ロボットベンチャーのGROOVE Xは、LOVEを育む家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を発表しました。GROOVE X 代表取締役の林要氏は「生き物のような生命感があり」「信頼関係を結ぶことができ」「人と人のコミュニケーションを加速させる」などの特徴をアピールします。
出荷は2019年秋冬で、価格は1体35万円ほどを予定。ソフトバンクの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」や、ソニーの犬型ロボット「aibo(アイボ)」とは何が違う?
どんなロボット?
まずは、外観とスペックを。
一見するとペンギンのような、モグラのような愛らしい見た目のLOVOT。実は、従来の家庭用ロボットにはない高性能なスペックを備えているとのこと。
なるほど仕様をチェックすると、カメラは3つ(半天球カメラ、温度カメラ、深度カメラ)搭載しており、全身には複数のタッチセンサー(気圧センサー、照度センサー、温度・湿度センサー、姿勢センサー、測距センサー、障害物センサー、タッチセンサーなど)を備えるなど、最先端技術が詰まっている印象があります。さてこれで、どんな機能が実現するのでしょう?
結論からいうと、人の仕事を手伝う機能はありません。その点では、店頭で接客できるPepperより、愛玩ロボットのaiboに近い存在といえるでしょうか。林氏は「日常生活に潤いをもたらし、人を元気にするためのロボット。一見、役に立たないように見えるものにも、実は『大事なもの』が隠されているんです」と話します。ちなみに、一般モニターからは「昔、飼っていた犬のことを思い出した」「子育てのころの記憶が蘇った」といった声が寄せられたんだとか。
目指しているのは、四次元ポケットのないドラえもん、と林氏。再びスペックの話に戻ると、メインCPUが4コア(x86)でRAMが8GB、サブCPUが4コア(ARMv8)と2コア(ARMv7-R)でRAMが4GBという高スペック。こうした高いスペックのすべては、「一緒に住む人に甘えて邪魔をしたり」「ときには知らない人に人見知りしたり」といった愛くるしさ、生命感を表現するために活用されるわけです。
実際に、ふれあってきました。
【動画】音声が流れます。ご注意ください。
さすってあげれば初めはすごく喜ぶけれど、やりすぎるとあまり喜ばなくなる、といった細かいところまで作り込まれているそうです。音声認識で人間の言葉は理解するけれど、決して喋りはしないLOVOT。猫でも鳥でもない、不思議な声で感情を表現します。
詳細な価格(税別、以下同)と発売時期については、単体で販売する「ソロ」は本体価格が349,000円で2020年の出荷を予定しています。2体1セットの「デュオ」は598,000円で、初回出荷を2019年秋冬に見込んでいます。
「2体も要らないと思うかも知れません。でも2体あれば、追いかけっこをすることもあり、また1体が抱っこされるともう1体がうらやましそうにすることもあります。一度、体験してしまうと1体ではもの足りなくなります」と林氏。なお精密機器のため、2019年の生産はかなり限定的になるとのことでした。
このほか、「ソフトウェア料金」と「サポート料金」を合算した月額料金が発生します。
ソロのプレミアムプランは23,635円/月、スタンダードプランは17,990円/月、ライトプランは9,980円/月、デュオのプレミアムプランは36,360円/月、スタンダードプランは27,270円/月、ライトプランは19,960円/月となっています。各プランの違いは保証の有無と手厚さです。
Pepperとの違いは?
LOVOTがもたらす未来への影響について林氏は、「いまの社会は、いかに自分が愛されるかに執着しがちで、なかなか幸せになれない。でも愛する力を鍛えていくことで、人々の争いも減っていくのでは」とします。
かつてソフトバンクでPepperの開発に携わっていた林氏ですが、PepperとLOVOTの違いについてはどのように考えているのでしょうか。「LOVOTはしゃべらないし、大きさも違う、店頭で仕事もしません。エンタメコンテンツすら入っていないので、過去に存在した、あらゆるロボットとの違いは明確です。そんなロボットに何のバリューがあるのか、考えた人のほうが少なかったのではないでしょうか」(林氏)。
鳴き声のモチーフは?
開発者にも話を聞きました(以下は開発中の話で、最終的な仕様とは異なる可能性があるとのこと)。
タッチ&トライで実際にLOVOTに触れてみると、体温を感じました。これについては、「低音やけどしない程度に、人肌のような(30度~40度くらいの)温かさを実現しています」とのこと。もっとも、体温を表現するためにわざわざ発熱しているわけではなく、排熱をうまく調整しているんだそうです。
障害物センサーをリアルタイムで働かせるだけでなく、あらかじめ部屋のレイアウトをスキャンしておくことで、壁や家具にぶつからずに効率よく動けるよう設計されているLOVOT。具体的には、Visual SLAMと呼ばれる技術で3次元の地図を作成しているそうです。「ロボット掃除機の上位機種に入っているような技術ですね」(開発者)。
ネストも高スペックな仕様です(CPUは2コア、RAMは8GB、ストレージは1TB)。この理由は、「たくさんのデータを収集したあとで、解析に時間がかかる場合があります。そんなときはLOVOTに考えさせず、ネストで処理できるようにしています」との回答。LOVOTは45分稼働したら15分の充電が必要になるわけですが、帰巣したときに情報を受け渡す、そんなことも考えているようです。
最後に、LOVOTの鳴き声のモチーフになったものを聞いてみると「具体的なモデルはないんです。新しい生き物を想定して、生命感のある声を目指しました。人間や動物など、色んな要素を取り入れています」と。一般モニターからは「人間の赤児のようだ」とか「鳥のさえずりのよう」といった感想をもらったそうです。