ドローンやジンバルカメラで知られるDJIが、約1年ぶりとなるポータブル電源の新製品「DJI Power 2000」を発表しました。出力2,700W、容量2,048Whという高出力&大容量で、売れ筋よりもワンランク上のスペックに仕上げています。入出力端子の構成にいくつか注意点はあるものの、1kWを超える大電力の充放電時でも静かに使えたのは好印象です。ドローンで磨き上げた安全性も盛り込まれており、安心して使える1台に仕上がっています。すでにポータブル電源を所有しているものの、容量や出力、騒音、可搬性などに不満を感じている人の買い替え需要に応える、“通”好みのポータブル電源だと感じました。

  • DJIのポータブル電源第2弾となる新製品「DJI Power 2000」。出力2,700W、容量2,048Whながら価格は151,800円と、同等スペックの競合製品と比べるといくぶん割安だ

ポータブル電源のよくある不満を解消

キャンプなどのアウトドアレジャーや防災用途で注目が高まるポータブル電源ですが、あまり吟味せずに購入して不満を感じる人は少なくありません。

コンパクトなエントリー機では「電子レンジを動かせない、スマホを数回充電しただけで空になったなど、出力や容量が足りず満足に使えなかった」といった声がよく聞かれます。逆に、出力や容量を重視した大型モデルは「重すぎて持ち出すのがおっくうになり、結局使わなくなった」というケースも。「調理家電を使ったり急速充電したりするとファンが轟音を立て、熱風が出るので不快」という不満もあります。

DJI Power 2000は、そうしたポータブル電源で不満を感じやすい要素を洗い出し、高いレベルでバランスよくまとめた製品だと感じます。1年前に登場した初代モデル「DJI Power 1000」から容量は倍の2,048Wh、出力は2,700Wへと大幅に向上させつつ、本体サイズは少し背が高くなった程度に抑えています。同等スペックの競合製品と比較しても、軽量コンパクトな設計といえます。

  • DJI Power 2000の外観は、DJI Power 1000の背が少し高くなった感じ。本体サイズは448×225×324 mm、重さは約22kg。外観は質実剛健といった印象で、過剰な装飾はない

  • こちらは初代モデルのDJI Power 1000。出力端子の数も異なる

両端に持ち手を備えた箱型デザインの外観も継承しており、天板がフラットなので充電している機器などが置けるのも好印象です。派手な差し色はなく、防災用としてリビングに設置しても違和感がないのもポイントです。

DJI Power 1000からサイズの肥大化を抑えつつ、出力端子は充実させました。AC出力は2倍の4つ、USB Type-CとType-Aもそれぞれ2倍の各4つとなり、ポート不足で困ることはないでしょう。DJI製品らしく、ドローンの急速充電に利用できるSDCポートも継承します。

  • AC出力は4つで、すべてアース付き。目立つ丸いコネクターが、後述する引掛形コネクター(NEMA L5-30P)だ

  • USB Type-Cは4つで、うち2つは最大出力が140Wと高い

  • USB Type-Aも4つ。上のオレンジ色のコネクターが、ドローンの急速充電などに利用するSDCポートだ

DJIらしさは、ドローンで培った高い安全性の技術をふんだんに用いている点にも表れています。ドローンのバッテリーは、複数のプロペラを高速回転させる大電流を安定供給し、墜落時や衝撃時にも発火しない安全性を備えつつ、飛行のために軽量化・小型化が求められます。DJI Power 2000は、それらの技術を応用しつつ、多数の温度センサーやヒューズを備えて異常を瞬時に検知すると電源を遮断する仕組みを備えています。本体は1トンの荷重にも耐えるとしており、安全性は盤石といえるでしょう。

DJI Power 1000ではなぜか対応していなかったワイヤレスでのスマホ連携機能は、ようやく標準で対応。バッテリー残量や充放電状況のチェックのほか、ファームウエアのアップデートもスマホ経由で可能になりました。

