ドローン「Mavic Pro」やジンバル付き動画カメラ「Osmo Pocket」、アクションカメラ「Osmo Action」などでおなじみのDJIが、教育用ロボット「RoboMaster S1」を発表しました。タブレットやパソコンからのプログラミングで制御が可能な走行型ロボットですが、ゲーム性を取り入れることで、オトナもワクワクする1台に仕上がっていました。

  • DJIが発表した教育用ロボット「RoboMaster S1」。これまでにない楽しみをもたらしてくれる佳作です

先進的で高度なメカを満載

RoboMaster S1は、一見すると大きめの4輪ラジコンのように見えますが、単純に走行を楽しむラジコンとはまったく異なります。

  • 4輪を備えていますが、単純なラジコンではありません。サイズはやや大きく、スペースに余裕のある広い部屋でないと思う存分走らせるのは難しそう

まず驚かされるのが、走行性能の高さ。4つの車輪は「メカナムホイール」と呼ばれる特殊な構造になっていて、45度の角度で取り付けられたいくつもの樽の動きを細かく制御することで、車体の向きを変えずに自由自在に動き回れます。なめらかで正確、かつスピーディーな動きは、見ていて次世代感が伝わります。

  • 特徴的なメカナムホイールにより、全方向にスムーズな移動が可能になっています。4輪駆動のうえサスペンション機能を備えており、荒れた路面でも問題なく走行できます

ボディの上部中央には、ゲル弾と赤外線ビームを発射するブラスター(砲台)や、AIを利用した画像認識ができるカメラが載っています。カメラがとらえた映像をスマホやタブレットで見ながら、ライバルのRoboMaster S1に弾を当てていくわけです。RoboMaster S1のボディの前後左右にはセンサーが6個備わっており、ゲル弾や赤外線ビームが当たったことが認識できます。センサー部にはLEDが内蔵され、状況によって自動で点滅や点灯をする様子は、まるで意識を持ったロボットのように思えます。

  • FPVカメラとブラスターがメカニカルジンバルに載せられています。ブラスターはゲル弾と赤外線ビームの発射が可能

  • FPVカメラ。イメージセンサーは1/4インチとなります。静止画で約370万画素、動画では最大フルHDの撮影ができます

  • FPVカメラの上部にあるのがCPUユニット。バッテリーは2400mAhと大容量で、フル充電からの持ちは約35分とのこと

  • ゲル弾は、もともと直径1mm程度の小さな硬い粒ですが、水に浸すとタピオカのように膨らむので、この状態で使用します。膨らむのには4時間ほどかかるそう

ゲル弾を発射したところ。かなり本格的です

教育用という位置づけのロボットにブラスターなんて…と思うかもしれませんが、ゲーム性を持たせることで子どもの興味を引くだけでなく、複雑な動きを制御するためには細かなプログラミングをする必要があり、スキルが増すメリットがあるように思えます。

  • 対戦中のRoboMaster S1の様子。ブラスターから赤外線ビームを発射し、相手の検知センサーに当てていく内容です。LEDで光る楕円部が検知センサーで、ジンバルの主軸部分も含めて全部で6箇所に搭載されています

対戦中のRoboMaster S1の様子。かなりキビキビと動くことが分かります

ちなみに、RoboMaster S1は完成品として提供されず、すべてのパーツがバラバラになった状態で送られてきます。自分で組み立てる必要があるのですが、そのおかげで構造もしっかりと理解できるのがメリットだと感じました。

  • 購入時は、このようにパーツがバラバラの状態で届きます。家具は組み立て式が一般的ですが、このようなIT機器では珍しいといえます

プログラミングは高度なものにも対応

RoboMaster S1を操る方法はいくつか用意されていて、もっとも簡単なのがスマホやタブレットで専用アプリ「Robo Master」を利用する方法です。ラインに沿って自動制御で動いたり、特定の人を識別して追尾するなど、比較的簡単なプログラムでAI(人工知能)を用いた制御が可能なので、まずはここからスタートという感じになります。

より高度なプログラミングにも対応しており、学校教育の現場でもっとも使われているブロック式の「Scratch 3.0」のほか、本格的な「Python」にも対応し、さまざまな動きや制御が可能になります。RoboMaster S1が教育用ロボットといわれるゆえんは、ここにあるかと思われます。

  • プログラミング言語は、教育の現場で標準的に使われている「Scratch」が利用できます。右上に、FPVカメラの映像が表示されています

価格は高めだが、今後も楽しみな1台

DJIは、2013年から「RoboMaster」と呼ばれるロボット対戦競技大会を中国で主催しており、日本からも高校生や高専学生などが多数参加しています。RoboMaster S1は、この大会でDJIが提案するモデルロボットの流れを受け継ぐものに仕上がっています。

  • ロボット対戦競技大会「RoboMaster」で用いられているDJIのモデルロボット「歩兵」。これをベースに、RoboMaster S1が開発されたといいます

プログラミングが学べるSTEM教育塾を運営するCOMPASSの木川俊哉氏は「小学校高学年以上ならばRoboMaster S1をプログラミングで操れる」と語ります。実売価格は税込み6万4800円と、プログラミング教育用の機器として考えるとかなり高価ですが、組み立てから始まる楽しさや機器としての完成度の高さ、活用の幅の広さなど、高いレベルでまとまっている製品だと感じました。今後の動向も含め、注目しておきたい教育用ロボットといえます。

  • RoboMaster S1は、プログラミングで1人で楽しむのもいいですが、やはり複数の人と対戦するのが醍醐味といえます

著者プロフィール
大浦タケシ

大浦タケシ

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。2018年は、昨年に続き写真展(個展)が開催できず猛省。2019年は少なくとも写真を撮りため、写真展の足がかりをつくりたいと考えています。日本写真家協会(JPS)会員。