RPA導入検討で見えた「Excel特化」の需要

ジェイエーアメニティーハウス 賃貸管理部 次長 古谷亨氏

ジェイエーアメニティーハウスは1999年に設立された、賃貸物件の管理・運営や、斡旋・仲介などを中心に「賃貸管理事業」「賃貸仲介事業」「建設事業」を手がける事業者だ。1990年に神奈川県経済連 施設部内に設立された「賃貸情報センター」を前身としており、グループとして県内に27店舗を展開。4000棟、2万戸の物件を管理している。

同社は業務効率化に向けて、RPA活用に目を向けたのが2018年初めのことだった。きっかけはRPAツール「WinActor」のモニターにならないかという打診を受けたことだ。

「賃貸物件に関する情報をサイトで公開するための作業に、毎日2時間ほどかかっていました。ここを自動化できるのではないかと考え、NTT東日本のコンサルタントとWinActorの利用について検討しました。しかし、その時点では主に問題となっているのはExcelのデータ処理であったため、それならばデジピタ!のほうが要件に合っているのではないかと勧められたのが、デジピタ!導入のきっかけです」と語るのは、ジェイエーアメニティーハウス 賃貸管理部 次長の古谷亨氏だ。

ベテランが1日2時間かかる物件情報更新を自動化

ジェイエーアメニティーハウスは約2万戸の物件を管理しており、募集の物件も不定期に発生する。そのため、Webサイトに対し、新規物件の情報を追加することに加え、家賃などに関する条件変更、各種キャンペーンの適用状況、募集店舗の割り振りといった情報をExcel上で管理・加工してアップロードする作業を日々行っていた。

「1つのファイルに対し1200行ほどのデータがあり、キャンペーン情報などをそれぞれ手作業でフラグをつけていました。1日2時間というのは手慣れた人の作業時間であって、他の人がやれば1日かかるでしょう。実際、『この作業は自分ならできない』と言う人もいるほど大変な作業でした」と、古谷氏は振り返る。

朝10時にアップロードしなければいけないという時間的制限が精神的な負担になることに加え、手作業ではどれだけ気をつけてもミスが発生する。また、情報の鮮度を向上させたくても、作業負荷が大きすぎて営業日に1日1回の更新を行うのが精一杯だったという。

ジェイエーアメニティーハウス総務コンプライアンス課 中越義夫氏

「基幹システムにある物件情報を取得すれば完了、という形にできれば簡単なのですが、賃貸料の変更やキャンペーンの適用といった細かな部分は基幹システムに反映させていません。その結果、手作業が増えていたのです」と、総務コンプライアンス部 総務コンプライアンス課の中越義夫氏は負担の大きさを語る。この作業を「デジピタ!」で自動化することで、作業負荷の大幅軽減を狙ったのだ。

マクロを作れるスキルでOK! 1週間で動き始めた自動処理

「デジピタ!」は、操作パターンを記録する方式でデータ加工の自動処理を実現する、ノンプログラミングのクラウドサービスだ。しかし、社内での開発には心理的な抵抗が大きく、初めの一歩を踏み出すには少し時間がかかったという。

「社内でプログラミング経験のある女性スタッフに作業をお願いしたのですが、実際触ってもらうまでに2~3週間はかかりました。しかし、スタートしてからは1週間程度で稼働するワークフローができました。マクロを作るスキルがある人なら、この作業をこなせるのではないでしょうか」と古谷氏。

ジェイエーアメニティーハウス総務コンプライアンス課 吉田陵介氏

「手をつけてみれば簡単だった」という印象は、次の担当者にも引き継がれている。「引き継いで1週間ほどで何をどう操作しているのかは理解できましたし、2週間も経てば、項目追加などの細かな修正ができるようになりました。社内システムのアップグレードで変更が出た時も対応できています」と語るのは、現在の開発担当者であるジェイエーアメニティーハウス 総務コンプライアンス部 総務コンプライアンス課の吉田陵介氏だ。

「デジピタ!」が順調に動き始めて、効果はすぐに出た。1日2時間かかっていた作業のうち、人が手を入れなければならない作業が5分程度にまで短縮されたのだ。

「シナリオの監視などはしていましたし、ファイルオープンやアップロード作業自体は人がやっていたので完全に任せきりではありませんが、90%以上の作業がなくなったという印象でした。その結果、情報更新を1日1回から2回へ増やすことができ、公開情報の鮮度も向上しています」と古谷氏は語る。

  • 「デジピタ!」の操作画面