Dynabook株式会社は7月9日、プライベートイベント「dynabook Day 2019」を開催。そこで新たなサービス事業戦略を発表しました。「コンピューティングとサービスを通じて世界を変える」をテーマに、PCとサービスの両軸で事業を拡大していく考えです。東芝グループからシャープグループとなった同社、業績の復調傾向が続いており、2021年度中の株式上場も視野に入れています。

  • Dynabookの新しいサービスは、日本マイクロソフトとの連携も。写真はDynabook 代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏(左)、日本マイクロソフトの梅田成二氏(右)

Dynabookのロードマップ

2019年1月1日に社名をDynabook株式会社にあらため(旧:東芝クライアントソリューション株式会社)、新たな出発を果たしたばかりのDynabook。今後のロードマップについて、Dynabook 代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏は、「先進的でスマートなユーザー価値を具現化するブランドとして、dynabookをこれからも大切に育ててまいります」と語ります。覚道氏が、事業拡大の原動力になる施策として掲げたのは「dynabook as a Computing」と「dynabook as a Service」です。

dynabook as a Computingでは、人に寄り添う、社会に貢献する真のコンピューティングを目指した製品を提供していきます。多様化した昨今のIT環境に、タッチ対応、2in1モバイル、LTE対応モデルといった多彩なハードウェアを投入していく方針です。

覚道氏は、dynabookシリーズの原点が1985年に発表した世界初のラップトップPC「T1100」にあり、また1989年に現在のクラムシェル型PCの原点ともいえるノートPC「DynaBook J-3100 SS001」を発表したことにも触れ、「ノートPCのパイオニアとしての矜持を胸に、今後もお客さまに喜んでいただけるような、当社ならではの商品を提供してまいります」とします。

  • dynabook Dayの会場に展示されていた、世界初のラップトップPC「T1100」(1985年製)

  • こちらは世界初のノートPC「DynaBook J-3100 SS001」(1989年6月発売)。dynabookは、2019年6月で30周年を迎えました

次にdynabook as a Serviceとして、5つの事業拡大施策を打ち出しました。

1つめとして、国内展開をサービス・デバイス・プラットフォームの3つに体系化すると説明。ユーザーのニーズにきめ細かく対応して、ワンストップでサービスを提供していきたい考えです。

  • サービス、デバイス、プラットフォームの3つに体系化

2つめとして、事業領域の拡大を図り、新しい顧客の開拓を進めていきます。さっそく、7月2日には現場向け「作業支援ソリューション」を発表しました。Windows 10が動くモバイル端末「dynaEdge DE100」と、スマートグラス型のインテリジェントビューア「AR100」を中心に据え、工場、メンテナンス、流通、監視・警備、交通、インフラにいたるまで、業種・業態を超えた事業を展開していきます。サービスの提供方法にもバリエーションを持たせ、サブスクリプションメニューを2019年度中に展開予定としています。

  • 現場向け「作業支援ソリューション」では、dynaEdge DE100とAR100を活用して様々な領域に事業を拡大

3つめは、シャープグループとしての連携。5Gや8Kの時代を迎えるにあたり、新しいデバイスや関連サービスを創出し、グループのエコシステムを確立させたい考えです。例えば8K映像を編集できるPCを市場に提供する、5G通信に対応したモバイルを開発する、曲がる液晶を搭載した製品の投入などを想定しているようです。

4つめは、社外企業との連携。クラウドサービスでは、日本マイクロソフトと連携して新サービス「Enterprise Mobility + Security導入支援サービス」を提供していきます(詳細は後述)。

  • マイクロソフトと連携した「Enterprise Mobility + Security導入支援サービス」

5つめとして、国内サービスを発展させて海外にも展開していく方針です。

  • dynabook as a Serviceとしての事業拡大戦略は5つ

覚道氏は「コンピューティングとサービス、両輪を強化して事業を拡大していきます。2021年度中に国内株式市場への上場を目指します」と説明しました。

PCの買い替え需要にある特徴が

続いて、日本マイクロソフト 執行役員の梅田成二氏が登壇しました。冒頭、「この30年間、マイクロソフトとDynabookはPCの開発や営業マーケティングの開拓に関して、緊密に連携して努力を重ねてきました」と挨拶。30周年を迎えたdynabookブランドを讃えます。

  • 日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー 営業統括本部長の梅田成二氏は「この先も、Dynabookと共に世の中を良くしていきます」

国内のPC市場は現在、PCの出荷が好調とのこと。特に法人市場では、中堅の企業を中心に伸びており、梅田氏は「前年比で50~60%の成長が1月以降から続いています」と紹介します。理由として大きいのは、Windows 7の延長サポート終了日が2020年1月14日に迫っており、買い替えのサイクルが来ていること。「これから消費増税の10月に向けて最初のピークを迎え、その後は2010年1月に向けて強い波が来ると予想しています」(梅田氏)。

  • Windows 7延長サポート終了に伴い、Windows 10マシンへの買い替えはこれから本番を迎えそう

4年前にも、Windows XPのサポート終了で同じような需要の波を経験したと梅田氏。しかし今回は、ユーザーのマインドに大きな違いがあるとします。なぜなら、「ハードウェアの更新だけでなく、働き方改革に適した、新しいプラットフォームの導入機会にしようと考えている経営者が増えているからです」と梅田氏。