圧倒的な静音性と使い勝手のよさがポイント

使ってみて最初に感じたのは静音性の高さでした。1.5kWの大電力で本体を充電しながら、同時に1kW以上の調理家電を使用するという高負荷な状況でも、冷却ファンの音はかなり抑えられており、快適なままでした。多くのポータブル電源は、このような高負荷時に甲高いファンの風切り音と生暖かい排気が出て不快に感じがちですが、この静音性は高く評価できるポイントといえます。

  • 電子レンジで冷凍食品を温めて1kWを超える出力を続けても、本体はかなり静かなまま

  • 入力が1.5kW、出力が1.2kWという状況でも、ファンは轟音になることはなかった

充電も高速でした。充電は最大1,500Wでフル充電まで114分としており、容量が半分のPower 1000が最大1,200Wで70分だったことを考えるとかなり速くなりました。

意外に便利だと感じたのが、本体の高さが絶妙で、腰かけるのにちょうどよいこと。前述の通り、本体は1トンの重量に耐えられるので、大人が座る程度はまったく問題ありません。キャンプなどの際は、ちょうどよいチェア代わりになります。

  • 大人が腰かけてもびくともしない。飲み物をこぼしたりしなければ大丈夫

専用の拡張バッテリー「Expansion Battery 2000」(2,048Wh)を接続すれば、容量が拡張できます。底面積を変えずに積み上げて使えるので、設置スペースを広げることなく容量が拡張できるのは好ましいと感じます。2輪ホイール付きの専用キャリー「Powerシリーズハンドトラック」(16,170円)もオプションで用意し、キャンプなどで持ち出す際も苦労せずに済みます。

  • 拡張バッテリーを接続したうえで、専用キャリーに積載したところ。容量を拡張しても省スペースなままで済む

  • 拡張バッテリー込みだと総重量は約40kgにもなるが、手軽に移動できる。自宅の停電時などは、電気が通っている公共施設や知人宅で充電させてもらう必要があるが、そのような緊急時も苦労することなく持ち運べる

AC出力のうち、1つはほぼ使われずじまいになりそう

このように本体の完成度は高いと感じたものの、気になったのが入出力端子の種類です。

まずAC出力ですが、4つのうち1つが一般的な形状ではなく、円形の「引掛形コネクター」(NEMA L5-30P)になっています。これは、おもに業務用の厨房機器などで使われる規格で、一般家庭で対応する機器はほとんどありません。対応機器を持つユーザーには価値があるものの、多くの人にとってはAC出力が実質3ポートとなってしまい、無駄に感じてしまうかもしれません。

もう1つ気になったのが、ソーラーパネルで一般的に使われるXT60コネクターがそのままでは接続できず、9,000円近くする「ソーラーパネル アダプターモジュール (MPPT)」が必要になること。このアクセサリーを使うとソーラー発電の効率が高まるとはいえ、標準で接続できたらベターだと感じました。

  • 災害時や停電時は、ソーラーパネルがあると電力が生み出せ、ポータブル電源が“ただの箱”にならずに済む

  • ソーラーパネルの接続には、別売のソーラーパネル アダプターモジュールが必要になる

初期のポタ電からの買い替えにも向く

DJI Power 2000は、このように入出力端子にいささかクセがあるものの、気になるのはそれぐらい。大容量&高出力、高い静音性、省スペースで保管&容量を拡張できるデザイン、停電に備えてフル充電のまま保管しても安心できる安全性など、全体的な満足度は高いと感じました。

価格は151,800円と、このクラスの出力・容量を持つ競合モデルと比較しても競争力のある設定です。DJIは、不要になったポータブル電源の無料回収サービスも明言しており、購入後も長く安心して使えます。ポータブル電源の買い替えや、より高性能なモデルへのステップアップを考えているユーザーにとって、「専業メーカーもうなる佳作」だと感じました。