上位モデル「TE-D01d」を試す

発表された3モデルのうち、もっとも注目すべきは完全ワイヤレスタイプの「TE-D01d」。いち早くQCC3026を採用し、ヒットしたTE-D01bのノウハウを活かし、通信の安定性(音途切れの少なさ)や音質に磨きをかけています。

充電ケースから本体を取り出して最初に気付くのは、その質感。本体は電波を通しやすくするためか樹脂製であるものの、適度な光沢や部材間のつなぎ目のさり気なさには高級感があり、ユニット中央に配されたクリッカブルボタン(電源ON/OFFなどで使うボタン)との色合いも好印象です。

クリッカブルボタンは、曲の再生/停止、曲送り/戻し、ボリューム調整のほか、スマホと接続していればSiriやGoogle Assistantの起動にも利用できます。近年はタッチセンサーを採用する完全ワイヤレスイヤホンが増えていますが、クリッカブルボタンはボタンを押して"命令を伝えた感じ"がするぶん、安心感がありますね。

電源のON/OFFやペアリングなど、操作の折々で耳にする日本語ボイスガイダンスもTE-D01dの特長です。声優・伊藤あすかさんを起用しており、アニメに縁がない筆者でも抵抗なく聞けました。

試聴には、スマートフォン「iPhone X」「Xperia XZ2」、DAP「Shanling M0」の3台を利用しました。使用するコーデックはXperia XZ2とShanling M0がaptX、iPhone XがAACです。いずれも屋外に持ち出し、横浜市内と都内を往復する電車や駅改札付近で試しています。

  • スマートフォンやDAPで接続性と音質を検証しました(写真はShanling M0、接続はaptX)

iPhone XやXperia XZ2との組み合わせに関してですが、接続安定性は文句なし。ラッシュ時の横浜駅でも、Bluetoothイヤホン利用者が多い秋葉原駅の改札付近でも、まったく音の途切れを起こしませんでした。やや電波出力が弱いShanling M0の場合、人混みで音の途切れがよくありましたが、電車で着席している間はスムースそのもの。Shanling M0は、SBCやAACに比べ広い帯域幅を必要とするaptXでの接続ですから、上々の結果といえるでしょう。QCC3026の受信性能もさることながら、アンテナ配置の最適化による効果はありそうです。

  • スマホと接続したとき、混雑する駅でも音途切れはほとんどありませんでした

肝心の音質ですが、全体的にフラット傾向で前モデルTE-D01bと共通するサウンドポリシーを感じます。立ち上がり/立ち下りは迅速で軽快、付帯音は感じられず一音一音の輪郭もにじみません。左右の明快なセパレーションは完全ワイヤレスイヤホンならでは。aptX接続時は高域方向の表現に余裕があり、広い音場感を得られます。音作りとして強調したものではない、自然に沈み込む低域も好印象です。

特筆すべきはホワイトノイズの少なさです。Bluetoothイヤホンは構造上ノイズがのりやすく、特に完全ワイヤレスイヤホンは曲間やフェードイン/アウト時に「サーッ」というホワイトノイズが耳につく製品も少なくありませんが、このTE-D01dは設計のなせる技か、それをうまく抑制しています。

充電ケースもよく考えられています。QCC3026採用のかいあって、連続再生最大9時間というTE-D01dは、満充電にすると(実質的に)ほぼ1日使えてしまうほど省電力なだけに、充電ケースに多くのバッテリーを必要としません。それを逆手に取り、大容量バッテリーを搭載してスマートフォンの充電に使ってしまおうというAVIOTの発想は、大いに"アリ"。モバイルバッテリーを兼ねるイヤホン充電ケースは、今後の完全ワイヤレスイヤホンにおけるトレンドになるかもしれません。

  • 充電ケース背面にはUSB Type-Aポートがあり、モバイルバッテリーとして活用できます

エントリー機も高い完成度

完全ワイヤレスイヤホンのエントリーモデルに位置付けられる「TE-D01e」は、従来モデル「TE-D01c」のデザインをそのまま踏襲。ユニット内部だけを刷新した製品です。TE-D01d同様に屋外へ持ち出しテストしましたが、音途切れの少なさについては遜色ない印象です。バッテリーもちに差があり、充電ケースをモバイルバッテリーとして使い回すことができない点さえ納得できれば、スペックがほぼ同等で手ごろな価格のTE-D01eを選ぶ手もあるでしょう。

  • 「TE-D01e」は従来モデルのデザインをそのまま踏襲しますが、中身はしっかり進化しています

ただしスペックはTE-D01dとほぼ同じでも、音質には差があります。グラフェンドライバの特性はよく似ており、立ち上がり/立ち下りの速さや低域が沈み込むというサウンドキャラクターに共通項はあるものの、ノイズ対策に違いがあるのか、TE-D01eはややホワイトノイズを感じました。S/N感に通じる部分で、この点を重視するのならばTE-D01dに軍配があがります。

ワイヤレスイヤホン「WE-D01c」は、約5,000円という価格で、IPX7のタフネスさとaptX対応の強みを備えた高コストパフォーマンス機です。共振や外来ノイズを防ぐアルミ製ユニットは質感が高く、レスポンスに優れるドライバの特性もあって、スピード感・密度感は良好です。従来モデルのWE-D01a、WE-D01bと比較しても着実な進化を実感できる完成度で、左右ユニットをつなぐ細いケーブルさえ気にならなければ、高い満足度を得られるはずです。

  • 「WE-D01c」はIPX7に対応、突然の雨にも耐えられます

2018年秋の発表から半年経たないタイミングで、実質的な後継機を投入し怒濤の勢いを感じさせるAVIOT。新興ブランドではあるものの、日本語ならではの周波数特性(サ行の子音など)を考慮したチューニングは、オーディオ初心者でも聴けば実感できるレベル。"Japan Tuned"の看板は伊達じゃありません。ワイヤレスイヤホンの肝である通信性能重視の設計も、音途切れの少なさという形で製品に現れています。リーズナブルな価格設定もあり、2019年前半のワイヤレスイヤホンにおける台風の目となるでしょう。

  • 低価格ながら質は高く、チューニングの妙も感じられます(写真はTE-D01d)