KDDIは11月1日、2020年3月期 第2四半期 決算を発表しました。それによると、営業利益は2Q単独で増益に転換。同社は「通期目標に向けて順調な進捗」と強調しています。記者団から寄せられた「楽天モバイル参入の遅れの影響」などについて、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏が回答していきました。

  • KDDIが2020年3月期 第2四半期 決算を発表しました

2Q単独では増益に転換

第2四半期(7~9月)の営業利益が増益に転換できた理由について、高橋社長は「第3四半期(10~12月)には電気通信事業法の改正があり、楽天が参入することも分かっていた。競争環境が変わることが予想されたため、その前に、できるだけ営業利益を回復しておきたい考えがありました。そこで全社を挙げ、コスト削減も含めて努力した結果です。成長分野であるライフデザインなどが堅調に推移しました」と回答しました。

  • 上期連結業績ハイライト。営業利益は2,976億円。1Qには減益を記録しましたが、2Q単独では増益に転換しています

競争の自由度は下がっている!

下期に向けてスマートフォンの販売台数の推移をどう予想するか、また年末商戦の動向などを聞かれると、「まだ10月が終わった段階で先のことは読み切れない部分があります。9月の駆け込み需要は多かった。10月はMNO間の流動性が落ちています。契約解除料が1,000円になったことで、キャリアからMVNOに流出される方は増えた。いまはリテラシーの高い方が動いている状況。市場の動向を見ながら対応していきます」と回答。新型iPhoneについては「9月にかなりの数が出ました。10月1日以降も想定通りの台数が出ています」としています。

総務省の働きかけで、端末割引は2万円まで、長期割引も規制されたことを受けて「去年に比べると、我々の料金施策の自由度は下がっている」(高橋社長)とボヤく場面も。通常は12月からスタートする学割シーズンですが、今年は市場の活性化を図るため、11月からスタートすると説明。「例年とは(競争環境の)様相が変わってくるのではないか」と言及しました。

  • 記者団の質問に回答する、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

災害対策については反省点も

台風15号、19号など立て続けに起こった災害から、どのような教訓を得たかという質問には「毎年のように災害が起こり、各地で被害が報告されています。KDDIでも災害があるごとに、全社で対応策の見直しをしている。感覚的には、現場主導で対策できたと考えています。今回は、のべ1万人を動員して復旧にあたった。電力とネットワーク回線の確保について対応しました」と説明。「できるだけ早い復旧を目指しました。キャリアのなかではイチバン早く復旧できたと自負しています」とする一方で「毎回、課題も出てきます。今回の台風19号に関しては、事前に移動電源車を配置したわけですが、まさか長野県でも電源が必要になるとは想定していなかった。配置が1日ほど遅れてしまいました。これを教訓にしていきます」。

  • 立て続けに発生した災害に対して、KDDIはさまざまな活動を行ってきた

3Gは2022年3月までに停波

10月29日、NTTドコモはFOMA(3G)サービスを2025年度末に終了すると発表しましたが、KDDIでは他キャリアに先駆けて、2022年3月までに3G電波を停波したい考えです。これについて進捗を聞かれると「数は非公表ですが、ドコモは2,000万、うちは9月の時点で数百万規模の3Gユーザーの方がおられます。3Gから4Gへ移行を促すには、いまが良いタイミング。QRコード決済はスマートフォンのほうが使いやすいし、便利なコンテンツも増えてきています。4Gに移行したくなるソリューションもそろってきた。見込み通りに進むのではないかと考えています」。

  • 3G、4G、5Gのロードマップについて。5Gをスタートさせつつ、3Gは停波を進めていきます

楽天モバイルの影響について

楽天モバイルがスモールスタートとなったことの受け止めについては、「これまでずっと申し上げてきましたが、仮想化ネットワークの構想と、実際にネットワークを作ることは別問題。そう簡単ではないと、これまでも繰り返し言ってきた。偉そうな言い方になったら申し訳ないんですが、10月1日にスタートできないということを聞いて『そうだろうなぁ』と思いました。ただ、これから基地局を1,000、2,000、3,000と増やしていくと思いますし、我々も気を緩めることなく、しっかりと引き締めて対応していきます」。

KDDIでは、楽天モバイルにローミングを提供できるよう準備を進めてきました。具体的には1GBでいくら、といった料金プランを提示していると思われます。しかし、本格的な参入が遅れたので、KDDIとしても収益が減ったのではないでしょうか。これについて聞かれると「楽天さんとの規定があり詳細は開示できません。ローミング料金については定額、従量で2つの構えをしており、利用量が想定を下回っても(収益が)ゼロになることはありません」(高橋社長)。

現在は、東京都23区外に出たり、地下鉄に入ったり、未対応のビルに入ると楽天モバイルのネットワークが切れ、KDDIのネットワークに切り替わる状況の様子。これについて「現在はS8という接続方式のため、切り替える段階でネットワークが途切れることがありますが、来春に向けては(途切れにくい)S10に移行する予定です」と説明しました。

改めて、楽天がKDDIの業績に及ぼした影響を聞かれると、「楽天の本格参入が遅れるだけでなく、今年は契約解除料が1,000円になったり、端末の割引が制限されたりと、さまざまなことがありました。当初、描いていたプランと比べると、いろんな変化が起きすぎているくらい。かねてから、2019年度末の増収増益を確保します、とお約束してきました。これを実現するために、どう対応していくか、いま精一杯にマネジメントしているところです」と苦笑い。

楽天モバイルがスマホ市場の利用料金を引き下げるとの予想もあったが、という問いかけには「我々は、すでに格安スマホ対策としてauピタットプランで対抗しています。楽天も、MVNOからMNOに移行する際に無茶なプランは提供しないと思っていました。ムチャをすれば楽天も採算がとれなくなってしまう。そんなに無茶くちゃ安く参入してこないと見ていた。だからもともと、値下げ圧力は感じていませんでした」と回答しました。

  • 格安スマホ対策で「ピタットプラン」を提供しつつ、UQ mobile、ビッグローブといったグループ傘下のMVNOも契約数が増加中(MVNOのモバイルID数は2Q時点で268万契約。前年同期比で27.5%の伸び)