オーディオ・ビジュアルのエキスパート、山本敦さんがワイヤレスヘッドホンとしても使えるスマートサングラス「Bose Frames」について、アツく語ります。

Bose Frames (2019年10月発売)

  • Bose Frames

筆者が2019年に出会い、最も刺激を受けた製品のひとつがボーズの「Bose Frames」。サングラスのカタチをしたワイヤレススピーカー、ヘッドホンのようなスマートデバイスです。Bose Framesは、これからのポータブルオーディオが進むべきひとつの道筋を示しているように思います。

度付きレンズに変えてメガネにしたら最高でした

Bose Framesと初めて対面したのは2019年6月、アメリカへ出張に出かけたときでした。日本での発売前に、アメリカや欧州の一部地域で先行発売されていたので、お店の展示機で試してみたところ、やたらと音が良くて強く印象に残ったことを覚えています。日本で発売されるタイミングを心待ちにしながら、ようやく手に入れました。

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    筆者(山本敦)が2019年に最も熱かった製品としてイチオシする、スマートサングラス「Bose Frames」

どんな製品も同じですが、実際に手元に置いて使い込むと、想定外の良いところ・もの足りないところが次々に見えてくるものです。筆者の場合、Bose Framesを普段から活用するためには「レンズに度を入れること」が絶対に必要でした。筆者はコンタクトレンズが苦手です。しかしBose Framesはメガネの上にかけられるサイズではないので、度付きの交換レンズを作りたいと思い立ち、最寄りの駅ビルに入っているメガネ専門店に駆け込みました。

Bose Framesをショップのスタッフに手渡すと、「造作もない」とまでは言いませんでしたが、ふたつ返事で了解を得て、筆者が普段かけているメガネと同じ度数の交換レンズを約1時間で製作してくれました。値段は5,000円前後でした。

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    Bose Framesに度付きのクリアレンズを装着。見た目には限りなく普通のメガネっぽくなった

ボーズは正規アクセサリー品として度なしのBose Frames用交換レンズを発売していますが、筆者のように正規品ではないレンズを使ってBose Framesが破損したり不具合が起きた場合はメーカーのサポート対象外となります。Bose Frames用の交換レンズを自作する場合は自己責任で行ってください。筆者は今のところ、度付きレンズを装着したBose Framesを快適に使えています。

水仕事をしながらでも音楽が聴ける、聴けるぞ!

室内では主にキッチンで作業をするときに、Bose Framesで音楽を聴きながら作業の効率を高めるために使っています。

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    左右のテンプル(つる)にスピーカーを内蔵

ヘッドホンやイヤホンの場合、外音取り込み機能などを併用しても家族との会話が自然にできなかったり、インターホンが鳴ったことに気付かずスルーしてしまうことがありました。Bose Framesは、音楽を聴きながら生活音にも注意を向けられる安心感があって、とてもありがたいです。

もしスピーカーを手元に置いたとしても、水仕事を始めると音楽が聴き取れなくなります。その点、Bose Framesは常に身につけているので、シャープで力強いサウンドがズバッと耳元に飛び込んできます。濡れている手でスマホを触りたくないので、Bose FramesをAmazonのスマートスピーカー「Echo Spot」にペアリングして、Amazon MusicやSpotifyの楽曲を音声で選曲しながら聴いています。

Bose Framesのテンプル(つる)は、バッテリーや通信モジュール、アンプなどが内蔵されているため、やや厚めです。それでも装着した姿を正面から見ると、少しフレームが太めなメガネをかけているようにしか見えないので、お店で会計をするときも店員に自然に話しかけてもらえます。ヘッドホンやイヤホンの場合、こちら側が外音取り込み機能をオンにしていたとしても、身に着けたままだと相手に悪い印象を与えてしまわないか、気がかりですよね。

Bose Framesを使うときに気をつけるべきポイントは、音楽のボリューム。究極のオープン型構造を採用しているため、音量をあまり上げすぎると周囲に音が漏れ聞こえてしまいます。音が漏れてもかまわない賑やかな場所であれば、Bose Framesをかけたまま音楽リスニングを楽しめます。水濡れに関してはIPX2相当の防滴仕様なので、雨のしずく程度であれば付着しても拭きながら使えば大丈夫です。

2020年はスマートメガネがブレイクする?

ボーズは、Bose Framesやワイヤレスヘッドホン「Bose Noise Cancelling Headphones 700」(2019年9月発売)などのポータブルオーディオ機器に対応する、「Bose AR」というプラットフォームを公開しました。マップを活用する情報ツールや、ゲームをはじめとするエンターテイメントなどの「音で楽しむAR」を実現するモバイルサービスです。

Bose ARはサービスの日本語化が完了していないため、その実力はまだ計り知れない部分もありますが、これからのポータブルオーディオは音楽を聴くだけでなく、コミュニケーションデバイスとして様々な可能性を秘めていることを実感させてくれるサービスになるのではないか、と期待しています。

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    Bose ARには様々なコンテンツが追加されているが、日本語対応を待たなければならない状況

2020年には、Amazonが発表したAlexa対応メガネ「Echo Frames」や、その他のメーカーが商品化したメガネ型デバイスが次々と日本に上陸してくるかもしれません。

メガネはヘッドホンやイヤホンよりも、デザインの善し悪しがユーザーの顔の印象に大きく影響するアイテムです。しかし、個人的にはEcho Framesのフレームのデザインには色々と思うところもあります。これから新しいメガネ型デバイスを商品化するメーカーにはぜひ、開発の早い段階からメガネ専門店とタッグを組んでプロダクトデザインを洗練させたり、レンズのカスタマイズを自由にできるように土台のプラットフォームを充実させて、しっかりと良いものを作ってほしいと思います。

製品のラブ度 ★★★★★
製品のオススメ度 ★★★☆☆
  • 著者プロフィール:山本敦
    ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されているエレクトロニクスショー「IFA」の取材を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす