タムロンが昨年5月に発売したソニーEマウント用の標準ズームレンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD」は、ズームレンジを抑えつつ全域でF2.8の明るさをキープ。このクラスでは画期的な小型軽量設計と手ごろな価格に仕上げたことが評価され、長らく品薄状態が続くヒット商品となりました。そのコンセプトを受け継ぐ兄弟レンズというべき広角ズームレンズ「17-28mm F/2.8 Di III RXD」が登場しました。
28mmまでの望遠側に納得できるかどうか
フルサイズ対応のEマウント広角ズームレンズは、現在ソニーから3種類の製品が登場しています。そこにタムロンが投入した17-28mmは、ズーム比こそ低いものの、明るくて安くてよく写るのが特徴です。
広角側が17mm、望遠側が28mmというのは、数字だけを見るとどちらも物足りなさを感じます(ソニー純正レンズは16-35mmが2種類と、12-24mm)。しかし、広角域は1mmでも大きな画角変化がありますし、一般的には18~24mmあたりの出番が多いと思います。建築写真などを撮影していて「1mmでも広いレンズが欲しい」という人は純正品を選べばよいと思いますが、そうでなければ17mmまであれば十分でしょう。
むしろ、もう少しあれば…と思うのは望遠側でしょうか。28-75mmと組み合わせれば、切れ目なく中望遠までカバーできますが、28mm前後はスナップで多用される焦点域。そこでレンズ交換が求められる点をヨシとするかどうかが、タムロンコンビでそろえるうえでの判断ポイントになるかと思います。
タムロンは、古くからユーザーの利便性を追求する製品を多数投入してきました。レンズのスペックでもっとも目立つ焦点距離をあえて割り切って、明るさと携行性を優先したのは、まさにタムロンならではといえます。まずは、その姿勢を評価したいと思います。
もちろん、タムロン以外の標準ズームレンズを使っていて、24mmまではカバーできるけどちょっと広いレンズが欲しい…という人にも、17-28mmは強くおすすめできると感じます。ソニーのフルサイズミラーレスは、すべてボディ内手ブレ補正機構を内蔵しています。F2.8の明るさ+ボディ内手ブレ補正で、夜間や暗い場所でも安心して使えます。フィルター径も、F2.8の広角ズームとしては驚異的に小さい67mm径。これは、標準ズームの28-75mm F2.8と同じで、PLフィルターやNDフィルター、レンズキャップを共用できるのは大きな利点といえます。
抑えめのコントラストが好印象
最後に、描写の話をしておきましょう。今どきの最新レンズで描写が悪いはずもないんですが、こってり気味のソニー純正レンズに比べると、コントラストはやや低め。ポートレートなど、繊細さが欲しい分野の撮影をしたい人にはうってつけだと思います。レタッチでコントラストを上げることは簡単ですが、反対に下げるのは画質の低下を伴うので、設計思想としても正しいといえます。
今回はα7R IIIで実写しましたが、絞り開放から4240万画素の高画素にしっかりと対応できている印象を受けました。1段絞るとさらに切れ味がアップします。
αの小型軽量ボディのメリットを引き出せる広角ズームとして、α7シリーズのユーザーならば一度試してみる価値があるレンズといえるでしょう。