144Hz液晶を持っていてもGPUパワーが貧弱なら無駄。しかし、ROG ZEPHYRUS S GX701GXRは「GeForce RTX 2080」を搭載し、薄型ボディでも最大限のパワーを発揮できるMax-Q Design仕様で実装している。DXR(DirectX Raytracing)やDLSS(Deep Learning Super Sampling)にも対応するため、今後登場する「Watch Dogs」や「Call of Duty Modern Warfare」等の大作ゲームを最高の環境で楽しめることだろう。

  • GX701GXRに搭載されている「GeForce RTX 2080」の情報を「GPU-Z」で拾ってみた。Max-Q Designなのでクロックはやや抑えられているようだ

本レビュー記事では各種ベンチマークテストを行い、その結果を掲載していくが、その前にROG独自ユーティリティの「Armory Crate」についての説明が必要だ。Armory Crateの設定によって、ROG ZEPHYRUS S GX701GXRのパフォーマンスや使い勝手を向上できるので、ベンチマーク結果を見る前に一読していただきたい。

G-Syncを有効利用するには

ROG ZEPHYRUS S GX701GXRでG-Syncを利用するには、「GPUの切り替え」を行う必要がある点に注意だ。本機の工場出荷状態では、CPU(Core i7-9750H)に内蔵されている「HD Graphics 630」とGeForce RTX 2080が自動切り替え、いわゆる「Optimusテクノロジ」で運用される設定になっている。この設定ではリフレッシュレート144Hzは利用できるが、G-Syncは利用できない。

G-Syncを利用したい場合は前述のArmory Crateを起動し、GPUモードを「Discrete Graphics」に切り替える操作が必要だ(ここで再起動が入る)。つまり、CPU内蔵のHD Graphics 630を無効化し、GeForce RTX 2080だけを動作させる設定にすると、G-Syncが利用可能になる。このモード切り替え用のボタンはArmory Crateを全画面表示にしないと非常にわかりづらい場所に隠されており、この点はUI設計的に考え直していただきたいところだ。

Discrete GraphicsモードにするとOptimusを経由しないため若干GPUパフォーマンスは上がるが、同時に内蔵GPUが無効化されるので、普段使い時のバッテリーの持ちは悪くなるというデメリットもある。そのため外出時やゲーム以外の作業をする場合はOptimusに切り替える運用がオススメだ。またこのGPUモードの設定は、ROG ZEPHYRUS S GX701GXR全体のパフォーマンスモード(後述)とは独立している。パフォーマンスは静音寄りでも、GPUはGeForce RTX 2080のみとすることもできる。このあたりも少し整理して、スッキリさせてほしかったところだ。

  • ROGキーを押すと起動する「Armory Crate」。パフォーマンスモードを切り替えるUIが表示される(左側のレーダーチャートがそれ)だが、画面右下にあるUI(オレンジ色の矢印部分)に注目しよう(続く)

  • (続き)ここの中央の◆マークをクリックすることで、隠されていたUIが出現する。「GPU」モードが「Optimus」になっているが、これをクリックしてみよう。その後再起動することで反映される

  • 再起動するとDiscrete Graphicsモードに切り替わったことがわかる。Discrete Graphicsとは、CPU内蔵ではない独立したGPUのことだ

  • Optimusモード時のNVIDIAコントロールパネルにはG-Syncを設定するメニューはないが、Discrete GraphicsモードにするとG-Sync関係の設定が出現する

パフォーマンス優先か、快適性優先か

Armory Crateから設定できるROG ZEPHYRUS S GX701GXR全体のパフォーマンスモードについても触れておこう。本機のパフォーマンスモードは「サイレント」「バランス」「Turbo」の3種類が用意されており(さらに、Windowsに任せるモードとカスタムモードを加えれば5種類)、こちらは再起動なしで切り替えることができる。

ファンの静音性のほかCPUのPower Limit(正しくはPL1とPL2)を上下させることができる。具体的にはサイレントモードでは35W/45W、ノーマルモードは50W/60W、Tubroモードは70W/90Wとなり(PL1は状況に応じ上下する)、これが高いほどTurbo Boost時のクロックも発動時間も長くなる。CPUのパフォーマンスをより引き出すにはTurboモードを使うとよいが、GX701GXR本体の冷却力が限られているので、そう劇的に性能が伸びる訳ではない。この辺は後ほど検証しよう。

  • 最も多用するであろうバランスモード(左)とTurboモード(右)の比較。GPUは変化せず、CPUの性能をより引き出すための設定といえる。Turboモードではその代償として静音性と省エネ性が犠牲になる

その他のROG独自ツールも紹介しておこう。ネットワーク通信の重要度に応じ無線LAN通信の帯域を制御する「GameFirst V」や、同社独自のサウンド用ミドルウェア「Sonic Studio III」、ゲームや動画鑑賞等のTPOに応じ画面の色温度やガンマ設定を最適にする「ROG GameVisual」等がプリインストールされている。

  • 「GameFirst V」は、ゲームの通信帯域を他のアプリに食われないようにするためのトラフィック制御ツール

  • サウンドにバスブーストを適用したり、マイクで捉えた音声からノイズを除去する機能を備えた「Sonic Studuio III」。ASUSのクラウドサービスに設定を保存することも可能だ

  • ゲームの種類やTPOごとに最適な発色に調整する「ROG GameVisual」。いわゆるブルーライト抑制モードも備えている