科学技術振興機構(JST、濱口道成理事長)は16日、今年度に創設した「輝く女性研究者賞」(ジュン・アシダ賞)の第1回受賞者に欧州分子生物学研究所(EMBL)バルセロナの戎家美紀(えびすやみき)グループリーダー(39)を選んだと発表した。また、「輝く女性研究者活躍推進賞」を九州大学に、科学技術振興機構理事長賞を京都大学高等研究院の深澤愛子教授(40)に贈ることを決めた。11月17日に日本科学未来館で開催する「サイエンスアゴラ2019」で表彰式とトークセッションを行う。

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    理事長記者説明会であいさつするジュン・アシダ賞の受賞が決まった戎家氏

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    科学技術振興機構理事長賞の受賞が決まった深澤氏

JSTはダイバーシティ事業の一環として、女性研究者の活躍推進に取り組んでいる。未来に貢献する優れた研究を行っている女性を表彰する「輝く女性研究者賞」と、女性研究者の活躍を推進している機関を表彰する同活躍推進賞を4月に創設し、6月末まで公募した。女性研究者賞の対象は、募集開始時点で原則40歳未満。女性研究者賞には104件、活躍推進賞には12件の応募があった。

選考委員会(委員長・鳥居啓子米テキサス大学オースティン校教授、7人)が審査して「輝く女性研究者賞」と活躍推進賞を選定。ジュン・アシダ賞に匹敵すると評価された深澤氏のために、特別に科学技術振興機構理事長賞を設けた。ジュン・アシダ賞の副賞は100万円。著名なファッションデザイナーだった故・芦田淳氏が1994年に青少年教育を目的として設立した「芦田基金」から贈られる。

戎家氏は今年、理化学研究所からEMBLバルセロナに移籍した。これまで自発的な細胞分化やパターン形成を人工的に作る合成生物学の分野で成果を上げてきた。近年は、生物の大きさにより体内で時間スケールが異なるという生物の本質的な仕組みの解明に取り組み、世界の注目を集めている。研究以外でも、欧州と日本の研究者の交流促進を図る活動などを通じて社会に貢献している。

九州大学は2009年に教員採用・養成の助成枠を初めて設け、透明性の高い2段階審査により優秀な女性研究者を公募・育成する「九大方式」を構築。2017年には配偶者帯同雇用制度を創設した。女性枠教員の論文業績分析により女性限定公募制度の意義を実証し、女性研究者の研究力に関する無意識のバイアスを是正するとともに、国際会議などで発信し、国内外で注目されている。

深澤氏は高強度な光照射下でも退色しない超耐光性蛍光色素の市販化や、大気下でも安定な塗布型有機半導体への応用展開など、機能性有機材料の創製で突出した研究実績と成果を社会還元した実績がある。研究以外の社会貢献では、各種メディアを通して社会への情報発信に継続的に取り組むなど、化学の分野で男女問わず若手研究者から目標とされる活動を実施している。

16日にJST東京本部で開かれた理事長記者説明会には戎家氏と九大の関係者が出席(深澤氏は欠席)。戎家氏は「(受賞が決まり)嬉しいです。副賞で(もらう基金で)日本の大学生1人をバルセロナに招待したい」などと語った。また九大男女共同参画推進室の上瀧恵里子教授は「女性枠の研究者が質の高い仕事をしていることが明らかになった。各大学も改革を試みてほしい」と述べた。

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