  • 働き方改革との兼ね合いが、消費者のマインドに影響を与えた模様

MM総研の調査では(専任のIT部門がない)中小企業の経営者の30%近くが、ビジネスサービスと連携できるPCの導入を検討しているとのこと。ここで梅田氏は「例えば2018年、大型台風の影響で交通機関が乱れることが分かっていながら、満員電車で会社まで出勤しなければならない会社員が多かった。それは、会社へ行ってPCを使う必要があったからです」と。裏を返せば、会社のPCにリモートでセキュアにアクセスできる術さえあれば(現在なら比較的容易に実現可能)、自宅からリモートワークできたとの考えです。これには、相槌を打つ読者諸氏も多いのではないでしょうか。

  • 日本マイクロソフトとDynabookは、モダンデバイス、クラウドサービス、ビジネスモデルの3つの柱でビジネスシーンのモダン化を推進

「この機会に新しいIT環境を導入することで、社内に、働き方改革に適したプラットフォームを広げられるのではないか、と考える法人のお客さまが増えています」(梅田氏)。

クラウド環境を用意

Dynabook 執行役員の柏田真吾氏は、Windows 7延長サポート終了に触れ、「OSのサポート終了に左右されない環境を構築するためには、クラウドが重要なキーワードになります。いつでもどこでも自由に働ける環境を提供するという観点でも、クラウドは避けて通れない選択肢のひとつです」としてクラウドサービスの有用性を強調します。

  • Dynabook 執行役員 国内サービス事業本部長 建設業担当 柏田真吾氏

Dynabookの顧客調査では、ほぼ7割が何らかの形でWindows 10への以降が終わっているものの、Windows 10の運用に関しては4割が「導入後の運用管理に不安」「年に2回の大きなアップデートの管理に不安」といった不安を抱えているそうです。「クライアントPCの入れ替えは終わっても、環境を継続していけるかに不安が残っています」と柏田氏。

そこで、Windows 10更新プログラム配信時のネットワーク負荷を減らし、業務システムへの影響も避けられるDynabookの新サービスの紹介につなげました。先述した「Enterprise Mobility + Security導入支援サービス」です。2019年8月1日のサービス開始を予定しています。

内容は、「Azure Active Directory Premium」と「Microsoft Intune」を利用して、Windows 10の管理環境を構築するというもの。柏田氏は「このサービスをご利用いただければ、更新モジュールの配信もスムーズに行えます」と説明しました。このほか「Enterprise Mobility + Security ヘルプデスクサービス」と「Enterprise Mobility + Security 運用代行サービス」も用意。「サポートサービスで運用の不安を取り除き、さらにはリモートでメンテナンスを行うことでお客さまのビジネスをサポートしていきたい」(柏田氏)と話していました。

  • Enterprise Mobility + Security導入支援サービスの概要

業績改善の要因は?

質疑応答には、Dynabookの覚道清文氏と柏田真吾氏が対応しました。

シャープグループとなって8か月が経ち、業績の改善が進んでいるが、どのようなことをやってきたのかという質問に覚道氏は、「おかげさまで黒字基調に戻ることができました。ひとつに、シャープ流のコスト管理があります。鴻海も一緒になった調達活動による、部材のコストダウン。最初の数か月の収益に大きく貢献したと認識しています」。

「それと並行して、販売面ではシャープとの協業も進めています。特にBtoBのお客さま向けには、文教といったところも含めて、一緒に提案したりする。シャープの昔からのお客さまが、dynabook PCを導入してくださる事例もあります」(覚道氏)。

この回復基調を長い目で見て安定化させていくため、ハードウェア商品に依存するのではなく、サービス商品に注力する必要があると覚道氏。そのひとつが、今日の発表にもつながっています。

「国内の法人向け事業では売上ベースの40%が、PC本体以外の販売によるものです。オプションも含めた販売や、有償の修理サービス、新しいサービスの取り組みです。これを今後、海外にも広げていきたい。全体として、売上ベースで2割ほどをサービスで稼げれば」(覚道氏)。

  • Dynabook 代表取締役社長兼CEO 覚道清文氏

貿易問題の影響は?

米中や日韓の貿易問題は影響がありそうか、と聞かれると、「米中の貿易に関しては、今後、まだ何が起こるか分からないという状況です。アメリカに向けた出荷が影響を受けます。そこで、鴻海のある台湾との連携を密にすることも含めて対応していければ。鴻海やシャープと一緒になったことで、引き出しが増えました。今回の貿易問題のようなことがあったときに、チャンスとして生かしていきたい」(覚道氏)と話しました。

日韓の問題については「輸出手続きが厳格化されました。実際のところ、影響は分かりません。韓国メーカーが、どの程度、依存度があるか単純には言えないところ。PCによっても違うようですし、いま見極めているところです」と回答するにとどまりました。

8Kや5Gの分野では何を開発する?

8Kや5Gにおける新サービスの開発について、どのような内容が検討されているのか聞かれると覚道氏は「8Kディスプレイにおいては、インプットとアウトプットの間の編集作業、映像の編集を容易にできるソリューションなどを検討中です。5Gについては、折り曲がりの液晶を搭載したPCなど、可搬性を高めたものに5Gを組み合わせて、どこでもすばやく5G環境の下でサービスを実現できるソリューションを考えています」と展望を述べました。

上場までの道筋は?

2021年度中の株式上場に向けた道筋について問われると「まずは年度単位で黒字を定着させた後に、上場の申請をしていきたい。具体的なスケジュールがあるわけではないものの、売上規模は今年度2,400億円、20年度は3,000億円強に設定しており、今これに向けて順調に推移しています。上場のときは、安定した収益性に加えて、投資家の皆さんの評価にも耐える事業形態になっていることが重要。サブスクリプション、課金型のビジネスサービスなどを導入することで、お客さまと長いお付き合いができるとともに、収益を安定させていきたい」(覚道氏)としました。