有機EL(OLED)や液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)産業動向調査会社である米Display Supply Chain Consultants(DSCC)は2019年第2四半期の最新の調査結果に基づいて、FPD業界の製造装置投資予測を更新した。

それによると、2019年は前年比29%減の152億ドルが見込まれるとしている。2019年の投資額の減少傾向に従来予測から変化は無いが、シャープ・フォックスコン(鴻海)による第10.5世代対応の中国広州工場への投資が、当初計画通りの2019年に月産6万シート、2020年第1四半期に月産3万シートに前倒し変更された。

2019年の製造装置投資額の94%を中国が、その中でもトップ企業のBOEが28%を占めると予測されている。

一方、2020年のFPD製造装置投資については同36%増で207億ドルへと跳ね上がると予測している。背景としては、まずモバイル用OLED投資が71億ドルまで復活する見通し(2019年は14億ドル)で、Visionox、Tianma(天馬)、 EDO、China Star、BOE Y-OCTAなどが投資を計画している。また、LCDの第10.5世代向け投資(BOE、China Star、シャープ)やLG DisplayのWOLED第10.5世代、Samsung Display(SDC)のQD-OLED第8.5世代投資については、ほぼ従来通りの計画としている。

モバイル向けOLEDは2018年から継続的な供給過剰が続いており、SDCなどでは生産ラインの稼働率が低迷、収益も悪化傾向にあることから、テレビが2019年のFPD向け製造装置投資の90%を占める格好となっている。とはいえ、モバイルOLED向け製造装置の投資額は2019年に大きく減少するものの、2020年には同461%増と大きく伸びる見通しとなっている。

  • FPD設備投資

    OLED+LCD製造装置投資のDSCC最新予測 (出所:DSCC、2019年6月)

その結果、2019年のLCDとOLEDへの投資比率はLCD向けが7割を超すが、2020年にはOLEDが過半を占める状態へと移り、2021年以降はOLEDが全体の85~90%を占めるものとDSCCは見ている。

  • FPD設備投資

    OLED+LCD別ディスプレイ製造装置投資割合の過去の推移と今後の予測 (出所:DSCC、2019年6月)

地域としては今後も中国が中心で、技術的にはOLEDが中心になるとDCCCは見ている。同社のアジア代表である田村喜男氏は「日本勢の存在感が残るFPD製造装置産業において、中国政府の補助金政策の今後が大きなポイントとなる。現在の第10.5世代LCDとモバイル用フレキシブルOLED重視の補助金政策に対して、将来のTV用OLEDへの補助金拡大はいつ頃になるのか? また第10.5世代LCDへの補助金が将来も継続するのか? に注目していかなければならない。そして、OLEDへの投資・立り上げにおける重要なポイントは、製造装置・技術者・投資資金であり、これらの獲得が、BOEのフレキシブルOLEDが立ち上がってきた重要な背景であると言えよう」と述べており、中国の動きに注目する必要があることを強調している。