冒頭に述べたように、今年はiPhone Xの登場から3年目。次の刷新が間近な成熟期にある。Apple Watchも今年はSoCの向上が得られない年だった。こうした年の強化は浅く広く、細部に磨きをかけるような強化になりがちだが、Appleはポイントを絞り込んだ強化を行った。何にフォーカスしたかというと「ユーザーの声」だ。

今回のキーノートは「カスタマーが全ての中心」で始り、「顧客を心に止めてデザインした」というような表現が要所で使われた。具体的には、Apple Watchではウォッチフェースの常時点灯、iPhoneはカメラの強化とバッテリー動作時間の向上である。

今ではユーザーがすっかりApple Watchの動作になれてしまって、最近は要望として声を上げる人が少なくなったが、Apple Watchが登場してからしばらく「ウォッチフェースの常時表示」は多くのユーザーが「時計なら不可欠」と強く求めていた機能だった。カメラとバッテリー動作時間もユーザーがiPhoneに求める強化点のトップ2である。Gurman氏のように「もの足りない」という人もいるが、スマートフォンを使う上でカメラとバッテリー動作時間の向上を歓迎しないユーザーはいない。

インパクトのある新モデルが期待できない年に、そうしたユーザーが求めていたポイントの強化をハイレベルで提供してきた。人々に機種アップグレードを考えさせる巧みな強化と言いたくなる。

  • 既存のOLEDを用いた常時点灯では、電力を消費しない状態の時にウォッチフェイスが乏しいデザインになるものが多いが、Apple Watchの表示は美しい

  • Googleが提供して人気機能になっていたナイトモードを取り入れたのも、ユーザーの声を聞いた強化の1つといえる。自然な撮影、自然な画作りにこだわるAppleらしい実装になっている

  • スニークピークとして紹介された「Deep Fusion」、複数の画像を記録し、ピクセルの関係をニューラルエンジンをつかつて解析してディテール豊かな写真に仕上げる

  • 昨年登場したiPhoneの中でiPhone XSはバッテリーの持ちに不満を訴えるユーザーが多かったが、iPhone 11 ProはXSより4時間もバッテリー駆動時間が長い