米国時間の3月13日に、Android 9.x Pieに続くAndroidのメジャーバージョンになる「Android Q」(開発コードネーム)の初のベータ版「Android Q Beta 1」が開発者およびアーリーアダプター向けにリリースされた。正式版のリリースは今年第3四半期を予定している。

  • Android Q

    Androidの名前にはスイーツが付けられているが、「Quindim」「Queen of Puddings」など「Q」から始まるスイーツが少ないことも話題

「5G、エッジツーエッジ・ディスプレイ、フォルダブル・スクリーンといった新しいテクノロジと共に、2019年にモバイルのイノベーションが力強く進むだろう」とGoogleのエンジニアリング担当バイスプレジデントのDave Burke氏。

Android Qは、Androidスマートフォンの可能性を広げるプラットフォームになりそうだ。最初の開発者向けプレビューは「プライバシー保護とセキュリティの強化」「接続性」「ユーザー体験 (UX)のアップデート」などから、Android Qの方向性を示すビルドになっている。

現時点でAndroid Qの最大の強化点となっているのが「プライバシー保護」だ。昨年初めにGoogleは、GoogleアカウントとAndroidデバイスのデータへの、サードパーティのアクセスのレビューを徹底する「Project Strobe」を開始した。Android Qにおけるプライバシー保護強化の多くは、Project Strobeに基づいたものになっているという。

ロケーションへのアクセスについて、ユーザーがサードパーティのアプリに対して「常に許可」「拒否」だけではなく、「アプリ使用中のみ許可」を選択できる。例えば、カーシェアリング・サービスを頼んだ時、ロケーション情報へのアクセスを許可したら簡単にユーザーの位置をアプリに伝えられるが、カーシェアリングを頼んでいる時以外は位置情報を知られたくない。そうした場合に「アプリ使用中のみ許可」を選ぶことで、アプリがアクセスできるロケーション情報を制限できる。

  • ロケーション情報アクセス許可のパネル

    ロケーション情報へのアクセスをユーザーがより細かくコントロールできるように

共有についても、新しいRuntime Permissionによって写真やビデオ、オーディオへのアプリのアクセスをユーザーがコントロールできる。アプリがダウンロードにアクセスする際にシステムのファイルピッカーの使用を要求するようになり、ダウンロードしたファイルへのアクセスをユーザーが判断できる。

ネットワークをスキャニングする多くのAPIではCOARSEのパーミッションが要求されていたが、Android QではBluetooth、Wi-Fi、セルラーについてFINEパーミッションを要求する。IMEIやシリアル番号など変更できないデバイスIDへのアクセスを制限。Wi-FiはWP3およびOWEをサポート。Android 9 PieではオプションだったWi-Fi接続ごとにMACアドレスを変更する仕組みがデフォルトになった。

Adaptive Wi-Fiをサポートし、リアルタイムのゲーミングや音声通信などにおいて、アプリが対応していたら低レイテンシな高パフォーマンス・モードの利用が可能になる。ネットワーク接続APIの改善によって、ワイヤレスLANにおいてIoT機器の制御やピアツーピア機能の管理が向上する。

UXについては、マルチレジュームのサポート、使用アプリの切り替えやresizeableActivityの改善など、フォルダブル (二つ折り)や大画面のメリットを活かすための数多くの変更が施されている。Android 9 Pieではアプリが突然前面に表示されてユーザーが端末を使用する流れを中断してしまうことがあったが、Android QはアプリがバックグランドからActivityをローンチするのを防ぐ。

  • フォルダブルに対応

    二つ折りや大画面など、新しいタイプのAndroidデバイスをサポート

コンテンツ共有の仕組みも見直され、写真やビデオを他のアプリを使って共有したい場合など、「Sharing Shortcuts」という新機能で素早く他のアプリに切り替えられる。ShortcutInfo APIを拡張した機能で、App Shortcutsに似たふるまいになる。

  • Sharing Shortcutsのパネル

    コンテンツを別のアプリに直接渡す「Sharing Shortcuts」

Slicesの機能を活かした新しいSettings Panel APIによって、アプリに関連するシステム設定に素早くアクセスできるパネルを表示させられるようになった。例えば、Webブラウザに接続関連のパネルを用意することで、Wi-Fiやモバイルデータの設定、エアプレーン・モードのオン/オフなどをユーザーがブラウザ上で変更できるようになる。

  • アプリに関連するシステム設定パネルを提供

    アプリに関連するシステム設定のパネルを提供

メディア関連では、AV1コーデック、Opusを用いたオーディオ・エンコーディングをサポート。対応するデバイスでアプリがJPEGやXMPメモデータに含まれるDynamic Depthをリクエストでき、背景ボケや3Dイメージの作成といった機能を持ったアプリを提供できる。

パフォーマンスに関しては、ART (Android Runtime)の改善によって、同じアプリのままでもメモリー消費量が減少し、起動時間が高速になる。また通信の暗号化が「TLS 1.3」をサポート、TLS 1.2に比べて40%高速にセキュアな接続を確立できる。

  • ARTの改善でアプリの起動時間が短縮

    ARTの改善でアプリの起動時間が短縮

Android Q Beta 1は、Androidベータプログラムに登録することでPixelシリーズのスマートフォンにOTA (over-the-air)でインストールできる。ダウンロードサイトからシステムイメージを入手して、マニュアルで導入することも可能。Android Emulatorでも動作する。

これからのスケジュールは、春にベータ2、米国でGoogle I/O 2019を開催する5月にベータ3とアップデートを重ねていく。そして、6月にリリース予定のベータ4でAPIを確定し、夏にリリース候補のテスト版となるベータ5、リリース候補の最終テスト版ベータ6を提供、第3四半期に最終版をリリースする。

  • Android Qの開発ロードマップ

    Android Qの情報追加が行われるであろうGoogle I/O 2019は5月7日~9日に開催される