中国DJIが発売した新趣向のジンバル搭載カメラ「Osmo Pocket」、ポケットにらくらく収まるサイズながらブレのない安定した動画が撮影できることで注目されています。アクティブに動画撮影を楽しみたい人や、自撮りで安定した動画を撮影したい人、旅先や日常のちょっとした動画を撮りたい人にも適した、幅広い用途に対応できるカメラといえます。実力を改めて検証しました。

  • ドローンでおなじみの中国DJIが2018年12月に発売した、コンパクトな3軸ジンバル搭載カメラ「Osmo Pocket」。実売価格は税込み44,700円前後

コンパクトで手軽に使えるジンバル搭載カメラ

Osmo Pocketは、揺れを抑えるためのジンバル(制震装置)付きのカメラを頭の部分に搭載したスティック型カメラ。同社の「Osmo Mobile」とは違って、撮影にあたってスマートフォンを装着する必要がなく、これ単体で動画や写真の撮影ができるのが特徴です。本体サイズも従来のOsmo Mobileよりも大幅に小型化し、文字通りポケットに収まるサイズとしたのも目を引きます。

  • スティック状の本体の上に、3軸補正対応のジンバルと単焦点レンズ付きのカメラを搭載

  • 本体背面。小さいながら1インチ液晶を搭載するので、単独で撮影や再生ができます

  • 本体側面。microSDカードスロットを配置する

  • 逆側はシンプル。内蔵バッテリーの充電は底面から行います

本体サイズはW36.9×H121.9×D28.6mm、重さは116g。スティック部分の長さは、昨今の6インチクラスのスマートフォンの横幅より少し長いぐらいにとどまるほどのコンパクトさ。後述しますが、本体をスマートフォンと接続する際、スマートフォンの底面の充電端子に接続して「合体」させるため、だいたい同じぐらいのサイズだと都合がいいのです。

Osmo Pocketを撮影する際につかむスティック部は手のひらに収まり、握りやすい太さだと感じました。撮影ボタンとメニューボタン、1インチのタッチパネル液晶を搭載しています。底面にはUSB Type-C端子を装備しており、モニターとボタンの間にはスマートフォンとの接続アダプターの装着部があります。

  • 1インチモニタは小さいですが、単体で撮影できるのが強みです

  • 撮影画面で右にスワイプすると再生画面になり、左にスワイプするとモード切替になります。これは撮影モードの設定画面で、上下にスワイプして変更します

スティック部の上部にあるカメラは、一般的なジンバル付きカメラの構造となっていますが、サイズがコンパクトなのでかわいらしい印象を受けます。電源オフ時は、背面液晶から見て右側を向いて停止し、電源をオンにすると自動的に前方(モニターと逆側)に向きが変わります。付属のケースに収納するときは、カメラのレンズが奥に入るように収まります。こうした点もあって、電源オフ時に一定方向を向くようになっているのでしょう。

  • スマートフォンと接続する場合は、付属のアダプターを逆向きに差し込みます

  • ちなみに、この状態でもOsmo Pocketの付属ケースに入れることができます。充電もカードの出し入れもケースに入れたままできるのはよく考えられています

Osmo Pocketはとにかく小さく軽いので、手軽に持ち運んでサッと撮影できるのがポイントです。なんといっても、背面液晶を搭載していて単体でも撮影や再生ができるのが強みといえます。手持ちのスマートフォンを装着するタイプのジンバルのように、スマートフォンの画面をオンにしてロックを解除し、カメラアプリを起動して……というわずらわしい作業が必要ないのです。これは大きな魅力だと感じました。

ブレのない動画がきわめて手軽に撮影できる

Osmo Pocketでの撮影自体は簡単で、基本的には撮影ボタンを押すだけでOK。ジンバルが自動的に働いてブレや揺れを補正し、手ぶれの少ない安定した動画が撮影できます。手ぶれ補正は期待通りのなめらかさで、ヌルヌルとした動画に仕上がります。歩きながらの撮影では、歩行にそれに合わせて波打つように動きますが、見苦しい手ぶれとは無縁。手ぶれ補正は動画だけでなく静止画でも働き、夜景やイルミネーションを手持ちで撮影する、といった場合も手ぶれによる失敗なく撮影できます。

歩きながらの撮影の場合、歩行に合わせて波打つような描写は見られますが、目障りな細かい手ぶれや回転ブレ、角度ブレはきちんと補正されています。自転車や車に乗りながらの撮影のような、ちょっと長めの揺れのほうが効率的に補正される印象です

こちらは夜景の動画。夜景でも安定して撮影できます。マイクも小型ながら、このクラスのカメラとしては十分な音質です

イルミネーションも手持ちで見た目通りきれいに撮影できました

画質は、1/2.3インチのセンサーを搭載したカメラとしては標準的といえます。高画質化が著しい最新スマートフォンほどの解像感はありませんが、誇張のない素直な仕上がりといえます。唯一気になったのが、スマートフォンのカメラと比べると画角が少し狭く感じること。利便性や扱いやすさを考えると使いやすい画角ではありますが、もう少し画角が広くてもよかったかもしれません。

  • もうちょっと広い画角が欲しくなるところですが、写りはいたって標準的。あまり派手さがない素直な画質といえます

  • ジンバルが自動で動いて9枚の写真を撮影し、それらを合成して生成するパノラマ機能も搭載しています。180度の横方向のパノラマと、正面方向に9枚撮影するパノラマの2種類があります。画角の狭さを補えますし、カメラを自力で動かさなくていいので簡単です。もちろん三脚いらずで使えます

  • 金属の質感も良く、背景のボケも素直な描写です

  • スローシャッターでも手ぶれしづらいので、シャッタースピードを遅くして水などの動きを表現することもできます

  • もちろん夜景も得意。これは0.8秒とだいぶ遅いシャッタースピードですが、手持ちでも手ぶれしにくくなっています。しかも、連写合成などのデジタル処理ではなく、純粋な長時間露光での撮影です

特定の被写体を追尾してフレームに収め続ける機能は、人物の顔を追尾するフェイストラッキングと、それ以外の物体を認識して追尾するアクティブトラッキングの2種類が用意されています。ドローンで培った技術が盛り込まれているようで、かなり強力に追尾してくれました。追尾する被写体をより確実に指定するには、小さなOsmo Pocketの画面ではなく、接続したスマートフォンの大画面で対象物を指定するのがよさそうです。