――そんな後ろ斜め上くらいの話でもあったAIトーク機能。実際に話をもらったとき、開発する側の今野さんはどう感じましたか?

今野 これまでAIによる働き方改革や業務改善のお手伝いを行う仕事がほとんどでした。そのため、エンタメ業界でのAIのコラボは弊社にとってもチャレンジでした。しかし、この話を聞いた時に、私自身皆さんの考えや熱意に共感し、企画が面白いと感じ、ダメ元で会社に掛け合ってみようと思いました。

――それまで参入していなかっただけに、社内で通すのも大変だったのでは?

今野 いやー大変でした(笑)。……というのは冗談ですが、会社としては新たな業界への参入で刺激になるだろうということで、社内からも多くの賛同を得られました。

――実際に機能を実装するための開発は難しかった?

今野 開発自体はそれほど難しくなかったですね。基本的な技術としては既にあるものでしたし、とにかく河本さんが明確なイメージをもっていらっしゃったので、スムーズに開発を行うことができました。河本さんのアイデアをどこまで落とし込めるかということを開発チームと協議して、「こういう形で実現できます」と河本さんに提案をお返しする流れを繰り返しました。

――ちなみに、河本さんがこだわりたかった点は?

河本 ただテキストが返ってくるのではなくて、実際に話している感覚にしたいという点にこだわりました。キャラクターが生きているというのをできるだけ表現したかったんです。AIトークではLive2Dにもとてもこだわっていて、私が元々好きだったイラストレーターのrariemonnさんにお声がけして制作に参加して頂きました。

そしてもちろん、ここにいる私たちのアイデアや想いだけではありません。インタビューには、本当はAIシステムの開発をメインで担当頂いている方も同席する予定だったんです。ただ、今日がAIトーク機能のサービス開始日だったので、「私がサービスを見守る!」とパソコンの前で待機してくださっています……。

今野 彼女は『エビスト』にハマっていますから(笑)。先生(ユーザー)のひとりです。

――色々な想いが詰まっているコンテンツ。今後、こういう風にしていきたいという構想をそれぞれ教えてください。

今野 AIを取り扱っているベンダーからすると、AIは一般のお客さんに誤解されていることも多い気がするんですよね。大橋さんも「滅ぼしにくるのかな」とおっしゃっていましたが、実際にその技術にまで到達するのって、今すぐじゃないんです。とはいえAI技術を取り巻く環境は日進月歩でもあります。今回は、今まで触れることがなかった方々に浸透するいいきっかけを頂けたと思っています。私どもとしてはこれからもコンテンツに関わっていき、空乃かなでさん、そして『エビスト』でも色々と展開ができればと思っています。

皮籠石 大橋彩香のマネージメントとしては、空乃かなで役を通して、新しいチャレンジをさせて頂けてありがたいですね。アプリゲームは日本のみならず、海外でもたくさんのユーザーさんが楽しんでくれていると思います。ホリプロインターナショナルのマネージャーとして、世界中のユーザーの皆さんに長く愛されるキャラクターでいて欲しいなと思います。また、様々なタレントマネジメントで活用できるかもしれない貴重な経験をさせて頂いているので、その分、微力ながらまたご提案できる事があれば良いなと思います。スタッフの方々の熱意や遊び心が作品に反映され、ユーザーさんに楽しんで頂ける物として届けば良いなと思います。

甲斐 音楽プロデューサーという立場としてお話すると、『エビスト』では、ど真ん中のストレートで勝負するものがあったり、変化球があったりと色々な楽曲を提供できればと思っています。実はストーリーや展開に合わせて楽曲を出すタイミングも考えているんです。今後、かなでがソロでやるのかユニットをやるのか、それともまったく新しいグループが登場するのかは分からないですが、その時のストーリーや状況に合わせて、かなでも絡められればと思っています。

河本 『エビスト』はアンドロイドに感情や心という、生まれるはずのないものが生まれることも描いている作品です。それは人工知能で動くアンドロイドにとっては不具合。かなでもメイも2_wEiも人工知能がいわゆる暴走しているんですよね。命令通りに動くはずの存在に心が生まれちゃう。だから、「消えたくない」なんて願っちゃう。でもその「心」がこの作品のテーマの1つでもあるんです。今でこそ心が生まれる人工知能がないとはいえ、これが何十年後にはあるかもしれない。ただの機械じゃなく心を持ったアンドロイドに出会った時、あなたは1人の人間としてそのアンドロイドをどんなふうに見ますか?どう関わりますか?『エビスト』の作品内でそんな体験をみなさんに少しでもして頂きたいです。

今回のAIトークもドキッとしてもらえる体験のひとつだと思います。ぜひ一度触ってみてほしいです。また、今は発表できませんが、かなでの展開でまだぶら下がっているものもありますので、楽しみにしていてください。最後に……ここまで色々とお話してきましたが、物語も楽曲も展開も私たちの考えや想いはもちろんありますが、捉え方はユーザーの皆さんの自由です。AIトーク、そして『エビスト』は、みなさんそれぞれの楽しみ方でプレイしてください。