を強化しています。しかし、2019年にMade by Googleは壁にぶつかりました。

Canalysの世界のスマートスピーカーの出荷台数レポート(2019年第3四半期)によると、Amazonが前年同期比65.9%増で1000万台を超えた一方で、Googleは前年同期比40%減の350万台でした。Googleは発表イベント前、AmazonはPrimeデーを開催した四半期でしたが、2019年は常にAmazonが上回り、またGoogle HomeとEchoが競合するようになってからこれほど差が開いたことはありません。ホリデーシーズンに向けてAmazonが「Echo」を第3世代に刷新し、数多くのEchoシリーズの新製品を投入したのに対して、Googleのスマートスピーカー新製品は音質を向上させた「Nest Mini」だけでした。

米国スマートTV市場でAndroid TVはTizen (Samsung)、webOS (LG)に次ぐ3位、すぐ下からRokuに迫られています。また米国のストリーミングメディアプレイヤーはRokuとAmazonで約7割のシェアという状態で、Googleは年々シェアを落としているにもかかわらず、2019年にChromecastの新モデルを投入していません。

上位のスマートフォンの「Pixel 4」もそれまでの世代に比べて厳しい評価に直面しています。代表的なのがiPhoneしか見えていないという意見です。Googleは、9月のiPhone 11/ 11 Proにぶつけるように10月にPixel 4を発表しましたが、搭載プロセッサはSnapdragon 855です。Snapdragon 855は2018年12月発表で、最新のハイエンド向けプロセッサとは言っても2019年10月は製品サイクルの終盤です (2019年12月にSnapdragon 865発表)。そのタイミングでは最新のスペックにこだわるハイエンドAndroid端末ユーザーには響きません。

初代Pixelが登場した時は、ハイエンドを占めるiPhoneを狙ったスマートフォンに価値がありましたが、今やiPhoneに対抗するAndroidスマートフォンはたくさんあります。それは多眼カメラであったり、コストバリュー、フォルダブルのような新スタイルであったり様々。それらが機能や性能、特徴を激しく争う中で、Pixel 4は競争力を発揮できていないと指摘されています。

  • 「Pixel 4」はSoliレーダーによってハンズフリーの操作が可能というユニークな機能を備えるものの、米ホリデーシーズンにインパクトを与えるものにはなっていません

Google Assistantは素晴らしい成長を見せているし、Googleがスマートフォンに提供するコンピューテーショナルフォトグラフィはユニークなものです。Made by Googleの製品は、そうしたGoogleのサービスや先端的な技術の価値を引き出すハードウェア製品です。が、それも消費者に届いてこそです。定期的な製品の強化や新モデルの投入、製品の売り方といった面で消費者を惹き付ける一手に欠けているのが現状。今でも2016年発売のGoogle Homeで事足りると言えば事足りますが、売る競争が激しくなってきた普及期にそれでは消費者は満足してくれません。Google HomeでGoogleは自身のハードウェアから音声検索の普及を促せただけに、その成功を無為にするのは惜しいことです。

  • サービスとAI、ハードウェアによる統合的な体験を生み出すのが「Made by Google」の狙い

とはいえ、Pixel 4で米国の4大キャリア全てでの販売を達成。春に発売したPixel 3aがコスパで評価されるなど、消費者への訴求の改善も見られました。Made by Googleで本当にGoogleがハードウェア事業を育てていこうとしているのか、2020年は同社の本気が試されます。