iPhoneで撮影した写真に限定した世界的なフォトコンテスト「iPhone Photography Awards 2019」(IPPAWARDS)の選考結果が発表され、日本人フォトグラファーのYoichi SatoさんがAnimal部門で見事に入選を果たしました。昨年、Travel部門で受賞したAnna Aikoさんに続き、日本人の入選は2年連続の快挙となります。
著名なiPhone写真家の作品に刺激を受け、もっぱらiPhoneでスナップ撮影を楽しんでいるというYoichi Satoさん。iPhoneでの撮影にこだわる理由などをうかがいました。
iPhone Xのポートレートモードで撮影
――今回受賞した作品、浮かび上がるようなフクロウの美しさと、澄んだまなざしが印象的だと感じました。
Yoichi Satoさん:ありがとうございます。iPhone Xが発売されたばかりのころ、千葉を旅している時に立ち寄った道の駅で撮影したフクロウです。たまたまイベントをやっていて何羽かのフクロウがいたのですが、このフクロウだけ達観した感じでまっすぐ前を向いていたんですね。そのたたずまいがとても印象的だったので、すかさずiPhone Xで撮影しました。
――撮影したのは夜だったのですか?
Yoichi Satoさん:いえ、昼です。iPhone Xのポートレートモードの「ステージ照明」で撮影しました。当時はiPhone Xを手にしたばかりで、新しい機能をいろいろ試していたタイミングだったのですが、狙った通りに仕上がりました。Lightroomなどのソフトウエアは一切使っていません。
――もともと黒い背景ではなかったんですね!
Yoichi Satoさん:背景は結構ゴチャゴチャしていたのですが、巧みに切り取ってくれて驚きました。
三井氏の写真展に刺激を受け、iPhoneで作品撮りを始める
――写真は昔から撮られていたのですか?
Yoichi Satoさん:高校生の時に「写ルンです」(レンズ付きフィルム)が流行っていて、私もセピアやモノクロ、パノラマなどの写ルンですで友だちを撮っていました。本格的に撮影をやり始めたのは、デジカメがブームになってからですね。だいたい20歳ぐらいの時だったと思います。
――最初に買ったiPhoneは何だったのですか。
Yoichi Satoさん:2010年のiPhone 4ですね。iPhone 4を買うちょっと前、iPhonegrapherとして有名な三井公一さんの写真展「iの記憶」に行ったところ、「iPhoneでこれほどの写真が撮れるのか!」と衝撃を受けました。iPhoneはカメラなんだと実感し、iPhoneで作品を撮ってみようと思い立ちました。
――IPPAWARDSには以前から応募されていたのですか?
Yoichi Satoさん:過去に何回か応募して、佳作はいただいたことがあります。大きな賞を手にすることになったのは今回が初めてです。IPPAWARDSは自分が目指していたアワードなので、受賞できて本当にうれしく感じます。
――それ以外の写真コンテストへの応募は?
Yoichi Satoさん:かつて、マンフロットが主催したiPhone写真コンテスト「マンフロットiPhoneographyコンテスト」でグランプリを獲得したことがあります。審査委員長は三井さんだったのですが、「ボクは1票しか持っていないから」と特別扱いはされなかったと思います(笑)。
機動性のよさとシンプルな操作がiPhoneの魅力
――撮影にiPhoneを使うメリットは何だと感じていますか?
Yoichi Satoさん:やはり機動性がよいことと、操作がシンプルなことに尽きますね。一瞬のストーリーを逃さず撮れるのは、iPhoneならではだと思います。Androidもいくつか試しましたが、もっさりとした動作になじめず、結局持ち歩くことはありませんでした。カメラとして見ると、やはり手になじんだiPhoneのほうが信頼できます。
――iPhoneで撮影するようになって変わったことはありますか?
Yoichi Satoさん:被写体にグッと寄った構図やローアングルなど、機動性の高い撮影が積極的にできるようになりました。人を撮る場合も、大きなカメラを構えるのと違って相手を緊張させることなく、自然なスナップができると感じます。何より“写真を撮る”という行為が毎日できるようになったのは、私にとって大きな変化だといえますね。
――撮影や編集のアプリ、撮影アクセサリーは何をお使いですか?
Yoichi Satoさん:撮影は標準のカメラアプリを使っています。編集も、カメラロールの編集機能である程度整えてから、LightroomやSnapseedで細かくレタッチします。カメラロールの編集機能はシンプルだからこそパパッと扱えるのが気に入っていて、光をどう見せたいかを考えながら明暗を整えることが多いですね。特に、ブリリアンスは使えるなと思っています。
アクセサリーでよく使っているのが、マンフロットのミニ三脚「Pixi」ですね。タイムラプスなどの撮影だけでなく、動画撮影時はたたんだ脚を持って撮るのに使います。Pixiを持っていないときは、RAKUNIのiPhoneケースを自立させて撮ることもあります。
――iPhoneのカメラ機能に対する要望などはありますか?
Yoichi Satoさん:マナーモードに設定していたら完全に無音でシャッターが切れるようにしてほしいですね。静かなレストランでバシャッと大きな音が出てしまうのは、やはりよろしくないと思いますので…。
あとは、シャッターボタンを押しっぱなしにした場合の挙動でしょうか。以前は、シャッターを押しっぱなしにした場合、指がボタンから離れたタイミングでシャッターが切れたんです。指を画面から離さなくても、横にスライドさせれば撮れたわけです。画面をタッチして撮るよりもブレにくいと感じますので、押しっぱなしにした際の挙動をユーザーが選べるようにしてくれるとありがたいですね。
――今後の抱負について教えてください。
Yoichi Satoさん:今回、念願だったIPPAWARDSを受賞できたことが本当にうれしく思います。ただ、まだ上位のアワードがありますので、それを目指すべく今後も写真を撮っていきます。iPhoneは旅との相性がとてもよいので、いろいろなところに足を運んでスナップを続けていきたいですね。
――ありがとうございました。