台TrendForceは、2019年第2四半期(4~6月期)のファウンドリ市場の見通しを前年同期比で約8%減の154億ドルに留まるとの予測を発表した。また、併せて同四半期におけるファウンドリの売上高ランキングの予測順位も発表した。

2019年第1四半期のファウンドリ需要低迷は、米中貿易戦争を中心とした政治的な不安定さなどが要因としてあげられているが、その流れは第2四半期も続いており、結果としてマイナス成長を記録することとなったという。

同四半期における売り上げトップは従来通りTSMCで、その予想金額は前年同期比4%減の75億5300万ドル、市場シェアはほ半数の49.2%となる見通しだ。2位は、ファウンドリ事業ならびに非メモリ部門の強化を掲げているSamsung Electronics。今回の数字にはシステムLSIを含んでいる。同社はシステムLSIのファブにてファウンドリ事業も行っており、現在、韓国華城のS3ラインの隣接地に微細化プロセスに対応するEUV専用棟の建設を進めている最中である。

  • TrendForce

    2019年第2四半期(4~6月期)におけるファウンドリ企業の売上高ランキング予測 (出所:TrendForce、2019年6月)

3位は米GlobalFoundries(GF)だが、同社は2019年4月に米ニューヨーク州イーストフィッシュキルにあるFab 10(旧 IBMイーストフィッシュキル工場の300mmライン)をON Semiconductorに4億3000万ドルで売却することを発表している。

4位以降で目立った動きを見せているのはPowerchip Semiconductor(PSC)のファウンドリ事業で、売り上げが前年同期比42%減と大きく後退。その結果、順位も1年前の7位から9位へと後退している。要因はメモリとディスプレイドライバの需要の減退だという。トップ10中、中Hua Hong Semiconductorがスマートカード、IoT、車載マイコン、電力向けで安定した業績を上げ、前年同期ほぼ横ばいを達成した以外、残りの9社は差はあるものの、マイナス成長を記録することとなる模様だ。

米中貿易戦争が有利に働く可能性があるSamsung

市場シェアの約半分を握るTSMCは、半導体市場全体が落ち込む中、最先端となる7nmプロセスの売り上げが伸びているとのことで、業界全体のマイナス成長率に比べては、影響は軽微となる見通しだが、米国商務省は5月17日にHuaweiとその子会社70社をエンティティリストに載せており、米国の大手サプライヤやArmなどがHuaweiから距離を置くようになっており、そうした動きが影響を及ぼす可能性があるという。

そのHuaweiとスマートフォン分野で競合するSamsungは、世界中に流通チャネルのネットワークを構築済みで、かつ自社開発・製造プロセッサ「Exynos」を有し、それを搭載したスマートフォンを販売している。もし、SamsungがHuaweiの有していた欧州市場で有していたシェアを引き継ぐ形で存在感を強めると、Huaweiが採用していたQualcommやMediaTekのプロセッサ需要が減少し、そうした企業が活用することで売り上げの拡大を続けてきた7nmプロセスを中心としたTSMCの先端プロセスビジネスの減速を招くこととなり、結果としてSamsungがファウンドリ事業における利益を拡大させる可能性があるとTrendForceではみている。

現在、米国政府は中国、インド、メキシコとの間に関税に関する紛争を抱えている。また、中東では政治的紛争が絶えず、こうした不安定な政情が世界経済に大きな影をもたらしている。世界銀行も1月に発表した2.9%という世界の経済成長率の予測を6月頭に2.6%へと下方修正したほか、国際通貨基金(IMF)も世界経済見通しを1月の3.5%から4月に3.3%へと下方修正しており、こうした状況を踏まえTrendForceでは、2019年のファウンドリ業界は10年ぶりのマイナス成長となる見通しで、市場規模も2018年と比べて3%近く減少するだろうとしている。