アクセンチュアのアクセンチュア インタラクティブとデジタルマーケティングを手がけるアイ・エム・ジェイは1月21日、都内で開いた記者説明会で「CMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)の新たな役割」に関する最新調査の結果を発表した。

同社では、CMOの役割について2018年7月~8月の期間で、米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストラリアの幅広業界におけるマーケティングの意思決定を行う上級役員者250人を対象にオンライン調査を実施。

これによると、88%の顧客は自分の経験をパーソナライズして魅力的でニーズに合った体験を提供してくれる会社を求めているほか、48%の顧客は最適な商品・サービスを提供されていないと、すぐにどこか他で購入してしまうという。また、87%の組織が従来の体験は顧客を満足させるには十分ではないということを理解している。

アイ・エム・ジェイ 執行役員 マーケティングアナリティクス&サイエンス本部長の山本崇博氏は調査結果を踏まえ「CMOの役割は、もはや広告宣伝だけではない」と述べた。これは、従来のCMOはブランドオーナーであり、広告/広報が主担当し、チャネル単位やキャンペーン単位で断絶的に個別成果を計測するほか、広告宣伝を推進するために各部門長と協力して行っていると指摘。

  • アイ・エム・ジェイ 執行役員 マーケティングアナリティクス&サイエンス本部長の山本崇博氏

    アイ・エム・ジェイ 執行役員 マーケティングアナリティクス&サイエンス本部長の山本崇博氏

昨今ではブランド認知に加え、複数チャネルでのプロモーション、パソナライズされたオファー、パーソナライズされた顧客接点、あらゆる顧客接点を横断して一環した体験を提供するなど、マーケティングに期待される役割が拡大している。

そこで、新たなCMOの役割が「コラボレーション」だという。企業全体で顧客体験をいかに形成し、提供していくかという重要課題に注力すべきであり、企業全体を巻き込んだこれまでにないコラボレーションが必須だとしている。

  • 新たなCMOは組織内のコラボレーションが求められるという

    新たなCMOは組織内のコラボレーションが求められるという

山本氏は「調査対象企業の90%がCMOには、さまざまな事業部門をつなぐ役割があると認識している。例えば、CFOはファイナンスの軸で企業横断的に変革を進めるが、CMOは顧客のインサイトや体験を通じて、横断的に企業をアップデートする必要がある」との認識を示す。

同社では、組織・部門をつないで社内のマインドセットを浸透させる役割を重要視するマーケターを「コラボレーション主導型」と定義しており、新たなCMOの責務は宣伝・広告に依存したマーケティングにとどまらず、全社で提供する体験に責任を持つべきだという。

コラボレーション主導型マーケターが存在する組織は、従来型マーケターのみの組織と比較すると「自社の顧客体験が競合よりも勝っている」と回答した割合が27ポイント(コラボレーション主導型マーケターの組織:95%、従来型マーケターの組織:68%)も競合優位性(顧客との関係構築)が進んでいると感じており、各プロジェクトが企業全体でコラボレーションを奨励している。

また、アジャイルチームやクロスファンクショナルチームを作り出し、カスタマー・エクスペリエンスの実現に必要なマーケティングオペレーション(テクノロジーを含む)戦略を推進できているという。

コラボレーション主導型CMOについて山本氏は「『顧客の声をCクラスに浸透させる』『企業内でコラボレーションを主導する』『顧客ニーズに合わせたテクノロジーを用意する』『イノベーション文化を創造する』の4つのポイントがある。宣伝・広告に依存したマーケティングに限らず、全社のエクスペリエンスの実現にコミットする新しいタイプのCMOが求められている」と、説く。

  • コラボレーション主導型CMOの4つのポイント

    コラボレーション主導型CMOの4つのポイント

日本でもコラボレーション主導型CMOは浸透するのか?

しかし、日本においてもコラボレーション主導型CMOが浸透するのかは気になる点だ。この点について、アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア インタラクティブ マーケティングサービスグループ統括マネジング・ディレクターの望月良太氏は「日本でも可能だ。むしろ当てはめるべき」と、主張する。

  • アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア インタラクティブ マーケティングサービスグループ統括マネジング・ディレクターの望月良太氏

    アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア インタラクティブ マーケティングサービスグループ統括マネジング・ディレクターの望月良太氏

同氏によると、そもそも日本ではCMO不在の企業に加え、CMOがリードすべき全社マーケティングが機能していないケースも多く、2段階遅れている状況だという。そして、コラボレーション主導型CMOをどのように配置して、機能させるかが競争優位のポイントだと指摘している。

  • 日本のビジネス環境は2段階遅れているという

    日本のビジネス環境は2段階遅れているという

日本におけるマーケティングの傾向は、マーケティング部門の地位は低いが、マーケティングドリブンな発想は将来的に従来以上に必要となり、事業部がマーケティングを担当するケースが増加している。一方、課題としては、デジタル人材の不足と組織の未整備、事業部探知の縦割りによる個別最適化、データ整備・システム対応の遅れがあるという。

望月氏は、日本版コラボレーション主導型CMOへの提言として「日本企業のマーケティング実行に求められるのは全社最適化の視点であり、マーケティング=広告・宣伝という狭義の定義は捨て、全社運動としてマーケティングを導入すべきである。また、他事業部の執行役員と対応に渡り合える力を持ったCMO職種の設置が必要であり、執行役員としての存在感を強めるためには日本でもCMOは経営へのコミットを深めるべきだ」と話す。

  • 日本版コラボレーション主導型CMOに対する3つの提言
  • 日本版コラボレーション主導型CMOに対する3つの提言
  • 日本版コラボレーション主導型CMOに対する3つの提言
  • 日本版コラボレーション主導型CMOに対する3つの提言

このような状況に対し、同社ではコラボレショーン主導型CMOを推進する包括的マーケティング支援サービスとして「Unified Marketeing & Sales」を提供しており、チャネルと部門で断絶される企業内マーケティングからセールス活動を経営のKPIとつなげ、一貫性を保ち、持続的な売上拡大に直接寄与するスキームを構築・提供するという。

  • 「Unified Marketeing & Sales」の概要

    「Unified Marketeing & Sales」の概要

同サービスに関して望月氏は「われわれの強みは、マーケティング代理店(CMOの役割)としてフィービジネス(メディア、ソリューションフリー)、全体最適(業務・組織改革、データ・システム、広告)、CMO含むCクラスの人の支援、ビジネスゴール(KGI)の達成、結果責任(成果報酬モデルを目標)を実現できることだ」と、胸を張っていた。