イオンリテールが提供するMVNOサービス「イオンモバイル」は、9月6日から、60歳以上を対象に、通話し放題オプションと購入後のサポートをお得なセットにした「やさしいスマホサービス」の提供を開始する。また同時に、オリジナル機能を搭載した「AQUOS sense SH-M08 やさしいスマホ」を発売する。
高まるシニア向けスマホ需要にサービスで対応
発表会では、イオンモバイル事業部長の井関定直氏が登壇。今年2月に、イオンモバイルとしては初めて25歳以下を対象に実施したターゲットセグメント型サービス「3年学割」が大好評だったことを受け、ターゲットセグメント型サービスの第2弾として、60歳以上の、いわゆるシニア層をターゲットに実施するのが「やさしいスマホサービス」だ。
井関氏によると、60歳以上のスマートフォン普及率は61.5%(MMD研究所調べ)と、60歳未満と比べると低い水準ではあるが、逆に言えばガラケーが生産終了したり、3Gが停波することによって、潜在的にスマホに乗り換えるユーザーがまだまだ40%近くも存在するということになる。また、シニア層は解約率も低く、サービスの安定化に必要な長期利用ユーザーの獲得という点からも重視したい考えだ
そこでシニア層をターゲットとして、従来のイオンモバイルのサービスに、シニア向けに安心感や使いやすさを加えた新サービスとして開発されたのが「やさしいスマホサービス」というわけだ。
「やさしいスマホサービス」は、60歳以上の利用者が対象となるサービスで、通常の「音声プラン」に「やさしい10分かけ放題」(月額850円、税抜き)と、「イオンスマホ電話サポート」(月額300円)を加えて、パケットデータ量500MBの場合、1カ月1,980円(税抜き)で提供するものだ。それぞれのサービスを個別に申し込んだときよりも300円お得になる。音声通話プランはユーザーが自由に選択できるので、より大きなパケット量のプランを選んだ場合、音声プランの差額を加えるだけでいい。
さらに、シニア層が使いやすいように調節されたシャープの「AQUOS sense2 SH-M08」を「やさしいスマホ」(3万2,800円)として販売する。これはAQUOS sense2をベースに、ホーム画面のインターフェースを「AQUOSかんたんホーム」に設定し、標準通話アプリでプレフィクスを付けなくても、そのまま10分通話し放題になる「やさしい10分かけ放題」が適用されるよう設定されているもの。このほか、イオンモバイル専用サポートアプリや遠隔サポートアプリもプリインストールされている。
なお、「やさしいスマホサービス」開始に合わせ、9月6日から9月16日まで、イオンモバイル加入と同時に「やさしいスマホ」を購入した人に5,000WAONポイント、それ以外の端末を購入した人は9月6日から9月30日まで3,000WAONポイントがプレゼントされる「スマホ代節約で増税分カバー!!」キャンペーンが実施される。イオンモバイルは通話プランと端末料金が完全独立になっているため、特にセット販売が設定されているわけではないが、消費税増税前というタイミングもあって、スマホデビューにはちょうどいいきっかけになりそうだ。
シニア向け市場はまだまだ開拓の余地あり
イオンモバイルは「やさしいスマホサービス」を開始するにあたり、シニア向け雑誌でNo.1の販売を誇る「ハルメク」とのコラボレーションを実施している。「ハルメク」ではスマートフォンに関する記事の人気が高いとのことで、「やさしいスマホサービス」は、まさに同誌の読者層に訴求するサービスと言える。
今回、「やさしいスマホサービス」の発表会場となったイオン葛西店では、ハルメクとイオンモバイルの共同で、地元の方を対象としたシニア向けのスマートフォン勉強会も開催されていた。
勉強会の内容は、Wi-Fiの設定や各種アプリの紹介など、スマートフォンに慣れ親しんでいるユーザーには当たり前の内容が多かったが、不慣れな機械に加えて、加齢による身体的な衰え(視力など)もあって、苦心している方が多かったように感じられた。とはいえ、かなりのご年配の方も、スマートフォンを使いこなそうと熱心に質問している様子が大変印象的だった。
MNOには「らくらくホン」のようにシニア向けで物理的なフィードバックのある機種もあるが、MVNOが販売する端末には、そうした機種がほとんどない。そんな中、シニアをターゲットとした料金プランに加えて専用機種も用意してきたイオンモバイルは、本気でこの市場を獲得しようとしているのがわかる。実店舗数が多く、対面サポートも可能な同社ならではの強みを生かした戦略で、他社には容易に追随できないだろう。MNOがシニア向け展開を強化しない限り、イオンモバイルがこの市場を広く獲得していくポテンシャルを秘めていそうだ。