■4人のキーマン編

続いて、今回のAIトークを実装するに至ったキーマンである河本悠暉、甲斐勇輝、皮籠石亮、今野健に話を聞いた。

  • 左から河本悠暉、甲斐勇輝、皮籠石亮、今野健

    左から河本悠暉(『8beatStory♪』総合プロデューサー・クロノス取締役)、
    甲斐勇輝(『8beatStory♪』音楽プロデューサー・ホリプロ音楽事業部 音楽制作部)、
    皮籠石亮(ホリプロインターナショナル・Management Divisionルーム長。大橋彩香を含め複数のタレントマネジメントを担当)、
    今野健(木村情報技術株式会社AI事業部。「空乃かなでAIトーク」のAI技術制作窓口を担当)
    撮影:M.TOKU

――こういった、スタッフインタビューは『エビスト』初になりますね。

河本 そうですね。『エビスト』の物語や音楽はユーザーさんの自由な受け取り方で楽しんで頂きたいと考えていたので、あまり制作に関してお話することはしてこなかったですね。ただ、先日「空乃かなでAIトーク」プロジェクトの経緯を、マイナビニュースさんにお話したところ「制作についてユーザーさんに知ってもらえるとよりこの新機能に興味を持ってもらえるのでは?」とご提案を頂き、今回思い切ってスタッフインタビューという形で記事にして頂きました。

――まずは、このメンバーの関係性を教えて頂けますでしょうか。

皮籠石 総合プロデューサーの河本さんや、ホリプロの音楽プロデューサーの甲斐、AI技術の制作を担当された今野さんに関しては、それぞれがいわば『エビスト』の制作関係者という立場なので、関係性もわかりやすいとは思いますが、僕に関しては元々、大橋の現場担当マネージャーとしてコンテンツに関わる立場でした。今野さんが僕の古くからの知り合いで、彼が扱っているAIサービスは、本来エンタメに直結している物ではない事は理解していました。だからこそ、このコンテンツと掛け合わせて、何か新しいこと、面白いことができないかな? と思い、河本さんに提案しました。それに河本さんが乗ってくれたというのが今回のAIトークのきっかけでもありました。なので、僕は人と人を繋ぐ役割ですね。

――なるほど。皮籠石さんがそれぞれと知り合いだったから、それを繋いだということですね。

皮籠石 そうですね。僕は本来、マネージャーという裏方の立場です。ただ、今回は『エビスト』というコンテンツが「AIトーク」という新しいチャレンジをしている事や、その機能を実装した『空乃かなで』役でお世話になっている大橋彩香について、多くの方に知って頂き、楽しんで頂ければと思いました。

――なるほど……。

皮籠石 また、マネージャーってタレントの付き人というイメージを持たれている方も多いと思うのですが、今回のように、コンテンツプロデューサーへ直接提案させて頂く事で、新たな物を生み出すチームの一員になれるんです。当然、それぞれの作品状況や関係値にもよるので、毎回そういうわけではありません。だからこそ今回のスタッフチームに感謝していますし、こういった、人と人を繋いで意見交換をして新しい物が生まれる面白さみたいな背景が、エンタメ業界やマネージメント業を志す方々に伝われば良いなと思いました。なので、今回はみなさんと一緒にインタビューを受けさせて頂く事にしました。

――皮籠石さんと今野さんは学生時代からの知り合い、皆さんは河本さんとは『エビスト』に関わるようになってから知り合ったんでしょうか。

甲斐 2015年ころ、大橋がクロノスさんの別のコンテンツにも関わっていて、その作品の歌を録るときに僕がディレクションをしたんです。そこで、初めて河本さんとお会いして、その後「クロノスとして音楽ゲームを作りたくて」という相談を受けたんです。「それなら、音楽はホリプロで制作しますよ」と提案して、その時から『エビスト』の骨格が出来上がっていきました。

皮籠石 その時に、河本さんは大橋の芝居や歌を気に入ってくださって。声優として大橋を起用したいという話もある段階で頂いていました。

――その時から! 大橋さん演じるかなでは途中参加のキャラクターだけど、初期から構想はあったんですね。

皮籠石 ただ、もう『エビスト』は走り始めていましたし、音楽がホリプロ制作だから声優もホリプロ所属の人で……というなんとなくの流れや座組では、良いものは生まれないのではないか? と。河本さんもそういう意味合いで「大橋を起用したい」と言っているわけじゃないこともわかっていました。何か新しい狙いをもった役どころで参加させて頂ければ、作品にとっても、大橋にとっても良いのではと考えていました。そんな時に、今野さんがAIの技術を扱っている事があり、「これ、膨らませてみませんか」と河本さんに提案をさせて頂いたんです。

甲斐 予算もかかる話なので「しんどかったらいいです、気を遣わなくていいですよ」と言ったら、予想以上に河本さんが乗り気で(笑)。「それは面白そうですね!」って前のめりだったので驚きました。

河本 そうですね。そもそも『エビスト』は、私が大学のときに”人工知能”について少し学んでいて、それが元に生まれた物語でもあるんです。

――そこに原点が!

河本 その時に人工知能というものを学んで、単純な言い方になりますがすごくワクワクしたんですよね。漠然と未来を感じたというか、未来が怖くなったというか。私はその道の勉強に深く進むことはなかったのですが、少なからず人工知能の虜になっていて。作品のテーマである「人間とアンドロイド」の音楽をかけた戦いというのも、人工知能というワードがすごく影響しています。

――そんな『エビスト』に今回、AIトークという機能が実装されました。この実装は構想何年くらいかかりましたか?

河本 かなでが登場するという発表がされた「ハニプラ」の3rdライブ(2017年11月12日東京・マイナビBLITZにて)の時にはすでに構想があり、制作準備をしていました。もっと言えば、空乃かなでというキャラクターとストーリーを作っている時に皮籠石さんから、このお話を頂いたんです。AI機能は、すでに考えていたストーリーをいい方向に膨らましてくれましたし、試みとしても面白いし、私としては実装に迷うことはなかったです。この機能はひょっとしたらかなでが待っていたものなのかなとさえ思いました。

――かなでが登場したストーリーはユーザーの方々からの反響も大きかったですが、それが理由でAIトーク機能を実装しようと思ったわけではなかったんですね。

河本 そうですね。ストーリーでも色々な含みを持たせていたので、ユーザーさんの中にはかなでの次の展開を予想していた方もいらっしゃったと思います。それが歌なのか、ユニットなのか……と思っていたところにAIトーク機能を実装したので、驚いた方も多かったのではないでしょうか。

甲斐 『エビスト』のコンセプトの1つとして、ど真ん中だけではなく、後ろ斜め上くらいからくるような展開をしたいですねと河本さんとはよく話をしているんです。それを今回も実現した形ですね(笑)。

河本 過去に発売した「そらまめクッション」なんかも後ろ斜め上の展開だったかな。いや、なんでそんなに大きいの? と制作側も思っていました(笑)。展開を応援してくれているユーザーさんから見たら心配になる時もあると思うのですが、ただのビジネスとしてではなく、やりたいこと思い描いたことに挑戦していかないと、伝えたいことも伝えられなくなっちゃう気がしていて。もちろんその都度色々な条件はありますが、後ろ斜め上くらいでも届けたいと思ったことをやらせて頂いています。