宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月25日、小惑星探査機「はやぶさ2」が実施したクレーター探索運用(CRA2)について最新状況を説明、期待されていた人工クレーターがリュウグウ表面に見つかったことを明らかにした。詳細な分析はこれからになるものの、10mほどの大きなクレーターが確認できたという。
JAXAは今月上旬、搭載した「衝突装置」(SCI)の運用を実施した。SCIの分離と作動、分離カメラ「DCAM3」による撮影、探査機本体の退避行動など、ミッションはパーフェクトに完了。DCAM3によって、小惑星表面からイジェクタ(噴出物)が出ている様子も撮影されており、発射した衝突体がリュウグウに命中したことはすでに分かっていた。
衝突体が命中したことで地形がどう変わったか調べるため、JAXAはCRA2を実施。24日16:42より降下を開始し、25日11:16に高度1.7kmに到達、望遠カメラ「ONC-T」による観測を行った。衝突前には、同じエリアをすでに撮影しており(CRA1)、両方の画像を比較することで、変化が分かるというわけだ。
CRA2の結果、黒く変色しているクレーターを発見。事前の予測では、SCIの精度はそれほど高くないとみられ、半径200mという広い領域を捜索対象としていた。しかし実際にクレーターが見つかった場所は、目標点から10~20m程度しか離れておらず、非常に精度良く狙った場所に命中していた模様だ。
クレーターの直径や深さなどは、今後の接近観測で正確に調べる必要があるものの、今回撮影された画像からは、「10mくらいの領域で地形が変化したことが分かる」(JAXA津田雄一プロジェクトマネージャ)という。幅40mほどに渡って黒い変色が確認されており、これはイジェクタが堆積したものと推測される。
SCIの科学観測を担当している神戸大学の荒川政彦教授は、「7年間この日を待ちわびていた。DCAM3でイジェクタを見たとき、数mくらいのクレーターができたのではと想像していたが、想像以上にはっきりくっきりと立派な穴を確認できて、人生最高の一日になった」と喜んだ。
荒川教授によれば、10mというサイズは「地上実験で事前に予測していた最大径」だったという。リュウグウ表面は大きな岩だらけで、クレーターが大きくなるには決して理想的な条件では無かったものの、実際にこれだけ大きくなったことについては、「我々が知らないリュウグウの物質の特徴があるのでは。ものすごく興味をそそられる」と述べた。
そして今後の注目はやはり、2回目のタッチダウンを行うのかどうか、行うとすればどこを狙うのか、ということになるだろう。津田プロマネは「まだ議論を始めたばかりで、現時点では何とも言えない」とした上で、「更地になったように見える部分があり、そこを狙えるかどうかの議論になるだろう」との見通しを示した。
ただ、確かにクレーター内部で更地になったように見える場所はあるものの、接近観測してみたらタッチダウンの支障となる1m程度の岩がゴロゴロしていた、となる可能性はある。また穴が深かった場合は、太陽電池パドルが接触する危険性も増える。クレーター内に着陸できるかどうかは、今後の観測結果を見ないと何とも言えない。
そもそも目的は、風化前のフレッシュな内部物質を採取することなので、周辺に飛び散っているようなら、クレーター外に着陸することも有り得る。特に、着陸候補地点としていた「S01」の近くに命中していたのは好材料。S01内に1回目タッチダウンの「L08-E1」と同じ程度の広さの安全な領域があれば、こちらに着陸する可能性も十分あるだろう。
もちろん、リスクが大きいようなら、今回は無理に狙わなくても構わない。すでに1回目のタッチダウンに成功しており、そのサンプルを地球に持ち帰るのが最優先だ。いずれにしても、今後の接近観測と詳細分析を待つ必要がある。津田プロマネは「1~2カ月の間に方針を決めて実行に移したい」とコメントしている。