ティーピーリンクジャパン(以下TP-Link)は、Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)対応のゲーミングルーター「TP-Link Archer AX11000」など3製品を10月31日から発売する。最新の無線LAN規格に対応するとともに、電波の利用効率の高さや遅延の少なさを売りに、ゲーミング市場でも存在感をアピールする。

  • ティーピーリンクジャパンが発表したWi-Fi 6ルーターの最上位モデル「TP-Link Archer AX11000」。8本のアンテナは、差し込むだけで装着可能。ねじ込んで止めるなどの機構は必要ない

Wi-Fi 6で無線LANの通信効率が格段に高まる

Wi-Fi 6は正式な規格名を「IEEE802.11ax」といい、現在主流となっているIEEE802.11acの次世代規格となる無線LAN規格。これまで電気工学・電子工学技術学会である「IEEE」の規格名で流通してきたが、わかりにくいこともあり、無線LANの相互互換性促進のための業界団体である「Wi-Fi Alliance」が、無線LANの世代の数字をつけて呼ぶことにしたものだ。ちなみに、IEEE802.11acが「Wi-FI 5」、IEEE802.11nが「Wi-Fi 4」となる。過去の規格との後方互換性があり、Wi-Fi 6のネットワークにWi-Fi 4や5、それ以前の端末も接続は可能だ(機能を全て利用できるわけではない)。

Wi-Fi 6では、これまでと同じく2.4GHZ帯と5GHz帯の電波を利用するが、変調方式に1024QAMが採用されるなど様々な改良が加えられており、理論値となるが、IEEE802.11ac wave2(6.93Gbps)の約1.5倍にあたる、最大約9.6Gbpsの通信が可能な規格だ。

11MbpsのIEEE802.11bから倍々方式で高速化してきたこれまでの無線LAN規格と比べると、高速化の倍率が低いように思えるが、実は、Wi-Fi 6では高速化よりも、電波の利用効率を高めることを重視している。現在でもすでに、スマートフォンやパソコン、ゲーム機、家電など、同時に何十台もの端末が接続されているが、IoT時代になれば、さらに大量の端末が接続されるようになる。現在の無線LANルーターは10〜20台程度繋がっただけで、一気に体感速度が遅くなってしまうが、Wi-Fi 6ではMU-MIMO(複数のアンテナで同時に複数のユーザーを接続させる技術)や、多重化方式にLTEでも使われている「OFDMA」を採用するなどして、同時に接続できる端末の数を増やし、スループットをIEEE802.11acよりも4倍以上高めるとされている。

現在、IEEE802.11axは標準化の最終段階に入っており、来年に成立する見込みだ。現在販売されている一般的なWi-Fi 6製品はいわゆる“ドラフト仕様”に基づくが、Wi-Fi Allianceによると802.11axは概ね現在の仕様で策定されるとのこと。もし変更があっても、ファームウェアのアップデートなどで対応されるだろう。

巨大な8本アンテナが映えるゲーミングルーター「AX11000」

Wi-Fi 6をサポートし、TP-Link製品として史上最高速の無線LANルーターが「Archer AX11000」だ。本体デザインは既存製品の「Archer C5400X」を踏襲しており、288×288ミリとかなり大型で、周囲を取り囲むようにそびえ立つ8本のアンテナが印象的だ。

  • Archer AX11000。向かって左右に3つずつ、上下に1つずつゴツいアンテナが取り付けられている

無線LANルーターとしては、5GHz帯×2、2.4GHz帯×1の3バンド対応製品となり、複数のチャネルを束ねて160MHzのチャネル幅を確保する「HT160」をサポートすることで、転送速度はそれぞれ4,804Mbps(5GHz帯)、1,148Mbps(2.4GHz帯)という、超高速スループットを実現する。また、ルーターの心臓部に1.8GHzのクアッドコアCPUを採用することで、膨大なスループットも高速で処理。同時に複数の端末が通信している状況でも、通信の遅延(ラグ)を最大で約75%低減できるとしている。

ゲーミング市場向け製品であり、Wi-Fi 6の高速性と低遅延を生かして、無線ながら有線LAN並のプレイ感覚が実現できることをアピール。ゲーム向きの機能としては、2つある5GHz帯の1つをゲーム専用とすることで、動画配信などほかのサービスの通信による干渉を回避するほか、ゲームの遅延状況やプレイ時間、システム使用率などを把握できる「ゲーム統計画面」を搭載している。

