中国の総合家電ブランド・ハイセンスが2月19日、日本市場向けの4K/HDR対応テレビの新製品を発表しました。有機ELのE8000シリーズと、液晶のU7Eシリーズです。日本法人のハイセンスジャパンが開催した発表会で映像を体験してきました。

  • ハイセンスがフラグシップのテレビ製品を発表しました

有機EL1モデルと、液晶2モデル

まずはラインナップと価格、発売日を整理しましょう。E8000シリーズは55V型の「55E8000」が1機種で、4月上旬の発売を予定しています。価格はオープンですが、23万円前後(税別)での販売が予想されます。

  • 4K/HDR対応の55V型有機ELテレビ「55E8000」。鮮やかな色彩とメリハリの効いたコントラスト感が特徴

液晶のU7Eシリーズは2機種が3月中旬に登場予定。価格はオープンですが、65V型の「65U7E」が18万円前後(税別)、55V型の「55U7E」が15万円前後(税別)を見込んでいます。

  • 4K/HDR対応の液晶テレビフラグシップモデル「U7E」。明るく力強い映像を再現できます

発表されたテレビはすべて、新4K衛星放送を受信できるチューナー1基を内蔵しています。HDR規格「HDR10」(Ultra HDブルーレイで採用されているHDR方式)と、「HLG」(新4K衛星放送で用いられるHDR方式)もサポート。2KのBS/110度CS、地上デジタル放送に対応するチューナー×3基も内蔵し、USB-HDDを外付けすれば、裏番組まで録画可能です。

本体はパネル部を薄くし、徹底したスリム化をはかりました。ディスプレイ周囲の額縁は、映像視聴の妨げにならないように幅を狭めたナローベゼル仕様。E8000シリーズではブランドロゴをベゼルではなく、スタンドの脚先端に逃がして、映像への没入感を高めました。

  • E8000シリーズを横から見るとパネルがとても薄いことがわかります

  • E8000シリーズはテーブルトップスタンドにブランドロゴを配置しました

  • U7Eシリーズはベゼルのフロント下側にブランドロゴを配置しています。テーブルトップスタンドはシルバーです

東芝レグザエンジンを搭載した画質は?

テレビで最も大事な画質は「日本基準の高画質を追求した」と、発表会で新製品のプレゼンテーションを行った担当者が強調します。ハイセンスは今から8年前の2011年に、テレビ製品の普及モデルを日本市場へ投入。4Kテレビは2016年から販売しています。ハイセンスが今回、画質のでき栄えをアピールする背景には、2018年に子会社化した東芝映像ソリューションと共同で映像のクオリティを磨いてきたことがあります。

その成果として、ハイセンスは東芝のテレビ「REGZA(レグザ)」チームと共同開発した映像エンジン「レグザエンジンNEO」を搭載する液晶テレビ「A6800シリーズ」を2018年に発表しました。新4K衛星放送を受信できるチューナーを搭載するハイコスパなテレビで話題を集める現行モデルです(43V型「43A6800」の市場価格は税別9万円前後)。

今回発表された有機ELテレビと液晶テレビは、ハイセンスにおけるフラグシップの位置付け。E8000シリーズは、ハイセンスが日本で初めて発売する有機ELテレビでもあります。

3機種共に、レグザエンジンNEOに高性能な超解像エンジンのICチップを外付けした「レグザエンジンNEO plus」を採用。ノイズやチラつきを抑え、高精細な映像を表現します。地デジ映像は3段階で画質処理を施し、4K画質へとアップコンバート。120Hzの倍速駆動表示もドライブできるよう設計されました。

  • E8000とU7Eに搭載された映像エンジン「レグザエンジンNEO plus」

映像のチューニングについても、日本のユーザーの好みに合うようにハイセンスと東芝レグザのエンジニアが共同で画づくりをしています。筆者も会場で映像を体験してきました。

東芝レグザの心臓部にあたる技術と、エンジニアが蓄積してきたノウハウが投入されているからといって、ハイセンスのテレビと東芝レグザの映像がまったく同じテイストになるとは限りません。それぞれに個性が現れてくるところがテレビという映像機器の面白いところです。

筆者が過去に体験した東芝レグザのナチュラルな映像に比べると、ハイセンスのE8000シリーズ、U7Eシリーズはどちらもコントラストがやや強めで、色は鮮やかさを強調しているように感じました。

