Microsoftが「OSS(オープンソースソフトウェア)Love」を明言し始めて数年が経つ。2016年11月にはLinux Foundationにプラチナメンバーとして参加したことをConnect(); 2016で発表し、Windows PowerShellはPowerShell Coreに移行。

Windows 3.1のファイルマネージャーのソースコードや、MS-DOS 1.25/2.0のソースコードもGitHubで公開した。

  • Linux Foundationへの参加を発表するMicrosoft EVP Cloud+AI GroupのScott Guthrie氏

2019年3月6日に、Microsoftがオープンソース化したのが、UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)版電卓である。同じくGitHubでソースコードを公開し、Visual Studio 2017 CommunityとVisual Studioの拡張機能であるXAML Stylerをインストールすれば、誰でもコンパイルできる。

  • UWP版電卓のプロジェクトをVisual Studio 2017で開いた状態

もちろんエンドユーザーがわざわざコンパイルする必要性はまったくない。OS標準のUWP版電卓と、今回ソースコードを公開したUWP版電卓で機能に差はない。

コードが書ける開発者であれば、バグ修正や自身が必要な機能を追加することもできるだろう。ちなみにMicrosoftは新機能の提案やテクニカルレビューを求めており、ここからから詳しい手順を確認できる。腕に覚えのある方はご覧いただきたい。

  • コンパイル結果。当たり前だが標準のUWP版電卓と違いはない

MicrosoftがGitHubで公開しているリポジトリ数は本稿執筆時点で2,289。ここにOffice Developerの318、ASP.NETの165を加えると2,700強となる。

GitHubはMicrosoftが2018年10月に買収を完了し、自社サービスの1つであることから積極的に利用するのは当たり前だと思われるが、Microsoftは買収以前から自社製品およびサービスのソースコードをGitHubで管理し、クローンやチェックアウトを高速化するGVFS(Git Virtual File System)を提供するといった協力的な姿勢を示してきた。

  • Microsoftは「Love for Linux」なる公式ドキュメントを用意して、オープンソースへの愛情を表明している

2016年ごろ、日本マイクロソフトの関係者に取材した際は、「Microsoftは"OSS Love"ではない、すでにOSS開発に取り組む"中の人"となった」と述べていた。同年はKubernetesの生み親(共同創業者)であるBrendan Burns氏がMicrosoftに参加するなど、大きく変化した年でもある。

あれから3年。2014年2月にCEOとして着任したSatya Nadella氏の指揮下でMicrosoftの企業文化も変化し、プロプライエタリソフトウェアからOSSへの移行は加速するのではないだろうか。

阿久津良和(Cactus)