iPhoneの値下げや手頃な価格帯の製品の充実、そしてユーザーの声を聞く強化の狙いが何かというと、アクティブインストール台数の安定した伸びだ。
アクティブ台数というのは実際に使用されている台数だ。過去3四半期にわたってiPhoneの売上高は前年同期を下回っている。その影響で今年初めにApple全体も一度は不調に陥ったものの、サービスとウェアラブルの伸びによって成長ペースを取り戻しつつある。そこで重視されるのがアクティブ台数だ。販売台数が減少し始めてからも、iPhoneのアクティブ台数は増加しており、今年の4〜6月期も過去最高を記録していた。また、Apple製品全体のアクティブ台数は順調に伸び続けている。そして、それらのユーザーがサービスやウェアラブルの成長に寄与している。
サービスに関しては、ゲームのサブスクリプション型サービスApple Arcade、オリジナルの映画やTV番組を配信するApple TV+の開始日と料金を発表した。Arcadeは9月19日開始で月額4.99ドル (日本では月額600円、無料トライアル1カ月)、Apple TV+は11月1日開始で月額4.99ドル (日本では月額600円、7日間の無料トライアル)。どちらも予想を下回る料金、しかも9月10日以降にiPhone、iPad、Apple TV、Mac、iPod touchを購入するとApple TV+を1年間無料で楽しめる。とにかく、まず体験してもらってサービスを評価してもらうことを最優先している印象だ。
キーノートでは、Apple TV+で配信する『See ~暗闇の世界~』のトレーラーを初披露した。Seeは、ウィルスで人類の10分の1が死滅し、残された人々も全てが盲目になって、視る記憶を失った世界に、2人の視力を持った子供が誕生して混乱が起こるというストーリー。ネットの反応では、「ハイコンセプト」という指摘が目立つ。ハイコンセプトとは作品の内容や面白さが、数行程度の短い説明で伝わるような作品だ。そんな作品に大金を注ぎ込むのはもったいないと思うかもしれないが、ハイコンセプトの映画の方がヒットしやすいという研究結果もあり、今ハリウッドではハイコンセプトな脚本がもてはやされている。『See』もトレーラーを見ただけで引き込まれる。つまり、観てみたくなる。
そして、観るならApple TVアプリを使うことになるし、複数のApple製品を使っているユーザーがTVアプリを使い始めたら、Apple TV Channelsから他のサブスクリプションサービスを契約したり、他のサービスのアプリも導入したくなる。4〜6月期決算においてCFOのLuca Maestri氏が、無料トライアル期間を用意するApple TV+は長期戦で挑む考えを示したが、Apple TV+の場合、ユーザーがAppleのエコシステムに定着することで他のサービスや他のデバイスも利用するようになり、Apple TV+の料金以上の大きなリターンを期待できる。それがAppleのサービスの強みであり、それはArcadeも同様だ。