  • U7Eシリーズのデモ。鮮やかな色彩表現を特徴としています。赤や緑色の力強さが際立っていました

有機ELの特長は、液晶よりも引き締まった黒色を再現できるところにあります。E8000シリーズも黒の沈み込みは十分に感じられますが、被写体の輪郭を繊細に再現するレグザに対して、ハイセンスのE8000シリーズは輪郭をパリッとボールドに描く傾向があるように思いました。

会場には2017年にハイセンスが発売した4K液晶テレビ「N5000」シリーズが比較用のリファレンスとして展示されていました。新旧モデルを並べながら見比べてみると、新しいU7Eシリーズや2018年発売のA6800シリーズはレグザエンジンの力によって、色鮮やかで階調表現も滑らかな夕焼けをパネルに描いていました。レグザエンジン搭載モデルは、パネルの黒浮きも大幅に抑えられており、引き締まった立体感のある風景を楽しめます。

  • 2018年に発売されたA6800シリーズは、レグザエンジンNEOを搭載する液晶テレビ。色再現のテイストはU7Eシリーズによく似ています

  • 2017年発売のN5000シリーズ。全体的にあっさりとした色合いで、若干黒浮きも感じられます

デモンストレーションのために用意された映像のほか、地上デジタル放送の番組で「A6800」シリーズ以降の製品を見比べました。E8000とU7Eに搭載されているレグザエンジンNEO plusは、映像をリアルに再現するため、複数の映像フレームを参照しながらノイズやチラツキを抑える「BS/CS 4K高画質処理 plus」や、コンテンツに合わせて最適なノイズ処理を行う「適応フレーム画質処理」などが載っています。

動きのある映像でも、オブジェクトの周辺に現れるノイズや輪郭のにじみを上手に抑えながら、精彩でリアルな映像を再現。一方で白場の多い映像を見ると、白の色合いがE8000ではやや緑っぽく、U7Eはやや黄色っぽく、A6800はやや赤色っぽく感じられました。パネルと映像エンジンの組み合わせは、これからさらに練っていく段階なのかもしれません。

YouTubeなども楽しめる

E8000シリーズ、U7Eシリーズの各モデルには、ハイセンスが独自開発したLINUXベースのスマートOS「VIDAA(ビダ)」が搭載されています。dTVやNetflix、YouTubeをはじめ、11種類の映像配信サービスを利用できるほか、発売後のソフトウェアアップデートでDAZNも視聴可能となります。メディアプレーヤー機能では、USBメモリに保存した動画や写真をテレビの大画面に映して楽しめます。

  • スマートOS「VIDAA」の画面。アイコンの配置は設定から自由に変えられます

  • 11種類+1種類のVODサービスに対応予定

付属のリモコンには、NetflixとYouTubeへダイレクトにジャンプするボタンを搭載。発表会のデモを体験した限りでは、VIDAAのユーザーインタフェースはリモコンの操作に合わせてサクサクと動いて、ストレスなく使えそうでした。将来はソフトウェアアップデートにより、音楽配信系のアプリやゲームなどを楽しめるようになると、なおよいですね。テレビはGoogleアシスタント、Amazon Alexaに対応するデバイスから、音声操作もできるそうです。

  • E8000シリーズのリモコン。NetflixとYouTubeへのダイレクトボタンを搭載しています

音場は、テレビの設置環境や楽しむコンテンツに応じて、人の声を聞きやすくする「Clear Sound」、各帯域をバランスよく再生する「Hi-Sound Pro」、低音を強調する「Bass Boost」を切り替えられます。

  • テレビのサウンドもイコライザーで細かくカスタマイズができます

発表会に登壇したハイセンスジャパン代表取締役社長の李文麗氏は、「今回発表した新製品はいずれも画質に自信あり。来年に開催を予定しているサッカーの大規模なイベント『UEFA EURO 2020』のオフィシャルパートナーとしても、さらなる映像機器の開発に力を入れて取り組んでいきたい」とコメントしました。高いコストパフォーマンスの魅力も含めて、今後ハイセンスブランドのテレビがますます注目されるのではないでしょうか。

  • 発表会に出席したハイセンスジャパンの李文麗氏(写真中央)、岩内順也氏(右側)、磯辺浩孝氏(左側)