今や世帯別保有率をスマホに抜かれ、「若者の○○離れ」の○○に入ってしまったりもするPCですが、とはいえデバイスとして「まだまだ革新の余地はあるのだな」と改めて気づかせてくれたのが、今回取り上げる2in1 PC「VAIO A12」です。

  • 「VAIO A12」の特別版「VAIO A12 ALL BLACK EDITION」。一見普通のノートPCに見えるが、実は画面とキーボードが離れる2in1 PCだ。緩やかにカーブした板がディスプレイを下支えしている機構のおかげで、キーボードを必要以上に重くしなくてもバランスがとれる

「VAIO A12」は、タブレットとしてもノートPCとしても使える、12.5インチのフルHD液晶を搭載したいわゆる2in1デバイス。CPUやメモリ、ストレージなどが内蔵されているタブレット本体と、キーボードユニットが組み合わせられています(標準構成時)。

2in1というと今世の中に出回っているものは、①ヒンジが360度回転するもの、②キーボードが着脱式になっているもの、③キーボードカバー&フリップスタンドスタイルの、だいたい3つくらいの形状に分類できるかと思います。

しかしどれも一長一短で、①はタブレットとしては重い上に背面にキーボードがきて使いづらく、②はキーボードに対してタブレット(ディスプレイ)が重くなりがちで安定が悪く、③は膝の上などに置いて使いづらいと、それぞれにウィークポイントを抱えています。タブレットとしてもPCとしても使えれば便利なのは間違いないですが、タブレットを優先するとPCとしての使い勝手を妥協せざるを得ず、PCを優先するとタブレットとしての使い勝手に不満が残る……。これまでの2in1って、私にとってはまさにこんなイメージでした。

ディスプレイを裏で支える新機構

「VAIO A12」は分類すると、②のキーボード着脱式に含まれる製品ですが、革新的な新しい機構を採用することで、ディスプレイが重くなるが故の安定の悪さという課題を、見事に克服しています。

具体的にはキーボードの背面に「Stabilizer Flap」という、薄くて丈夫なマグネシウム合金製の板がついていて、ディスプレイを開くとこの板が下支えとなって、後ろに倒れるのを防ぐしくみ。同時にキーボードがぐっと持ち上がって傾斜ができ、手首の負担を軽減してタイピングがしやすくなるようにも工夫されています。メーカーの説明では、ディスプレイを最大130度まで大きく開いても倒れることがないとのこと。実際にMAXまで開いた状態でディスプレイの上の方をつんつん押してみましたが、余程強く押さない限り、後ろにひっくり返ることはまずなさそうです。

発表会で撮影したStabilizer Flapの動画(編集部撮影)

  • VAIO

    キーボードユニット装着時、見た目はクラムシェルPCそのもの。サイズは約幅305.5×高さ17.0~21.0×奥行211.9mmで、タブレットのみの場合は約幅305.5×高さ7.4×奥行199.4mm

  • 「VAIO A12 ALL BLACK EDITION」では、「Stabilizer Flap」がシルバーではなく、本体と同じ黒く塗装されていて、より一体感のあるデザインになっている

テーブルのない場所で文字が打てる

クラムシェルと同等の安定感で、デスクの上はもちろん、膝の上でもストレスなくタイピング可能。筆者は足が短く、椅子に座ると大抵足に傾斜ができてしまうため、もともと膝の上でのタイピングはあまり得意ではなかったのですが、「VAIO A12」はPCを開くとキーボードの奥側が持ち上がるため、足の傾斜がPCの持ち上がりと相殺され、結果平らになるというメリットも。おかげでテーブルのない記者発表会などでも、膝の上でラクにメモをとることができました。

なお、キーボードはキーピッチが約19mmで、ストロークは約1.2mmと浅め。VAIOが得意とする静音仕様となっています。筆者はタイピングがやや強く、静かな場所だと自分で自分の打鍵音が気になってしまうレベルですが、「VAIO A12」のキーボードユニットは余裕キーピッチで快適にタイピングできるだけでなく、周りにも迷惑をかけずに済みそう。またタッチパッドの左右ボタンが分離しているのも、誤操作することが少なく使いやすいと感じました(追随性はあと一歩かなという印象)。

  • 膝の上でもクラムシェルPCと同様にタイピングが可能。太ももの傾斜とキーボードの傾斜が相殺されて、ちょうどいいタイピングスタイルになる

  • キーボードユニット。通常モデルはキーボード面がシルバーだが「VAIO A12 ALL BLACK EDITION」ではキーボードもブラック