系外惑星観測のための宇宙望遠鏡「CHEOPS」

そんななか、ESAとスイス宇宙局は、CHEOPSと名付けた系外惑星を観測するための宇宙望遠鏡を開発した。

CHEOPS(キーオプス、ケオプス)とはCHaracterizing ExOPlanets Satelliteから取られており、古代エジプトのクフ王の、ギリシア語化した際の名前にもかかっている

ミッションの目的は、その名のとおり、"系外惑星を特徴づける"ことにある。これまでのケプラーのような宇宙望遠鏡は、未知の系外惑星を検出、発見することを目的としていたが、CHEOPSは、ケプラーなどの観測によって、すでに存在することがわかっている数百の系外惑星を観測する。

CHEOPSが狙うのは、地球の数倍程度の質量をもち、かつ岩石や金属などを主成分とする「スーパー・アース」と呼ばれるものから、ほぼ海王星サイズの大きさまでの系外惑星である。これらは系外惑星の中で最も豊富に見つかっているタイプでもある。

また、その中でもとくに、地球に比較的近い恒星にあり、さらに50日未満の公転周期で回っているもの、そしてすでにある程度の質量がわかっている系外惑星を対象とする。

観測に使うのは前述したトランジット法で、SSOが開発した口径300mmの望遠鏡と、高精度の光度計を用いて観測することで、その惑星のサイズを正確かつ精密に求める。その結果と、すでにわかっている質量とを組み合わせることで、その惑星の密度を求めることができ、そこから惑星の構造や組成などをある程度特定することができる。

これにより、観測した系外惑星が木星のようなガス惑星なのか、地球のような岩石惑星なのか、また大気に包まれているのか、海に覆われているかを判断することができるようになり、このサイズの範囲にある系外惑星の形成と進化に関する有力な手がかりが得られることになる。

CHEOPSはまた、既知の系外惑星の小さな変動を検出することによって、同じ惑星系にある、未知の系外惑星の検出・発見にも使うことができる。

さらに、一部の系外惑星においては、雲の存在や雲の組成など、大気に関する詳細を明らかにすることが期待できる。また、月(衛星)やリングをもっているかどうかもわかるかもしれないという。

  • CHEOPS

    CHEOPSの想像図 (C) ESA / ATG medialab

CHEOPSの製造は、スペインのエアバスが担当し、スイスのベルン大学が望遠鏡の設計・製造に参加した。質量は約280kgで、高度700km、軌道傾斜角98.22度の太陽同期軌道で運用される。またこの軌道は、地球の昼夜の境界線上を飛ぶ「ドーン/ダスク軌道」と呼ばれる特殊な軌道で、望遠鏡をつねに地球の夜側に向けることができ、太陽光や地球からの反射光が観測の邪魔にならないという特徴をもつ。ミッション期間は3.5年が予定されている。

ESAの科学部門の部長を務めるGunther Hasinger氏は「CHEOPSは、系外惑星の科学をまったく新しいレベルに引き上げるでしょう」と語る。

「数千の系外惑星を発見したいま、私たちは系外惑星の物理的、化学的特性を調査し、それらが何でできているのか、どのように形成されているのかといった特徴づけに取り組むことができるようになりました」(Hasinger氏)。

  • CHEOPS

    CHEOPSなどを載せたソユーズ・ロケットの打ち上げ (C) Arianespace

新たなる未知へ

CHEOPSはまた、将来の宇宙望遠鏡や、地上の望遠鏡などによる系外惑星の観測に向けて、最適な候補を特定するという使命も帯びている。

CHEOPSの計画は、ESAが2005年に制定した「コズミック・ビジョン2015~2025 (Cosmic Vision: 2015-2025)」というプログラムの中で立ち上がったものだが、このプログラムではCHEOPSに続いて、「PLATO (プラトー)」と「ARIEL (アリエル、エーリエル)」という宇宙望遠鏡の開発も決まっている。

PLATOは、ハビタブル・ゾーン内にある地球型惑星の検出を目指したミッションで、2026年に打ち上げが予定されている。ARIELは、既知の系外惑星の大気の化学組成や熱構造を観測することを目指しており、2028年に打ち上げ予定となっている。

また、NASAやESAなどが共同で開発しているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、ヨーロッパ南天文台が南米チリに建設を予定している「欧州超大型望遠鏡 (E-ELT)」も、系外惑星の探査での活躍が期待されている。

CHEOPSは、こうした将来のミッションや観測に向け、有望な観測対象を絞り込むなど、下準備の役割を果たすことが期待されている。

Hasinger氏は「CHEOPSは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡からPLATO、ARIELなど、私たちの将来の系外惑星ミッションへの道を開き、系外惑星研究における欧州の科学力を、最前線に保ち続けます」と語る。

これまで系外惑星は、どこにどれくらいあるかを見つける"検出・発見"が中心だった。そして系外惑星の発見がノーベル物理学賞に選ばれた2019年、いよいよその惑星がどんな天体なのかを詳しく"観測"する、新たな時代に入る。"第二の地球"が見つかる日も、そう遠くないのかもしれない。

  • 系外惑星

    系外惑星の想像図 (C) ESA - C. Carreau

出典

ESA - Cheops overview
ESA Science & Technology - CHEOPS
CHEOPS MEDIAKIT
CHEOPS Mission Homepage
ESA Science & Technology - Exoplanets

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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