シュナイダーエレクトリックは5月28日、都内で記者会見を開き、レディメイドの生産現場におけるクラウドベースの機械常時監視サービス「EcoStruxure(エコストラクチャ)マシンアドバイザー」を6月3日から国内において提供開始すると発表した。

EcoStruxureマシンアドバイザーは、機械・装置メーカーが日本およびグローバルに出荷した機械や装置を構成する部品情報の一元管理、機械の稼働をクラウド上で確認・分析することにより、機械の運用とメンテナンスを簡便化するサービス。

  • EcoStruxureマシンアドバイザーの概要

    EcoStruxureマシンアドバイザーの概要

同社では、オープンで相互運用性を備えたIoTプラットフォーム「EcoStruxure」を提供し、第1の層「コネクテッド・デバイス」、第2の層「エッジコントロール」、第3の層「アプリケーション、アナリティクス、サービス」の3層を相互に連携させ、オープンなIPプロトコル上で多様なハードウェアやシステム、制御環境での稼働を可能としている。

同アーキテクチャをベースにビル管理向けの「EcoStruxure Building」、電力供給向けの「EcoStruxure Power」、データセンター向けの「EcoStruxure IT」、スマートファクトリー向けの「EcoStruxure Machine」、プラント向けの「EcoStruxure Plant」、電力グリッド向けの「EcoStruxure Grid」の各フレームワークを備える。新サービスの位置づけとしては、EcoStruxure Machineの中のアプリケーション、アナリティクス、サービスに属する。

  • IoTプラットフォーム「EcoStruxure」の概要

    IoTプラットフォーム「EcoStruxure」の概要

シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 チャネルマーケティング マネージャーの川田学氏は「昨今ではIoTが叫ばれはじめて久しいが、日本では立ち遅れている印象がある。データは収集しているものの、活用の段階に進んでおらず、収集されたデータは10%程度しか分析されていない」と指摘。

  • シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 チャネルマーケティング マネージャーの川田学氏

    シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 チャネルマーケティング マネージャーの川田学氏

そして、決められたルーチン業務から現場が判断できるスピード感を持った業務フローの実現や、オフィス・現場での業務からモバイル・リモートの活用、縦割りから組織全体での情報共有、スタンドアローンPCからクラウドコンピューティング・AIの活用をはじめ、組織全体の変革がなければデータの活用にはつながらないという。しかし、国内の中堅機械メーカーでは変革を実現することが難しいことから、サービスとしてパッケージングしたEcoStruxureマシンアドバイザーを提供することにした。

新サービスは、レディメイドのソフトウェアのため、初期コストを抑えつつ最短半日で使用できるほか、同社以外の製品も登録できることから、幅広い製品の一元管理・監視が可能。IoTプラットフォームの構築には、コストと時間がかかるため、これまで取り組めていなかった中堅機械メーカーも低コストで短期的にIoT化を実現できるという。

主な機能はトラック、モニター、フィックスの3つ。トラックは機械の設置場所をマップ上に表示し、機械種別(テンプレート)を作成することで機械の構成部品をシステム構成図として管理。機械が持つ各種データ(部品表やマニュアルなどの書類やプログラマブル表示器、PLCプログラム)の補完、メンテナンスログの記録、設定済みの機械の保全タスクの管理を可能としている。

  • トラックの概要

    トラックの概要

モニターは、機械/設備データの収集と監視、各種データをダッシュボードに表示し、各種ウィジェットを対話的インタフェースで自由に追加・削除できるほか、収集したデータの過去トレンド参照や各種演算・アラーム設定が可能。なお、2019年末にAIを活用したデータ分析機能として温度や電力値などの入力パラメータの収集結果から機械学習により異常動作を検出することに加え、重要部品の予知保全診断にも対応する健康診断機能を追加する予定だ。

  • モニターの概要

    モニターの概要

  • AIを活用した健康診断機能の概要

    AIを活用した健康診断機能の概要

フィックスは、2019年末に提供開始を予定しており、機械の制御機器と暗号化通信で接続し、ソフトウェアの遠隔修理を行う。

シュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏は、なぜ日本において新サービスを提供するのかという点について「日本の中堅・中小機械メーカーの海外展開の促進に加え、IoTをカスタマイズではなく、比較的容易に導入してもらうレディメイドという形で従来の機械に付加価値を与え、世界で勝つ武器として活用してもらいたい。また、新たなビジネスモデルを実現を支援するためサービスだ」と説明した。

  • シュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏

    シュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏

すでに新サービスは、昨年5月から欧州を中心とした海外で提供開始し、2019年末までに5000台の機器接続を見込んでいる。日本では2021年末までに数百台の接続を目指し、価格はトラックが無料、モニターはデータ転送分だけの従量課金方式を採用し、機械3台までは無料で使用でき、それ以降は1機械、1データ、1カ月約100円で利用を可能としている。

  • サービス価格の概要

    サービス価格の概要