ポイント還元制度の追い風もあり、日本でも本格スタートした「モバイル決済」。私もスマートフォンと非接触型ICカードの二刀流で実践していますが、いくばくかの現金は常に持ち歩いています。まだ現金オンリーの店舗も多いですからね。一方、海外には現金を授受する習慣が完全に廃れた地域があるとか……その最先端ともいえる中国・深センを訪ねる機会があったため、現地のモバイル決済/キャッシュレス事情をレポートします。

  • 深センの中心部にそびえ立つ「平安金融大厦(ビル)」。最頂部はなんと600m!

今回の出張は珠江デルタ(珠江河口の香港、広州、深セン、東莞、マカオを結ぶ三角地帯)にあるエレクトロニクス企業数社を訪ねるというもの。深セン市内にも空港はあるものの日本からの直行便は少ないため、まず隣接する香港へ飛びそこから移動するというルートを選びました。

  • 街中至るところで大規模な工事が行われていました

香港から深センへ移動する手段はいくつもありますが、今回は香港国際空港からフェリーで深センの蛇口(シェイコー)へ渡る方法をチョイス。デモがさらに活発化する兆しもあった香港の状況を考慮し、無難な判断を下しました。

香港はスルーするから香港ドルは不要、必要なのは中国人民元のみ。しかし、今回巡る深セン・東莞は名だたるモバイル決済先進地域、現金がなくても困らないという事前情報を入手していたので、悩んだ挙げ句一切両替しないという選択をしました。

  • モバイル決済用に「アリペイ(支付宝)」を用意し、新サービス「Tour Pass」のお世話になることに

私がとった方法は、日本円(約2万円)にアメリカ出張で残った米ドル(約100ドル)をくわえた現金を財布に入れ、いざというときの両替に備えつつ、モバイル決済用に「アリペイ(支付宝)」のアプリを用意するというもの。2019年11月、中国当局の規制緩和方針を受け、上海銀行のプリペイドカードサービスを観光客向けに提供する「Tour Pass」を開始したからです。

中国のモバイル決済は、アリペイとWeChat Pay(微信支付)の2社が全体の95%近くを占めており、どちらか一方を利用できれば困らないと聞きます。出発時点でWeChat Payが観光客向けサービスを開始していなかったため、消去法でアリペイ/Tour Passを選択することになったわけです。

もう1つ、忘れてはならないのが通信手段。日本で利用しているキャリアの国際ローミングサービスにするか迷いましたが、中国聯通香港のプリペイドSIMを用意しました。珠江デルタであれば4G通信がOK、開通後8日間利用できます。容量5GBのところキャンペーン期間中は+2GBの7GB、これならテザリングでPCも使えそう……ということで、SIMフリーのAndroid端末に挿してモバイルルータ代わりに使うことに。iPhoneも持参したので、万が一端末を紛失しても困りません。もちろん、どちらの端末にもアリペイアプリはインストール済です。

  • まずは通信手段の確保。香港のプリペイドSIMを使えば、GoogleのサービスやFacebookも使えます