50mm F1.4のレンズといえば、フィルムカメラ時代からスタンダード的な人気を集めている標準レンズです。古くから、カメラメーカーやレンズメーカーがさまざまな製品を発売してきましたが、「究極の50mm F1.4レンズ」との呼び声も高いのが、パナソニックのLマウントレンズ「LUMIX S PRO 50mm F1.4」です。実売価格は税込みで25万円前後、重さは約955gという重量級レンズですが、噂に違わず絞り開放から素晴らしい写りを見せてくれる1本でした。

  • パナソニックのLマウントレンズでは唯一の短焦点タイプとなる「LUMIX S PRO 50mm F1.4」(S-X50)。実売価格は税込み25万円前後。現在実施中のキャッシュバックキャンペーンでは2万円のキャッシュバック対象となっている

描写はもちろん、操作性も上々

LUMIX S PRO 50mm F1.4は、各社の50mm F1.4のレンズと比べても存在感のある仕上がりです。11群13枚(非球面レンズ2枚、EDレンズ3枚)、直径90mm、全長130mm、重量約955gとかなり大柄ですが、パナソニックのフルサイズミラーレス「LUMIX S1」に装着するとベストバランスだと感じました。

レンズを手にして「なんでこんなに大きく重いのだろう?」と感じた疑問は、絞り開放でシャッターを切っていくうちに氷解しました。ボケ味がとても上品でスムーズだったからです。それでいて、焦点面の立体感が豊かで印象に残る描写を見せてくれます。

使用感もなかなか。フォーカスリングをスライドさせると瞬時に距離指標が現れ、マニュアルフォーカスでの撮影も楽しめます。もちろん、オートフォーカスでもF1.4というシビアなピント合わせも高速で難なくこなしてくれました。

絞りリングの存在も、フォトグラファーを撮る気にさせてくれる装備だと感じます。クリック感も適度にしっかりしており、太すぎず細すぎないリングは指がかりも良好で、意図した通りの絞り値に設定できました。

確かに大きく重たいレンズですが、その写りと操作感はまさに「納得」の1本でした。Lマウントのカメラを持っているならば、ぜひ試してほしい標準レンズだといえるでしょう。

  • 絞りF1.4開放でのボケ味の美しさは素晴らしいものがあります。スーッと溶けていくようなボケの描写は、撮影者を虜にすることでしょう(ISO100、1/200秒、F1.4)

  • 大柄なレンズですが、LUMIX S1シリーズとのバランスは悪くありません。お祭りの準備風景をパッと撮影しましたが、そのディテールはなかなかのものでした(ISO100、1/80秒、F1.4)

  • 後ボケだけでなく前ボケの美しさも特筆できます。撮影中に「飲んでいきなさいよ」と声をかけられたお店でのワンカットですが、手前のジョッキのボケ方が何ともいえません(ISO500、1/60秒、F1.4)

  • LUMIX S1シリーズと組み合わせた際にうまく使うには、AFモードを上手に選択するのがコツ。顔認識または瞳認識なのか、中央1点なのか、もしくはその他なのかを適切に選びましょう。ピント合わせも高速なので、撮影していて安心感があります(ISO125、1/60秒、F1.4、-1補正)

  • 開放時の描写は立体感豊かで、独特の雰囲気をかもし出します。浅草寺の仲見世商店街でスマートフォンを掲げて撮影する旅行者を撮りましたが、瞬時に正確にピントが合い、ムーディーな色再現に仕上がりました(ISO100、1/1300秒、F1.4)

  • 絞り開放での描写もステキですが、チョイ絞りでのカチッとした写りも魅力的です。祭りの提灯のディテールをしっかりと写せました(ISO100、1/160秒、F1.4、-0.7補正)

  • サーバーからジョッキに注がれる生ビール。その様子を絞り開放で狙いましたが、クリーミーな泡立ちと、バーの落ち着いた雰囲気を見た目通りに捉えることができました。色再現性もなかなかのもの(ISO320、1/60秒、F1.4、-1補正)

  • 海外旅行者カップルの後ろ姿を撮りましたが、瞬時に決まるオートフォーカスと、被写体が浮かび上がったかのような立体感が魅力的だと感じます。大きく重たいレンズですが、活躍するシーンは多いはず(ISO2000、1/60秒、F1.4、+0.3補正)

  • Lマウントのミラーレスのユーザーは、ライカ、シグマ、パナソニックの3社からさまざまなレンズをチョイスできるので、撮影表現の幅が拡がることでしょう。この50mmは、開放から自信を持って撮影に臨めるレンズです。F1.4の絞り開放ですが、雷門のディテールも力強く感じます(ISO125、1/6秒、F1.4、+0.3補正)