政府は、今世紀後半のできるだけ早期に「脱炭素社会」を実現することを目指す地球温暖化対策の長期戦略を11日の閣議で決定した。再生可能エネルギーの主力電源化を掲げ、イノベーションの推進に力点を置いた。政府は決定した長期戦略を今月中に国連に提出する予定だ。
2020年に本格始動する地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」は各国に長期戦略の策定と国連への提出を求めているが、先進7カ国(G7)では日本とイタリアの提出が遅れていた。日本政府が策定した長期戦略は、政府の有識者会議が4月にまとめた提言を基に一般から寄せられた意見内容を踏まえて決められた。
長期戦略は第1章「基本的な考え方」で、最終到達点として温室効果ガスの排出量をゼロにするために「脱炭素社会」を掲げた。実現を目指す時期を「今世紀後半のできるだけ早期」と定め、「2050年までに温室効果ガスの80%削減」という長期目標に大胆に取り組む、と宣言している。その上で「ビジネス主導の(従来の延長線上ではない)『非連続な』イノベーションを通じた『環境と成長の好循環』の実現を目指し、今からそのための取り組みを迅速に実施する」としている。
具体的には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを主力電源と位置付けた。同エネルギーの本格的な導入に必要なコスト低減のために革新的な研究開発を進めるとした。この中で再生可能エネルギーの分布を考慮した送電の増強や、高性能で低価格の蓄電池開発を進める方針を示している。
長期戦略では水素エネルギーの活用も強調している。革新的技術の研究開発や電力供給インフラ整備の推進を前提に水素製造コストを2050年までに10分の1以下にするという目標を掲げた。
一方、国内外の環境団体などから批判が出ている石炭火力については「依存度を可能な限り引き下げる」。原子力については「再稼働などの原子力事業を取り巻く様々な課題に対して総合的かつ責任有る取り組みを進めることが必要」としている。
このほか、炭素税や排出量取引など、二酸化炭素(CO2)排出に課金する制度については専門的・技術的議論が必要としている。
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