IBMと、同社の子会社であるThe Weather Companyは1月8日(米国時間)、新たな気象予報システム「Global High-Resolution Atmospheric Forecasting System(GRAF)」を開発したことを発表した。

同システムは、POWER 9搭載スーパーコンピュータ(スパコン)上で稼動し、世界中に配置された数百万規模のセンサからのクラウド・ソース化されたデータ、および飛行中の航空機のデータを使用して、世界各地の局所的な気象を正確に可視化することを可能としたもの。独自の研究開発の成果に加え、Weather Companyが行った米国国立大気研究センター(NCAR)とのオープンソース・コラボレーションによって実現されたもので、NCARが米国ロスアラモス国立研究所と共同で開発した全球気象モデル「MPAS(Model for Prediction Across Scales:スケール間予測モデル)」を組み込むことで、既存モデルと比較して、世界中の大部分の予報解像度を、12km四方から3km四方へと改善。それを毎時の更新で提供できるようにしたという。

また、同社では、航空機からのセンサデータの読み取りなど、これまで利用していなかったデータを加え、ユーザーなどが情報の共有に合意すれば、持っているスマートフォンに搭載されている気圧センサの測定値を活用したり、アマチュア気象愛好家によって運営されている気象観測機器のデータなども取り込むことが可能になるとしている。

こうして得られるデータは膨大なものとなるが、同社ではスパコンの処理性能ランキングである「TOP500」の2018年11月版で1位の「Summit」や2位の「Sierra」でも採用されているPOWER 9のパフォーマンスを活用すれば、そのようなデータ量の分析も可能になるとする。

なお、同システムは、2019年後半に世界中で利用可能になる予定で、これにより、航空会社が乱気流による混乱を最小化したり、保険会社が豪雨災害発生後の対応に備えたり、公益企業が停電に備えて保守要員を適切に配置したり、農業従事者が気象の急激な変化に先んじて備えることができるようになると同社では説明しているほか、個人や地域社会においても、気象状況に応じて前持って計画を改善することができるようになるとしている。The Weather Channelアプリのほか、weather.com、Weather Undergroundアプリ、wunderground.comおよびThe Weather CompanyのIBM製品を使用しているすべての企業が、これらの予報を使用できるようになる予定だという。

  • GRAF

    2018年8月にインドを襲ったモンスーンを分析した気象モデル。左が13km四方の分解能、右がGRAFによる3km四方の分解能 (C)IBM