このほか、2.5Gbps対応のWANポートや、2つ同時に接続するとスループットが2Gbpsになる「リンクアグリゲーション」に対応した8つのギガビットイーサネットポート、ストレージ製品などを接続するためのUSB Type AおよびType-Cポート(USB 3.0対応)、ルーターに接続する機器を丸ごとマルウェアから保護するトレンドマイクロの「HomeCare」セキュリティシステムの搭載、スマートフォンアプリ「Tether」による簡単設定、Amazon Alexaスキルへの対応など、同社のフラッグシップ製品にふさわしい機能を満載している。

価格は45,800円(税別)。競合する同クラス(3バンド)のWi-FI 6対応のゲーミングルーターと比較して、約1万円安いとしている。

  • アンテナの根本にボタン類を配置

インテル製チップを搭載した「Archer AX50」

Wi-Fi 6に対応したデュアルバンドルーターが「Archer AX50」だ。既発売製品の「Archer AX6000」の下位に位置し、普及価格帯のミドルレンジ向け製品となる。

  • 「Archer AX50」はアンテナが4本(アップロード×2、ダウンロード×2)。サイズは「AX11000」より一回りほど小さい

インテルが第10世代のCoreプロセッサと同時に発表した「インテルHome Wi-Fi WAV654」チップセットを採用。Home Wi-Fiチップセットは「インテルWi-Fi 6(Gig+)」という独自ブランドに対応しており、4ストリーム(2x2 MIMO)ながら、1024QAMやHT160にも対応しており、5GHz帯で2,402Mbps、2.4GHz帯で574Mbpsのスループットを記録する。また、同時接続数は256台と、IEEE802.11ac製品と比べて最大で4倍の接続台数をサポートし、IoT機器が多数ある環境でも快適な通信を可能とする。

このほか、「HomeCare」セキュリティや「Tether」による簡単設定、Amazon Alexaスキルを使ったネットワーク接続やゲストパスワードの発行といった上位モデルと共通の機能にも対応している。価格は12,000円と、競合する同クラス製品と比べて30%以上安いとしている。

Wi-Fi 6対応のPCIeカード「Archer TX3000E」

  • PCIeカードの「Archer TX3000E」。外部アンテナは2本で2×2 MIMOに対応している

「Archer TX3000E」は、デスクトップPC用のWi-Fi 6対応アダプターだ。PCIe接続(x1)のカードで5GHz帯で2402Mbps、2.4GHz帯で574Mbpsでの通信に対応する。また、Bluetooth 4.2と比べて通信速度で2倍、通信距離で4倍強化されたBluetooth 5.0も搭載しており、周辺機器などとの接続も快適に行える。

Wi-Fi 6をフルに活用するにはルーターだけでなく端末側も同規格をサポートしている必要があるが、PCやスマートフォン側はまだ対応製品が少ない。Wi-Fi 6対応製品は相互に接続の互換性があるが、同一メーカー製同士であれば、より確実に接続できるとともに、通信速度などもスペックを最大限に引き出せるため、特にゲーミングPCなどで利用するのであれば、こうしたカードで拡張したほうがいいだろう。

価格は5,800円。同クラスのカードと比べ、約半額に抑えられている。

プロゲームチーム「DetnatiN Gaming」のお墨付き

発表会にはTP-Linkがスポンサードしているeスポーツのプロチーム「DetnatiN Gaming」のSUMOMOXqX氏とMelofovia氏が登場し、Archer AX11000を使って実際にゲームをプレイした感想を披露した。

両氏によれば、ファイルのダウンロード速度もさることながら、ネットワークの反応速度を表すPing値がIEEE802.11acと比べて10msほど速く安定していることに触れ、リアルタイムでの反応を重視するFPSではこの差が非常に大きいこと、また普段は有線接続でプレイしているが、無線であることを忘れるほど快適な環境であることをアピールした。

  • 日本でも有数の強豪eスポーツチームのDetnatioN GamingよりPUBGチームの2人が登壇。無線でも快適なゲーム環境を実現できることをアピールしていた

TP-Linkは無線LAN製品で世界シェアNo.1を誇るメーカーであり、日本市場でも急速に存在感を強めている。今回発表された3製品はいずれもコストパフォーマンスが高く、市場に強いインパクトを与えることになりそうだ。