この7月、シグマが交換レンズやミラーレスカメラの新製品群を発表しました。話題の中心は、「ポケッタブル・フルフレーム」を標榜する超小型のフルサイズミラーレス「SIGMA fp」(発売日未定)でしたが、それに装着されていた標準レンズ「45mm F2.8 DG DN」も大きな反響を呼びました。軽量コンパクトなSIGMA fpにジャストフィットなサイズ感もありますが、これまで大きく重たいレンズを中心にリリースしてきたシグマの新機軸と捉えられたこともあるでしょう。

SIGMA fpはまだ販売されていないので、今回はパナソニックのフルサイズミラーレス「LUMIX S1R」に装着し、東京五輪でカヌー・スラロームの会場となる葛西臨海公園周辺や、水上バスでたどり着ける浅草などをブラブラと撮り歩きました。

  • シグマが7月末に販売を開始したフルサイズ対応の標準レンズ「45mm F2.8 DG DN」。Lマウント用に加え、α7シリーズなどで使えるソニーEマウント用を用意する。実売価格は税込み6万円前後

精細な描写と柔らかなボケが好印象

45mm F2.8 DG DNを手にすると、まず造りの良さに驚きました。スムーズな動きのフォーカスリング、高級な節度感がある絞りリング、そして美しい意匠の金属製レンズフード。まるで工芸品のような仕上がりです。重さもわずか215gに抑えられていて、常にカメラに装着しておくにふさわしいパッケージングだと感じます。

  • 45mm F2.8 DG DNはデザイン性が高いうえ、外装の質感も高い。金属製フードのデザインも魅力的だ

レンズ構成は7群8枚で、絞り羽根枚数は7枚(円形絞り)。フィルター径は55mmで最短撮影距離は24cmと、常用レンズにふさわしいスペックになっています。「Contemporary」シリーズに属する製品なので、カメラ側の周辺光量補正や収差補正などの補正機能にもしっかり対応。マウント部にラバーシーリングが施され、簡易防塵防滴機構になっているところは評価できます。

これだけ小さく軽くても、写りは上等です。特にボケ味が柔らかく、優しい描写だと感じました。絞り開放ではノスタルジックな佇まいの写りさえ見せてくれますが、ピント面からスーッとソフトににじんでいくようなボケ味は、“ボケマスター”と称される「105mm F1.4 DG HSM」の描写を思い起こさせます。

  • 45mm F2.8 DG DNは実に軽量コンパクト。LUMIX S1Rに装着して持ち歩いても苦にならないサイズ感です。水族館内でスナップしたヒトコマですが、行楽の際に持ち歩いて撮影するのに向いています。カメラの多彩なオートフォーカスモードに対応し、シャッターチャンスを逃すことはないでしょう(ISO1000、1/60秒、F2.8)

  • 使っていて気に入ったのが美しいボケ味です。フルサイズ機での撮影なのでボケが大きくなるのは当然といえますが、スムーズで溶けゆくようなボケ具合に惚れ込みました。絞り開放でもピント面はしっかりと軸があり、いい雰囲気ですね(ISO100、1/160秒、F2.8)

  • 海に面した公園で、手前に立木を入れて観覧車をF2.8の絞り開放で撮影しました。芝生のトーンもさることながら、前面に配置した立木のボケ具合がとても気に入りました。品があって落ち着いた描写がステキです(ISO100、1/5000秒、F2.8)

  • 45mm F2.8 DG DNは絞り開放でのボケ味が美しいので、どうしてもF2.8での撮影が多くなってしまいます。ボケマスターのニックネームを持つ105mm F1.4 DG HSMに通じる上質なボケ味はなかなかのもの。水面に顔を出してる葉を撮りましたが、トロンとした柔らかく優しい描写が何ともいえません(ISO100、1/250秒、F2.8、-0.7補正)

  • 少し絞って撮れば、グッとシャープなキレ味を見せてくれます。画面中央にカップル、左手に自転車、右手に屋形船をバランスよく配置してシャッターを切りましたが、イメージ通りの仕上がりとなりました。遠くのゲートブリッジもよく写っています(ISO100、1/400秒、F5.6)

  • 傾いた太陽の光を淡く反射するテーブル。再びF2.8絞り開放で撮ってみましたが、柔らかい描写が夏の終わりの雰囲気を醸し出しています。積極的に開放で撮りたくなるレンズで、ポートレート撮影にも向いているでしょう(ISO100、1/1600秒、F2.8、-0.7補正)

  • 浅草にやってきました。葛西臨海公園から水上バス利用で行ける世界的な観光地です。この日も、海外からの訪日客で大いに賑わっていました。その中心地にある浅草寺の大提灯を狙いましたが、見た目に近い発色と見事なディテール再現性を見せてくれました(ISO100、1/200秒、F2.8、-0.3補正)

  • 五重塔の端から夏の太陽が顔を出しました。45mm F2.8 DG DNはイヤなフレアが出ることもなく、暗部のディテールをしっかり描き出してくれました。逆光時でも安心して使えるレンズだと感じました(ISO100、1/13000秒、F2.8)

  • 一般的な標準レンズより少し短い45mmという焦点距離は、スナップに好適。付かず離れずといった自然な距離感で撮影できるからです。こちらはF5.6でのカットですが、「カチカチカチ」とクリック感が心地よい絞りリングを繰っての撮影が実に楽しく快適でした。旅行者の服のディテールがよく出ています。現在シグマが開発中というフルフレームFoveon機で撮ったらどんな絵になるか楽しみですね(ISO100、1/200秒、F5.6、-0.7補正)

  • 東京五輪で南アフリカとインドネシアのホストタウンに選出された町田にやってきました。小山田の緑地にある町田市立陸上競技場は、J2のFC町田ゼルビアのホームグランドとしても知られています。シャッタースピード優先AEで100m走を撮影しましたが、夏の光に照らされる選手の躍動感を記録できました。Lマウントユーザーの常用レンズとなりそうです(ISO320、1/1600秒、F7.1、-1.3補正)

昨秋に発表された「Lマウントアライアンス」は、ライカ、パナソニック、シグマが「Lマウント」を採用したミラーレスカメラやレンズを出していく、という声明でした。すでに、ライカとパナソニックからカメラやレンズが発売されていますが、ほとんどが性能をトコトン追求した重量級のものばかり。シグマが発表したSIGMA fpや45mm F2.8 DG DNなどの軽量コンパクトな製品は、「いつでも持ち歩きたい」という点を重視する写真ファンに高く評価されそうです。

  • 小型軽量のフルサイズミラーレス「SIGMA fp」と45mm F2.8 DG DNの組み合わせ。フルサイズ機とは思えないサイズ感が魅力的だ

【耳寄り情報】シグマは、45mm F2.8 DG DNなどの最新交換レンズを貸し出して体験できる「新製品貸出し体験会 2019 Summer」を開催します。8月24日(土)は原宿のsorama gallery(渋谷区神宮前)、9月7日(土)は梅田スカイビル(大阪市北区)で実施します。参加は無料で、予約も必要ありません。