「おとど食堂」のおとどは、「たいと」の別の読み方だ。店主によれば、ラーメン屋の師匠から受け継いだ店名だという。ラーメン屋になることを決意した店主が、その開業の際に店名を決めるにあたり師匠にアドバイスされたのだそうだ。
日本一のラーメンを作れない男が日本一をめざすなら店名で勝負するしかない。この漢字が日本一画数の多い漢字で竜がテンを目指す様子を表現している。だからこの漢字を店名に使えば、とりあえず日本一になれるという助言だったそうな。
もともと知らない漢字だったので、PhotoshopやIllustratorを使って既存の漢字を変形し組み合わせて文字を作りPDFを作って使ったのだという。そうか、店主はアドビ信者だったのか……。
「たいと」は源ノ明朝でも使えるように
でもこれからは大丈夫。どうもありがとうございますと店主の越智雄一さんは満面の笑みを浮かべる。ナイショの話だが、「たいと」は源ノ明朝でも使えるようになることが決まっているそうだ。きっとこの店でも使ってもらえるに違いない。
「びゃん」や「たいと」を入力するには、文字のパーツのシーケンスを並べる必要がある。IMEで読みを入れて変換するなどカンタンには入力することができないのだ。アドビのPhotoshopやIllustrator、InDesignなどのIDS対応アプリでは、シーケンスを入力してフォントに「源ノ角ゴシック」を指定する。
アドビでは、将来的にいろんなフォントで使えるようになる先駆けとして搭載したということで、他のフォントがいっさいもっていない漢字を選んだという。ちなみに画数は、「びゃん」が57画、「たいと」が84画だ。
このツアーでわかったことは、この2文字をコンピュータで表示できるようになって確かに店主らは喜んでいたが、よくよく聞いてみるとあまり困ってもいなかったみたいだということである。漢字は奥が深い……。