MLCCの品不足はいつまで続く?

多層セラミック・コンデンサ(MLCC)はますます不足しており、この状況は2020年まで続くと考えられます。MLCCは、信頼性が高く、かつ占有面積が小さいため、ほぼすべての種類の電子機器に使われており、デジタル化というキーワードの下、あらゆる機器の電子化が進む現在、そのニーズがさらに高まっているためです。

そうした状況を踏まえ、MLCCを供給するメーカー各社は生産量の増加に取り組んでいますが、依然として需要が供給を上回る見込みです。そのため、サプライチェーンでのこれらの部品の不足や価格上昇につながると考えられています。

MLCCの使用を抑えるDC/DCコンバータの選択法

サプライチェーンが対応を進める一方で、電源アプリケーションの設計者としては、どのようにMLCCの供給リスクを抑えたらいいか悩んでいるかもしれません。この記事では、標準的な産業アプリケーション・レールに電源供給するいくつかの方法を検討し、MLCC不足が製品の製造に与える影響を最小限に抑えるために、適切なDC/DCコンバータを選択する方法を紹介します。

例として、12Vの標準入力電圧を3.3Vのレギュレータ出力に変換し、3Aの電流を供給できるようにすることを想定します。

これらのパラメータを使ってTIの降圧コンバータのクイック・サーチを行うと、選択肢として産業用アプリケーション向けのDC/DCコンバータの候補がいくつか表示されます。適切なソリューションなら、これらの条件でコンパクトなQFN(Quad Flat No-lead)パッケージの優れた熱特性と、90%近くまたはそれ以上の効率を発揮できます。しかし、適切な動作のために必要になるMLCCの数を具体的に考えると、考慮すべき重要な違いが見えてきます。

外部補償によるピーク電流制御トポロジの標準的なソリューションを詳しく見ていくと、ハイサイドのMOSFETのゲート電圧を供給する小容量(0.1μF)ブートストラップ・コンデンサを1個、入力にコンデンサを最大4個(10μFが2個と0.1μFが2個)、出力に大容量コンデンサ1個(100μF)が必要になります。さらに、出力電圧のスタートアップ・ランプを制御するソフトスタート・コンデンサ1個と、周波数補償回路用に補償コンデンサ2個が必要な場合もあります。これでMLCC数の合計は、標準的な回路で最大9個になります。

ここで提案するもう1つの方法は、3mm×2mmの小型QFNパッケージ、DCS-Controlトポロジ搭載、入力3V~17Vの4A降圧型コンバータ「TPS62136」を使用することです。TPS62136はDCS-Controlトポロジによって高い動作時帯域幅と内部補償を実現しており、出力コンデンサの数を最小限に抑え、MLCCの部品数を削減することができます。

実際、評価モジュールでは、出力に22μFのコンデンサが2個、入力に10μFのコンデンサが1個で構成されており、ブートストラップ・コンデンサと補償コンデンサも不要です。ソフトスタート・コンデンサの使用を含めてもMLCCの数は合計で4個で済むのです。

  • EVM

    TPS62136を搭載した17V入力、4A出力、降圧コンバータの評価モジュール「TPS62136EVM-698」

また、TPS62136は、熱抵抗が低いパッケージで提供され、上記の条件で90%近くの効率を達成します。必要なセラミック・コンデンサの数が半分以下になるので、標準的な外部補償ピーク電流モード制御デバイスに比べて全体のソリューション・サイズも小さくできます。

  • Texas Instruments

    外部補償ピーク電流モード制御デバイス(a)とTPS62136(b)を用いた上述の回路構成に必要なMLCCを記した標準的回路図(赤で囲った部分が必要なMLCC)

MLCCの供給不足が電源アプリケーションに及ぼす影響を軽減したいと考えているなら、DC/DCコンバータの選択次第でコンデンサの合計値と総数の両方を最適化できることを覚えておくと良いでしょう。TIは、TPS62136をはじめ、高動作帯域幅DCS-Controlトポロジ・コンバータのポートフォリオを複数用意しており、そうしたニーズへの対応を図っています。

著者プロフィール

Yann Ducommun
Texas Instruments
低電力DC/DCコンバータ部門
アプリケーション・マネージャー