SAPを利用する企業は、2025年に迫るSAPの保守サポート終了問題への対応が迫られている。SAPはどう支援するのか? SAPのエグゼクティブボードメンバーでCTOを務めるJuergen Mueller氏とS/4HANAトップのJan Gilg氏が、S/4HANA移行についての現状とともに語った。

  • SAPのJuergen Mueller氏(左)とJan Gilg氏(右)

    SAPのJuergen Mueller氏(左)とJan Gilg氏(右)

S/4HANAとSAP Cloud Platformでカスタマイズ問題を解消できる

S/4HANAが発表されたのは2015年だ。だが、企業の基幹システムとなるERPのマイグレーションは簡単なことではなく、大型の投資も必要になる。移行は簡単ではないが、SAPはECC 6.0の保守期限を2025年としており、少しずつ迫っている。

SAPが10月10日までSAPがスペイン・バルセロナで開催した技術イベントの「SAP TechEd Barcelona 2019」で、Gilg氏は移行の経過について、「1万1500社がS/4HANAに移行した。多くはECCからの移行だ」と胸を張る。Fortune2000企業の61%が、ドイツに限定するとDAX(ドイツ株価指数)企業の80%以上がS/4HANAに移行しているという。

S/4HANA移行により得られるメリットとしてGilg氏は、「技術的メリットとビジネス上のメリット」を挙げる。「S/4HANAはモダンなモジュラークラウドスイートだ。サービスとして、あるいはオンプレミスとして実装できる」とGilg氏

技術的メリットは技術のリフレッシュ

技術メリットについては、「ECCは2005年に最後のリリースがされており、ECC顧客は古いシステム上で動かしている。S/4HANA移行により技術のリフレッシュができる」(Gilg氏)。

また、S/4HANAのアーキテクチャ上の特徴により、ITランドスケープの統合と簡素化もできるという。「標準を使うことができ、カスタム拡張の削減につながる」とも述べた。

ビジネス上のメリットについては、デジタル変革を挙げた。

「デジタル技術があらゆる産業を変えている。SAPの顧客は現在のトレンドに迅速に対応しなければならない。そのためには、プロセスを自動化された方法で動かすソリューションが必要だ。これによりコストを抑えられ、優れた運用が可能になる。アーリーアダプターのメリットが得られる」(Gilg氏)

これは世界中、業界、規模の大小を問わず、「顧客に共通している課題」とした。

これらのメリットを実現するのは、高速なインメモリデータベースSAP HANAという土台だ。S/4HANAはSAP HANA向けに設計されており、「データを動かすことなくリアルタイムアナリティクスとプランニングが可能だ。あらゆるワークロードがメリットを受けられる」とGilg氏。

加えて、「SAP Leonardo」の機械学習、IoT、ブロックチェーンといったイノベーション技術を利用することで、プロセスの自動化をさらに加速できる。さらには、2018年に買収した体験データのQualtrics技術により、オペレーションデータ(Oデータ)と体験データ(Xデータ)を組み合わせて、これまで得られないレベルの洞察を得られるという。

S/4HANAでは、アプリケーション開発/PaaSの「SAP Cloud Platform」も重要な役割を果たす。SAP Cloud Platformは拡張のためのプラットフォームで、「顧客やパートナーは自分たちのコードを書くことができ、新しい機能を構築できる」と位置づけを説明する。

もう一つの使い方として、Gilg氏は「プロセス統合のプラットフォーム」も挙げた。「顧客はSAPのERPにたくさんのカスタマイズをしてきたが、これがアップグレードの邪魔になっていた。アップグレードできないために、SAPの最新の技術を活用するチャンスを失っていた」とし、SAP Cloud Platformでこの問題を解決できるとした。